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日経デジタルフォーラム デジタル立国ジャパン2024 Review
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パネルセッション

官民連携による社会課題の解決

三者三様の視点で
提案する
官民連携による
社会課題の解決

デジタル田園都市国家構想に関連して、目標を上回る中間報告が相次ぐなど、デジタル社会に対する認識は広く浸透しつつある。その先にあるのは、テクノロジーを実装し、社会課題の解決にどう展開していくかだ。1つの切り口になるのが官民連携。官と民、DXの重要ファクターであるデータ利活用の視点から、課題と取り組みについて意見が交わされた。

社会課題解決のボトルネックとなる
日本の人材流動性の低さ

慶應義塾大学 教授 村井 純氏
慶應義塾大学
教授
村井 純
 「社会への浸透から具体的な社会課題の解決へと、行政DXのステージは移りつつあります。現状を踏まえた目標の補正と、2024年時点での未来ビジョンを議論する場にしていきましょう」。司会を務める慶應義塾大学の村井 純氏はこう述べ、3人のパネリストの現状分析、具体的な取り組みを聞くところからディスカッションは始まった。

 東京都の宮坂 学氏が提示した「デジタル公共財を増やすデジタル化」は、まさにステージが変わりつつあることを象徴する取り組みだろう。アプリなどを個別に開発・調達するのではなく、公共財として公開し、広く共有することで効率よく成果を出していく。GovTech東京による、採用したデジタル人材を区市町村へ派遣する取り組みは、人材不足解消だけでなく官民連携の視点からも意義がある。


EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 ストラテジー・アンド・トランスフォーメーションリーダー セクターリーダー パートナー 菅田 充浩氏
EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
ストラテジー・アンド・トランスフォーメーションリーダー セクターリーダー パートナー
菅田 充浩
 自身のキャリアを通じて官と民の双方を支援してきた経験を持つ、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの菅田 充浩氏は「ルールチェンジに対応できているかどうかが考え方の起点になるでしょう」と述べる。人口増加かつ経済が高成長している時期と、人口減少かつ低成長の時期では、視点も具体的な施策も変わる。官民双方がルールチェンジを理解する必要があるという指摘だ。

 「個別最適ではなく全体最適を考えなくてはいけない日本では、持続可能な官民連携マーケットが求められています。ここで問題になるのが人材です。都市部の民間企業と官民含めた地方のマーケットの間には齟齬が生じやすく、それを埋めるのが人材ですが、人材の流動性が低い日本では効果的な人材の配置が難しい。民間は副業/兼業で状況が変わりつつありますが、官は法律なども絡むため一気には変わりません。人材の問題が、官民連携で社会課題を解決するカギになります」(菅田氏)

フルタイムと副業/兼業
両タイプのデジタル人材が必要

一般社団法人リンクデータ 代表理事 デジタル庁オープンデータ伝道師 和歌山県・市町村DX専門プロデューサー 下山 紗代子氏
一般社団法人リンクデータ
代表理事
デジタル庁オープンデータ伝道師
和歌山県・市町村DX専門プロデューサー
下山 紗代子
 同じく、人材が官民連携のボトルネックになり得ると語ったのはリンクデータの下山 紗代子氏。様々な自治体DXを支援してきた経験を基に、「ツールのリテラシーにギャップがあり、余計なコミュニケーションコストかかってしまうこともあります」と語る。「官の側で一定の基準を定め、組織内のリスキリングなどでベーススキルをそろえていけば、官民のコラボレーションが生まれやすくなると思います」と解決の筋道を示した。

 人材の獲得に関して成功事例となるのが東京都だ。東京都の取り組みは行政DXのベストプラクティスともいわれている。宮坂氏は、「受け身では状況は変わりません。行政のデジタル化に参加することの面白さ・ダイナミックさを、もっと積極的に発信していかなくてはいけないと思います」と語る。その上で、改革に本気で向き合うのならば、フルタイムの雇用だけでなく、課題に応じて経験やスキルで貢献する副業/兼業も合わせて、両タイプの人材が必要になってくると加えた。

東京都 副知事 宮坂 学氏
東京都
副知事
宮坂 学
 自社の採用戦略のメンバーにもなっている菅田氏は、「学生の意識変化にも目を向けるべきでしょう」と提案。社会課題の解決に貢献したいと語る優秀な学生が増えており、「キャリアの最初から、週4日はコンサル、週1は公共の職員として働くなど、柔軟な働き方のパスが見える社会になれば、人材の流動化が進みやすいかもしれません」と持論を語った。

官民のスムーズな連携を生む
オープンデータの重要性

 また、官民連携での社会課題解決に向けては、三者三様の捉え方、取り組み方、そして未来像が示された。「官民の連携で新しい役割分担を可能にするためにも、今こそオープンデータが重要です」と強調したのは下山氏だ。EUでは、公的機関から相互運用性を担保されたデータの公開が進んでおり、「日本も公開可能なデータはデジタル公共財として整備する必要があります」と提案する。

 「デジタル田園都市国家構想でも、共通基盤にオープンデータが位置付けられています。民間事業者でもデータのリソースが手に入りやすくなれば、マーケティング精度が向上するでしょうし、官民のコラボレーションも生まれやすくなるはずです」(下山氏)

 菅田氏は、民間企業の視点で「株主第一主義の蔓延」への懸念を示した。株主が重要なステークホルダーなのは間違いないが、従業員とその家族、地域社会など、あらゆるステークホルダーの成長・繁栄にコミットするのが日本型経営の美点。「すべてのステークホルダーにどう企業価値を発揮していくのか。原点に立ち戻り、公共に対する投資、貢献への取り組み方を明確にした経営をしてほしいと思います」とメッセージを送る。

 自治体の視点で、宮坂氏はシンプルな原則を最後に示した。それは「民間が成長できる環境をつくること」。連携を通じて民間が利益を得られれば、新たな雇用が生まれる。官の側からすれば税収が増え、それを新たなデジタル投資に向けられる。「官民連携で社会課題を解決していくには、そういう流れをつくらなくてはいけません」との意見には全員が賛同した。

 最後に村井氏は、「準公共」という概念を提示した。教育、高齢化社会、農業自給率、災害対策など、準公共と呼べる領域では官民の連携が生まれやすい。そこにどのようにデジタル技術を組み込むかという着眼点が、1つの突破口になるかもしれない。