
嶋倉 泰造氏
東京海上ディーアール株式会社
代表取締役社長
伊藤 連載形式で展開した企業広告「東京デジタル」が金賞を受賞しました。受賞したことをお聞きになったときの感想をお聞かせください。
嶋倉 まさか賞をいただけるとは思っていなかったので、驚くと同時に大変うれしかったですね。この企業広告では日経BPのサポートにより、年間を通じて極めて良質な記事を展開することができました。営業や企画、編集、デザインなど多くの方々に関わっていただき、相当な手間をかけて進めていただいたことに感謝しています。
伊藤 今回の企画のねらいを教えてください。
嶋倉 昨年7月、東京海上グループは、傘下である東京海上日動リスクコンサルティングの役割拡大と社名変更を行い、データ戦略の中核を担う新拠点として東京海上ディーアールを始動させました。この新たな組織の名称やしつらえ、さらには事業戦略を早期に認知拡大したいと考え、日経BPに相談したところ、総合的なメディアプランニングをご提案いただきました。様々な案を提示していただいた中で今回の企画に落ち着いたのですが、正直なところ最初は「かなりエッジが立っているな」という印象でした(笑)。保険会社は非常に真面目ですので、実は「東京デジタル」というタイトルも大げさなのではと思っていました。ただ、「記事は読まれないと意味がない、少しキャッチーな表現で読者を引きつける必要がある」といったことをプロの方々に教えていただいてご提案の通りにやってみた結果、そのキャッチーさが好評だったのでチャレンジしてよかったと思っています。
伊藤 初めに想定していたターゲットにうまく届いたでしょうか。
嶋倉 その点は見込み通りでした。まず、リーチ層を綿密にセグメントしていただき、特にデジタル版の露出展開ではターゲットメールを活用するなどセグメントに基づいたリーチを行いました。最終的には、ターゲットの中心としていた管理職層の厚みが大きくなり、実際にデジタル版でのPVやサイトの訪問者数、閲覧時間といった結果を見ても十分に届けられたのではないかと手応えを感じています。
伊藤 審査会では「誰が競争相手になるかわからない時代に、従来の保険会社にはない新たな事業領域へ挑戦する姿を評価」「新会社の意図・ねらいを伝えるヘッドラインが秀逸」という声が上がりました。このような評価に対して、どのような感想をお持ちでしょうか。
嶋倉 もともと保険業界は壮大な装置産業であり、保険を引き受ける際の様々なノウハウや、損害を査定するといったハードの部分が非常に大きな参入障壁になっていました。ところが、昨今ではAIやビッグデータ、デジタルデバイスの活用で、参入障壁がどんどん低くなっています。そんな危機感も今回の施策のきっかけとなっていますから、「東京デジタル」の記事も一貫して弊社のポジション確保といったテイストで制作していただいています。記事内容もヘッドラインも随分工夫を重ねていただきましたが、そこから我々の思いが伝わり、審査員の皆様にご評価いただいたのならうれしい限りです。

伊藤 暢人
日経BP
経営メディアユニット長
伊藤 社内や社外からは、どのような反応がありましたか。
嶋倉 今回の企業広告は東京海上グループとしての戦略の一環でもあります。今後東京海上グループが、東京海上ディーアール(dR)の「d」が示すデータ、デジタル、デザインを武器に、様々な「R」、Refine、Reduce、Resilienceなどを実現し、最終的にはRedefine、つまり保険の概念や保険会社のあり方を再定義していくことを社内に周知し、風土改革につなげていくことを期待していました。東京海上グループの全社員に向けたメッセージも込めているのですが、多くの社員から「方針がよくわかった」「新しいことが始まっていることを感じる」といった声が寄せられ、そこは成功したと思っています。一方で、個別のソリューションもご紹介しており、広告をきっかけに社外のお客様からコンタクトをいただくケースもかなり出ており、ビジネス上の成果であると思っています。今回、このようなマーケティングの手法があることを手触り感をもって実感できたことは、非常にありがたかったですね。
伊藤 コロナ禍の影響も含め、これから世の中はさらに変化していくと思われますが、今後のマーケティング活動についてどのように考えていますか。
嶋倉 もともとリスクコンサルティングを主業とし、物件のサーベイやBCPの訓練、講演などリアル商材がメインだったため、コロナは大きな痛手でした。そんな中でIT環境を整えていき、例えば物件のサーベイなどは現地のアライアンスにカメラを持参してもらい、それをこちらで確認しながら調査するなどリアル商材をどんどんオンラインに切り替えていきました。その結果、比較的早めにオンライン環境に順応でき、今では売上規模もコロナ前に戻っている状況です。コロナ禍でやむを得ずデジタル活用は拡大しましたが、逆に効率化やスピード感、手軽さなどを実感する機会となり、今後もデジタルは手放せないものになったと思います。一方で、ビジネスやマーケティング領域では手触り感や体温といった身体感覚の重要性を改めて感じ、アフターコロナではこの両者をいい塩梅でミックスしながらお客様にご提供することがマーケティングの鍵になると考えています。今回の施策においても、紙媒体とデジタル媒体というしつらえ自体がそもそもハイブリッドであり、今後はデジタルメディアとリアルイベントを連動させるなど、複層的な組み合わせに期待感を持っています。
※所属・肩書はインタビュー時点