PR
日経デジタルフォーラム デジタル立国ジャパン2024 Review
日経デジタルフォーラム デジタル立国ジャパン2024 Review
パネルセッション

サステナブルな改革を実現するカギは「人」
~人材の獲得、育成、リスキリングにどう取り組むべきか

副業/兼業を含む
外部人材の活用から
リスキリングまで、
人材戦略の要諦は

DXは目標ではなく手段であり、持続的に成果を上げ続けるサステナブルな取り組みにしていくことが肝心だ。これを実現する上で不可欠な要素が「ヒト」である。DX推進のエンジンとなる人材の獲得、育成、リスキリングをどう進めればいいのか。方針やテクノロジーの活用方法について、4人の論客が議論を交わした。

人材流動性の低さは日本の課題
カギを握る副業/兼業の推進

愛媛県 企画振興部長 山名 富士氏
愛媛県
企画振興部長
山名 富士
 DXの推進に向けては、チームを束ねるリーダー、現場で手を動かすエンジニア・プログラマーなど、様々な経験・スキルを持つ人材を獲得・育成することが必要になる。人手不足が加速する現在、これを実現することは容易ではない。現状の課題について、愛媛県 企画振興部長の山名 富士氏は次のように話す。

 「これまで地方自治体が抱えてきたIT人材はセキュリティー領域の専門家が多く、DXで求められる“攻め”のデジタル活用の経験が浅いことが多いです。このような人材の偏りは、私たちにとって大きな課題です」。採用を進めたくても、特に小さな基礎自治体では各領域のデジタル人材を個別に採用する余裕はない。そこで、都道府県や他自治体とも柔軟に連携しながら、人材の共同活用を検討することがカギになるという。

経済産業省 サイバーセキュリティ・情報化審議官 上村 昌博氏
経済産業省
サイバーセキュリティ・情報化審議官
上村 昌博
 「また、自治体組織は予算や人の配置が厳密に決まっているため、スピード感を持って新しいことを始めるためには外部人材とのコラボレーションが重要になるでしょう。既存人材と外部人材の両方が、気持ちよく働ける環境を構築することが大切だと思います」と経済産業省の上村 昌博氏は続ける。愛媛県も、この外部人材とのコラボレーションは積極的に進めているという。

 また、日本のDXの障壁になる課題として「人材の流動性の低さ」を挙げたのはYOUTRUSTの岩崎 由夏氏だ。

 「欧米のデジタル人材は様々な会社に点在しており、人材の流動性も高いです。一方、日本のデジタル人材はIT企業に集中しており、流動性も低い。この差が、欧米と日本の経済成長の差を生む1つの要因になっていると当社は考えています」

株式会社YOUTRUST 代表取締役CEO 岩崎 由夏氏
株式会社YOUTRUST
代表取締役CEO
岩崎 由夏
 デジタル人材の中には、今、手がけている仕事以外にも様々な領域で活躍したいと考える人材が少なくない。そのような人材のモチベーションや経験・スキルをうまく取り入れることができれば、自治体のDXは大きく加速できるはずだ。

 「実際、私の知り合いにも『副業/兼業で自分のスキルが生かせるならぜひ挑戦したい』という人が大勢います。転職を強いるのではなく、副業/兼業というスタイルを柔軟に取り入れることで、自治体がDX人材の不足を補うことも容易になるはずです」と岩崎氏は強調する。

デジタルスキル標準などを参考に
内部人材の戦力化も進めるべき

 副業/兼業によるコラボレーションについては、慶應義塾大学 教授の村井 純氏も「とても重要なこと」とうなずく。そして、外部人材を機能させるためには、組織を横につなぐワークスタイルをいかにして確立するかがポイントになると提言した。

慶應義塾大学 教授 村井 純氏
慶應義塾大学
教授
村井 純
 「例えば、デジタル庁は複数の省庁の職員と民間人材が混ざった組織の代表例です。ここが多くの成果を上げられているのは、プロジェクト単位で組織横断的に人が稼働するワークスタイルを確立しているためだと思います。このように、人材の獲得・育成に向けてはワークスタイルを見直すことも必要です」

 さらに、内部人材を戦力化するためのリスキリングも不可欠になる。必要に応じて外部人材を登用するだけでは、デジタルの力は組織に根付かないからだ。「高度なデジタル人材と行政職員の間に立ち、テクノロジーと業務の両方を把握した上で通訳できる人材が求められています」と山名氏。近年はプログラミング知識がなくても扱えるノーコードツールが登場している。このようなツールを活用することや、そのための研修を実施することもリスキリングの効果的な手法になるだろう。

 ただ現実には、何から手を付ければいいのか分からずにいる自治体/企業は少なくない。その場合は、組織のゴールを明確化し、実現に向けてどのような人材が必要なのかを分解して戦略的に考えることが肝心だ。指標になるものとして経済産業省が公開しているのが「デジタルスキル標準」である。「このようなガイドラインも参照しながら、自組織に足りない要素を可視化し、取り組みの高度化につなげていただきたいと思います」と上村氏は述べる。

すべてをゼロから学ぶ必要はない
正しい判断ができることが重要

 近年は、インターネットやSNSなど、最新のデジタル技術に関する情報を得られる環境が整っている。また生成AIの進化によって、コーディングさえ任せてしまえる環境も登場しつつある。「このように、業務に役に立つツールがあふれている時代には、すべてをゼロから学ぶ必要はありません。代わりに、『自組織に何ができて何ができないのか』を正しく判断し、足りないものを見定められる人材が必要です。この視点を持つことで、組織内でのデジタル人材育成、リスキリングのハードルはぐっと下げられるはずです」と岩崎氏は語る。

 なおYOUTRUSTは、デジタル人材をはじめとするビジネスパーソンをつなぐキャリアSNSとして「YOUTRUST」を提供している。その目的は、即時の転職ではなくネットワーキングと中長期的なキャリアビルディングの支援。人材市場の約6割を占める転職潜在層に対し、相互の関係性構築を促すことで、より多様な活躍の場を提供したいと考えているという。

 進化し続けるテクノロジーと向き合い、その効果を引き出すエンジニアやデジタル人材の育成は国力を高めるために不可欠である。これらの人材が増えることで、日本の自治体/企業のDXは力強く加速していくだろう。解決すべき課題は少なくないが、いくつもの指針が見えた有意義なセッションとなった。
  • YOUTRUST調べ