ITモダナイゼーションを行う際に必要な、
複数の視点とは
日本企業ではシステム開発を外部のSIerに委託することが一般的だ。ITモダナイゼーションも「知見のあるベンダーに任せて簡単に実現したい」と考えている担当者は多いだろう。また「単一のテクノロジーやアーキテクチャで実施したい」「コンバートはAIに任せたい」「予算を事前に固定したい』と考える企業も少なくないはずだ。
「しかし、そのような淡い期待を捨てることがITモダナイゼーションの第一歩です。なぜならITモダナイゼーションには多岐にわたる検討事項が存在し、間違いのない判断を下すには、自ら試行錯誤を繰り返すしかないからです」とアビニシオソフトウェアの早瀬 勝氏は強調する。
例えば、現状分析によってリノベーション対象プログラムと塩漬け対象プログラムを仕分ける際には、グレーゾーンをどうするかを考えなくてはならない。どのプログラムまでモダナイズするか、データ構造は変えるべきか、新しい開発スタイルに切り替えるのか、などなど……。これらは外部のSIerが机上で検討しても答えは出せない。企業が自らトライアル&エラーを繰り返すことが肝心だ(図1)。
図1 多様な検討事項が発生するITモダナイゼーション
例えば現状分析のフェーズでは、リノベーション対象と塩漬け対象を仕分ける必要があるが、両者の間にはグレーゾーンがある。これらへの適切な対応は自ら試行錯誤を繰り返しながら考える必要がある
また、モダナイゼーションには必須の視点がいくつかあり、それを意識することも重要だ。その1つが「コード量を最適化する」視点である。
「従来の開発方法は単機能のものを積み上げる、ピラミッド建設に似たアプローチでした。こま切れで開発されたシステムには、コピー&ペーストされたコードも多くあります。またライブラリが低レベルだったため、かなりの量を自ら記述しており、結果的にコード量が増えていました」(早瀬氏)
これを現在の技術で書き直すとコード量は減る。うまくモダナイズすれば20分の1以下にできる可能性もあるという。一方、コンバーターを使うだけでは逆に行数が増え、処理が遅くなることがある。また、管理工数削減のためにはプログラム本数もなるべく減らすことが重要だ。ITモダナイゼーションを行う際には、このような最適化の視点を持つことが欠かせないという。
基盤の特性に合わせた
処理アーキテクチャの見直しも不可欠
もう1つは「データ構造」に対する視点だ。レガシーシステムのデータ構造は多くのフィラーを持つ大福帳形式が多いが、実データが入っているのは全体の10%程度。また、データの取り扱い方法が設計当初の想定から変わっても、そのまま処理しているケースが多くあるという。
「この構造を変えないまま移行しても、パフォーマンスは向上できません。とはいえ、どのようなデータ構造にすべきかを決めるのは簡単ではなく、外部のSIerに丸投げしてできるようなものではないのです」と早瀬氏は言う。
「全体的な処理アーキテクチャを見直す」視点も重要になる。メインフレームは1レコードへのアクセスが非常に高速なため、単純な処理を高頻度に繰り返すケースが一般的だ。一方、モダナイズ先になるクラウド環境はそうではなく、大量のデータを並列処理することで高いスループットを実現する仕組みになっている。このように、特性が異なる環境への移行とモダナイズを図る際には、処理アーキテクチャ自体も変えることが肝心だ。
「例えば、N本のバッチ処理がある場合、これまで通りに順次処理するのではなく、パイプラインでつなげることで処理時間をN分の1にできます。また、データキューを用いた準リアルタイム処理を増やしていけば、『締め処理』という概念を捨て去ることも可能です」と早瀬氏は説明する。
アビニシオソフトウェアは、このような複数の視点を踏まえた最適な実行環境を提供している。
同社は1980年代にMPP※1を作っていたメンバーが中核となり、並列分散処理のソフトウエアを開発・提供してきた会社だ。レガシーマイグレーションは本業ではないが、メインフレームを含む多様なインフラで稼働する点や、メインフレームのデータをLinuxなどでそのまま処理できる点、メインフレームからの移行後にハイパフォーマンスな処理へ移行しやすい点などが評価され、世界の大企業の多くがマイグレーション先の基盤に採用している。
「30年の実績を持ち、枯れたシステムとしての安定性を強みとするほか、先進技術もふんだんに実装しています。また大規模プロジェクトでの経験や現場のノウハウも、製品開発に随時フィードバックしています」と早瀬氏は紹介する。
※1 Massively Parallel Processing(超並列処理)。スーパーコンピューターなどで用いられる大規模並列処理の仕組みのこと
必要な箇所は並列化して処理を高速化
テストの自動化も
それでは、COBOLマイグレーションの例を基に、アビニシオソフトウェアの特長やメリットを見ていこう。
アビニシオソフトウェアの環境でのCOBOLからのコンバート直後は従来と同じ処理内容のプログラムが生成され、1レコードずつ順次処理するループが残っている。重要なのはここからだ。それらのループを取り去り、中間ファイルも排除したパイプライン処理に変換していく。必要に応じて各処理コンポーネントの並列度を高めたり、配置を最適化したりすることで、性能を一層高めることも可能だ。
「実行環境がメタデータ管理下にあるため、抽象化されたビジネス要件に基づくロジックを実現できます。統合テストフレームワークも実装しているため、CI/CDを実現しやすいことも大きな特徴です」と早瀬氏は述べる(図2)。
単機能のプログラムを多くのエンジニアに振り分けて開発し、それらを結合して総合テストを行うという従来型の開発モデルの場合、作業人数は多くなり、全体の見通しも悪くなる。これに対してアビニシオソフトウェアの環境では、少人数の高スキル人材によるメタデータ駆動・試験駆動型、CI/CD型への開発モデルへ移行できる。「これにより開発の効率化、生産性向上を図れることはもちろん、コードの量や開発・運用コストの大幅削減も実現できます」と早瀬氏は語る。
そこで求められる高スキル人材の育成についても同社はサポートしている。トレーニングの実施や各プロジェクトの担当コンサルタントによる情報提供、トライアル環境としてのテストドライブの提供など、複数の支援策を用意しているという。
「ITモダナイゼーションは喫緊の課題ですが、だからといって外部に丸投げしていてはコアコンピタンスになるデータの知見が組織から失われてしまいます。人を育て、自ら考えて恐れずに挑戦することが大切です。私たちは、そのためのお客様の取り組みを全力でご支援します」と早瀬氏は話す。
成果につながるITモダナイゼーションをどう実現するか。同社の提案はそのためのヒントを与えてくれる。



