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日経デジタルフォーラム デジタル立国ジャパン2024 Review
日経デジタルフォーラム デジタル立国ジャパン2024 Review
パネルセッション

地方創生、地域DX、中堅中小企業の
デジタル化促進に向けた課題と解決策

重要度を増す
情報開示とシェアの概念
2024年の
「地域DX」の現在地

自治体のDXを推進し、それをどう地方創生に反映させていくか――。この「地域DX」は本フォーラムの立ち上げ以来、繰り返し議論してきた重要テーマの1つだ。そこでは、地域社会の重要な担い手である中小企業のデジタル化をどう促進するかもカギになる。2024年の官民の取り組みの現在地と、直面する課題とは。

デジタルとアナログの融合で
市役所機能を提供する奈良市

奈良市 CIO 中村 眞氏
奈良市
CIO
中村 眞
 地域DXの先行事例の1つとして知られるのが奈良市である。キーワードは「デジタル市役所」。単にWeb上に市役所機能を置くだけではなく、住民と心を通わせるところはアナログで残している点が特徴だ。「デジタル市役所は24時間365日対応のタッチポイント、一方のリアル市役所は地域コミュニティが育つ場に、というのが目指す方向性です」と奈良市の中村 眞氏は紹介する。

 既に多くの成果が生まれているが、今後は取り組みのアジャイル化を加速していく。一般に、予算策定が年1回と決められている行政機関の場合、DXに不可欠なアジャイルな進め方は難しいといわれる。そこを工夫して試行と検証・改善のサイクルを高速に回していくのが目標だ。

 「ソフトウエア開発やクラウド利用など、民間のプロジェクトではアジャイルが一般化しつつありますが、それを自治体の現場でも取り入れるというのは先駆的だと思います」とITコーディネータ協会の野村 真実氏は述べる。

特定非営利活動法人ITコーディネータ協会 会長 野村 真実氏
特定非営利活動法人ITコーディネータ協会
会長
野村 真実
デジタル庁 統括官 村上 敬亮氏
デジタル庁 統括官
村上 敬亮
 このような個々の自治体の取り組みに呼応する形で、政府も地域DXの支援を強化している。一例が、ソフトウエアやアプリを複数自治体で共有する取り組みだ。「例えば、小規模な基礎自治体の中にはIT担当者が3人以下のところが多く存在します。それらの自治体が個々にシステムを開発するのではお金も人手も非効率です」と話すのはデジタル庁の村上 敬亮氏。そこで、ある自治体が開発したシステムの共同利用化、さらには従量課金型で使える共通SaaSを国が提供することも視野に入れ、検討を進めているという。

総務省 自治行政局地域力創造グループ 地域情報化企画室長 併任 地域DX推進室長 志賀 真幸氏
総務省
自治行政局地域力創造グループ 地域情報化企画室長
併任 地域DX推進室長
志賀 真幸
 総務省も指針を示している。「村上さんの言う通り、市町村が個々に取り組むのは非効率です。そこで総務省は、例えば自治体窓口などのフロントヤードの改革推進に向けて、人口規模別にモデル団体を選定し、、取り組みの例やシステムを汎用化して横展開することを目指しています。共通SaaSも、デジタル庁との連携のもとで支援していきます」と総務省の志賀 真幸氏は話す。

 実際、先に紹介された奈良市の仕組みでも、既存のプラットフォームを有効活用しているという。「国が示すベストプラクティスや先行自治体の成果があってこそ、個々の自治体の取り組みは加速できるのだと思います」(中村氏)。

「啐啄同時」のスタンスで
地域のリーダー企業を育てる

 また、地域社会のDXを加速する大きな要素の1つにマイナンバーカードがある。発行枚数は1億枚に迫っており、サービスに取り入れる自治体も多い。「マイナンバーカードは、むしろ低所得者層や生活困窮者層など生活の苦しい方々に、透明かつ便利な住民サービスを届ける上で非常に有効なツールです。自治体はもちろん民間企業も、活用アイデアをどんどん出していただきたい」と村上氏は述べる。

 さらに、地域社会の担い手となる中小企業のDXをどう加速するかも本セッションの重要テーマだ。2023年の中小企業基盤整備機構の調査では、DXに「既に取り組んでいる」「検討している」率は計31.2%だった。ITコーディネータ協会は、これら中小企業の取り組みを支援しているが、今後は支援方針を「啐啄同時(そったくどうじ)」に転換していくという。これは「鳥の雛が卵から出てくる際、同時に親鳥が手助けをする」意味だ。

 「日本には中小企業や小規模事業者が300万社以上存在し、アンケートから約1/3の100万社がDX推進上の課題を持つと考えています。そのすべてを支援することは体制面で難しいため、まず積極的に“殻を破ろう”とする企業を支援することで地域のリーダーを育て、そこからDXを波及させていければと考えています」と野村氏は言う。
  • 独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2023年)」

情報を開示するほうが得になる
そんな社会をつくりたい

 中小企業のDXについて、村上氏は「積極的に情報開示を進めた企業が得をする時代がやってくる」と提言した。具体的には、デジタル技術を使って原料調達から生産、流通、販売まで、すべてのプロセスをデータ化して必要な相手に開示する。新規の取引先や出資先に発見してもらいやすくするためにも、「情報は『隠す』より『開示する』ほうが得。今のままを守るのではなく、見つけてもらうことにより新たな絆を生み出すことがDX。経営者の方には、その可能性の大きさを信じてもらいたい」(村上氏)。

 人口減少社会に突入した現在、仮に何もせず放置しておけば、各自治体の機能は徐々に失われ、住民サービスは低下していってしまうだろう。重要なのが、大手はもちろん中小、ベンチャーまで様々な民間企業が積極的に自治体と連携し、機能を補っていくことだ。

 デジタル化を進めることで、自治体と民間企業、あるいは自治体同士の間で情報・データをシェアできるようになる。助け合うところ、共有できるところを見つけ出し、効率よく地域特有、企業特有の課題に向き合う。それがこれから描くべき地域DX、地方創生の1つの姿といえるだろう。

 「そのために必要な、様々なプレーヤーを巻き込む仕組みをつくることも、我々総務省の役目だと感じています。そのための支援も強化していきたいと思います」と志賀氏は最後に語った。