三菱重工サーマルシステムズ
地球環境に配慮した「空調」の市場価値は年々高まるばかりだ。空調のキーテクノロジーとなる、冷やす・暖める「冷熱技術」分野を牽引してきた三菱重工。卓越した技術を継承する同グループの三菱重工サーマルシステムズは、世界初、業界初といった技術革新により社会課題の解決に取り組む。
三菱重工サーマルシステムズ
マーケティング室 室長
木村 秀徳 氏
三菱重工における冷熱の歴史は、終戦直後の1946年まで遡る。70年以上にわたり、様々な冷熱製品を通じて国内はもとより世界で「過ごしやすい環境」の実現に寄与してきた。2016年に三菱重工の冷熱事業を継承する形で分社化し設立されたのが、三菱重工サーマルシステムズだ。空調ビジネスは大転換期の只中にあると、三菱重工サーマルシステムズマーケティング室室長の木村秀徳氏は話す。
「空調は空気や水などの熱エネルギーを活用します。地球環境保全の社会的要請に応えるためには、環境負荷が少ないフロンガスの採用や化石燃料を使用する従来型の熱源へのヒートポンプ省エネ機の提案、さらなる空調機の省エネ・高効率の実現が必要です。また、コロナ禍などにより、安全安心かつ快適な空気環境へのニーズも高まっています。これまで培った冷熱技術とノウハウを駆使し、さらに技術革新にチャレンジすることで、社会課題の解決、新たな価値の創出に取り組んでいます」
■低GWP冷媒採用ターボ冷凍機
シンガポール新都心マリーナベイエリアの地域冷房などで導入されている
地球温暖化の原因となる温暖化ガス排出量の削減を目指し、世界でフロンガス規制が進む。オフィス、ショッピングモール、地域冷暖房、工場など、大空間で使用されるターボ冷凍機においては、低GWP(地球温暖化係数)冷媒の導入がトレンドだ。国内のターボ冷凍機市場で6割(同社調べ)のシェアを持つ三菱重工サーマルシステムズは、市場を牽引するリーダーとして、他社に先駆け2015年に国内初の低GWP冷媒(GWP=1)採用のターボ冷凍機を市場投入した。
開発に際してコンパクト化が課題になったと木村氏は言う。「冷媒は圧縮することで冷凍サイクルを循環します。ターボ冷凍機における圧縮機は、インペラー(羽根車)の回転による遠心力で冷媒を圧縮するのが特徴です。従来の冷媒と物性が異なるため、低GWP冷媒の採用には、圧縮機が大型化してしまうのが問題でした。これを解決すべく、航空機、ガスタービンなどで培った三菱重工の空力設計技術を活用。羽根車の吸込風量を大幅に増加させ、駆動する電動機と直結することで構造をシンプルにし、小型化とともに信頼性向上、駆動に伴うエネルギー損失を低減し高性能化・高効率化を実現。当社の低GWP冷媒採用ターボ冷凍機は幅広い容量帯をカバーする製品をラインアップしており、国内はもとより、シンガポール新都心マリーナベイエリアの地域冷房など海外でも導入が拡大しています」。
持続可能な空調を実現するうえで、再生可能エネルギーの利用は重要なテーマだ。一般的な空調では、太陽光発電が有力な選択肢となる。しかし地域冷暖房の場合、太陽光発電では出力が小さく、夜間や雨天に利用できないことが課題となる。同社は、未利用エネルギーの地下水熱に着目した。その理由について木村氏は説明する。「ポイントは、地下水で満たされた
脱炭素の観点から、化石燃料などを利用する給湯器やボイラーの代替として注目を集めているのがヒートポンプだ。温度の低いところから高いところへ熱を移動させるヒートポンプの仕組みを活用し、CO₂排出量の削減が図れる。しかし、ヒートポンプは外気温度が低い場合に加熱能力(給湯量)が低下する課題があった。技術的ブレークスルーとなったのは、同社が業務用給湯器「Q-ton(キュートン)」向けに開発した世界初の2段圧縮機式「スクロータリーコンプレッサ」だ。
■世界初の2段圧縮機式「スクロータリーコンプレッサ」
寒冷地でのヒートポンプ給湯器の導入を可能にする技術
「自然冷媒であるCO₂冷媒の圧縮工程を高圧力と低圧力の2段とし、1段目と2段目の間にガス冷媒を供給することで、加熱能力を増加させます。外気温度マイナス7度まで加熱能力を維持し、マイナス25度でも90度の高温給湯が可能です。CO₂排出量削減はもとより、空気の熱を利用することにより大きな効率を生み出すヒートポンプの原理を生かすことで、ランニングコスト削減でもボイラーに対する優位性を実現しました。厳しい環境規制が進んでいるヨーロッパでは自然冷媒を採用した『Q-ton』が大いに評価され、導入が拡大しています。日本国内でもマイナス25度の外気温度でも90度の高温給湯が可能なことが大いに評価され、ホテル、病院、福祉施設、工場など利用シーンが広がっています」(木村氏)
快適空間の提供は、顧客満足度につながる重要なサービス要素の1つだ。「エアコンの風が直接体に当たることで生じる、不快感を回避したい」という利用者の声から生まれた業界初の機能が「AirFlex(エアフレックス)」である。体に直接風を当てない間接風を実現するために、三菱重工の航空機開発で培った高度な流体制御技術を用いた。
■風を人体に直接当てない「AirFlex」
航空機の翼の技術を生かして心地よい気流をつくり、快適空間を実現
「参考にしたのは、飛行機の揚力を生み出す主翼のフラップの動きです。気流を水平方向にいかにスムーズに飛ばすかを流体解析と試作により試行錯誤を繰り返し、間接風による心地よい気流をつくることに成功しました。また、当社と九州大学との共同研究により、脳科学で『AirFlex』による快適性を証明しました。『AirFlex』は、全ての天井埋込型4方向吹き出し室内機に対応しており、オフィス、店舗、病院、美容院、学習塾など快適空間のニーズが高いシーンで利用が進んでいます」(木村氏)
地球環境保全への対応は空調分野に新たな市場を創り出した。「当社のビジネスも大きく伸びています。脱フロン、脱炭素、省エネ、快適性などの領域で技術に一層磨きをかけ、開発力の向上、製品ラインアップの拡充により持続可能な社会の実現に貢献していきます」と木村氏は抱負を語る。
技術革新で社会課題を解決し、空調ビジネスに未知の可能性を開く。三菱重工サーマルシステムズの挑戦は続く。
Contents
総論

アズビル

荏原製作所

新菱冷熱工業

新晃工業

東洋熱工業

高砂熱学工業

日立ジョンソンコントロールズ空調/日立グローバルライフソリューションズ

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