
秦 昇一郎氏
日本マイクロソフト株式会社
セントラルマーケティング本部
インダストリーマーケティング部
部長
河井 デジタルイベントの「ものづくりの道しるべ 製造業DXフォーラム2021」が高く評価されました。ここに至るまで、コロナ禍でのマーケティング活動がどのように変わってきたか教えてください。
秦 2020年4月に緊急事態宣言が出て以降、それまで毎週のように行っていたイベントやセミナーが一切できなくなり、デジタルへとシフトしていきました。ウェビナーの参加率も一気に上がってニーズが高まったのですが、多くの企業がウェビナーへと移行して1日に数千本が配信されるようになり、集客しても参加数が伸びない状況となっていました。お客様はどれを見ていいのかわからない「デジタル疲れ」に陥ってしまったのです。そんな中、21年1月開催の参加できなくなった他社イベントの代わりにオンラインでのイベントを検討しました。その結果、自動車業界の情報やコンタクトを持っている日経Automotiveの力を借りることになり、タイアップしてコンテンツマーケティングを活かしたデジタルイベントを実施しました。この施策で「これはいける」という感触があったため、このときの手法をアップデートして製造業向けのデジタルイベント「ものづくりの道しるべ」に取り入れ、今回の受賞に至りました。
河井 日経Automotiveとタイアップしたデジタルイベントでは、どのような感触が得られたのでしょうか。
秦 一つは、弊社がターゲットとしていた自動車業界におけるBDM、いわゆるビジネス上の意思決定を行う部長以上のお客様のコンタクトが取れたことです。これは、一番期待していたことでした。二つ目は、複数日間開催する場合、お客様に1回だけでなく、いかに再来訪してもらうかということが大きな課題となりますが、それがクリアできたことですね。デジタルイベントの期間中、毎日新しい情報を提供していくというコンテンツマーケティングを取り入れることで、再来訪率を高めることができることを学びました。
河井 「ものづくりの道しるべ」は、その先駆けとなった日経Automotiveのイベントに比べてどのような点が更新され、成功につながったとお考えですか。
秦 大きく異なっていたのは、コンテンツの内容です。前回は弊社からの情報発信がほとんどでしたが、今回はターゲットである製造業のBDMのお客様に向けて、どのようなコンテンツを発信していくかということを日経ものづくりの編集や企画の方々と話し合い、コロナで直接現地からの情報が取れなかった「ハノーバーメッセ2021」の最新レポートをはじめ、様々な視点でのコンテンツをご用意いただきました。弊社で出せる情報は限られていますから、コンテンツを網羅的に提供できたことがお客様の関心につながったと思います。もう一点、プレイベントを設けて、ティザー広告のようにコンテンツを小出しにすることで、お客様の期待感を高めることができたことも成功ポイントです。こうしたギミックを利かせたコンテンツ発信により、イベント登録者数やイベント内での回遊率が非常に高まりました。
河井 今回のデジタルイベントに関して、社内の反応はいかがですか。
秦 このようなイベントはマーケティング部門で共有するのですが、この型がスタンダードになったように思います。他のチームメンバーを含め、複数日間開催するイベントでの悩みは、1回の来訪で終わってしまうこと。そこで、お客様の興味喚起のために定期的にコンテンツを配信するなど、今回のコンテンツマーケティングの手法を一つの型として、それぞれが担当するソリューションエリアで活用し始めています。

河井 保博
日経BP
技術メディアユニット長
河井 デジタルイベントでどのような成果が上がりましたか。
秦 まず、データ的に見て、製造業をはじめ、これまで弊社とはコンタクトがなかったお客様との接点ができたことです。そもそもデジタルイベントでは、製造業界や自動車業界などインダストリーにおいても、MicrosoftはITベンダーとしてお客様の課題を解決できるというバリューの訴求を狙いとしていました。そこから、コンタクトできた新しいお客様と時間をかけてリレーションを築いていくというプロセスになりますから、我々マーケティングの仕事であるMicrosoftの認知向上、つまりドアオープンのところではデジタルイベントが大きな役割を果たしたと思います。
河井 今後はどのようなマーケティング活動を行っていきますか。
秦 今年も5月に「ハノーバーメッセ2022」が開催されますが、今回と同じスタイルでデジタルイベントを行っても成功するとは限りません。というのも、お客様がデジタルから受け取るメッセージが飽和状態になっているためです。やはり、これからは「ハイブリッド」という考え方が必要になると考えています。例えば、トレーニングやラーニングなど「学ぶ」コンテンツに関しては、オンラインが適しており、生き残っていくと思います。一方で、「体験する」ことに関しては、リアルでのイベントが必要です。弊社がご紹介したい分野によって、オンラインとリアルを使い分けていくハイブリッドのマーケティングを考えています。
河井 最後に、日経BPや媒体に対しての要望をお聞かせください。
秦 日経BPとタッグを組ませていただく大きな価値は、良質なお客様を引き込めることだと思っています。これからも、各業界における専門性の高いメディアとしてのコンテンツ発信に期待しています。
※所属・肩書はインタビュー時点