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ICT×人材育成×農業、プロ3社が集結し、新規事業を拓く

ソフトバンク・テクノロジー×マイファーム×テラスマイル

農地活用の道へ向けて――。「ICTを使ったデータの収集」が得意のソフトバンク・テクノロジー、「農業人材育成ノウハウ」の提供に力を入れるマイファーム、そして「営農支援コンサルティング」を展開するテラスマイル。この3社がその強みを集結して、日本の農業が抱える課題の解決に乗り出した。

 国内の耕作放棄地は40万haを大きく上回る。耕作放棄地の中には、農業はやめたものの、農地自体は保有しているケースが4割程度ある。農地を貸したい、あるいは売却したいという農家も少なくない。しかし、農地の情報を簡単に入手できる仕組みはこれまでなかった。

 「まず、農地の情報を適切に把握し、提供することが最初の第一歩になります」。そう語るのは、ソフトバンク・テクノロジーの上原郁磨・営業統括第3営業本部公共営業統括部統括部長代行だ。農地の情報と適正な評価が流通するようになれば、不動産情報と同じように売買したり賃貸できたりする。農業への参入もしやすくなる。

ソフトバンク・テクノロジー
営業統括第3営業本部 公共営業統括部 統括部長代行
上原 郁磨 氏

 農地を取得できたとしても、農地をどのように生かせるかというノウハウや情報がないと、農業として成り立たない。その農地がどんな場所にあって、日照条件は良いのか悪いのか、土壌のpHはどうなっているのかといったデータがあれば、その農地に適した作物の選定にも役立つ。

 解決すべき課題はもう1つある。経営という面で農業をどのように成り立たせるかだ。農業経営を始めるに当たって一般的なのは、営農に長けた農家の下に就農を志す人たちが集まり、農業に携わりながらノウハウを吸収し、やがて独立するという方法だ。また、企業が人材を集め、経営ノウハウをつぎ込んで大規模農業を事業化するというやり方もある。だがいずれの方法も、新規参入という観点からは敷居が高いのは否めない。

3社協同でICTを使った農業支援サービスをスタート

 そんな中、ソフトバンク・テクノロジー、マイファーム、テラスマイルの3社が手を組んだ。ICTを使った農業支援事業の始まりである。

 ソフトバンク・テクノロジーの得意分野はICTを使ったデータの収集だ。マイファームは、首都圏や近畿圏に体験農園を持ち、農業人材を育成する「アグリイノベーション大学校」を開講して“プロ農家”を育成している。テラスマイルは農業分野で「経営見える化サービス」「ICTを活用した営農支援コンサルティング」などを行っている。

 協業に先立ちソフトバンク・テクノロジーは、農林水産省からの委託事業として、地図情報企業などと共同で2014年度から「全国農地ナビ」(全国農地情報公開システム)の開発を進め、2015年4月から運用を開始している。このシステムでは、全国の市町村および農業委員会が作成・整備している農地台帳や農地に関する地図などを、公開情報として確認できる。

「全国農地ナビ」のトップ画面(写真:ソフトバンク・テクノロジー)

 「最初はデータを集めるのにも苦労しました。全国各地の農業員会に掛け合ったり、個別の農家に情報提供を求めたりしても、情報を出し渋ることが多くありました」(上原氏)。農業の生産性向上や就農者の誘致のためには、正しい情報を公開するのが第一歩だ。だが、農地台帳に記載された農地が実際とは異なっていたり、飛び地が多かったり、そもそも所有者が分からないケースもあったという。

マイクロソフトのグローバルアワードを受賞

 全国農地ナビは、第1フェーズで農地情報の全国化を実現すべく、公開システムの整備を行い、第2フェーズで公開システムをクラウド上に整備し、情報管理システムへの一元化を図った。これで誰でもクラウドで全国の農地情報を手に入れられる。

 なお、ソフトバンク・テクノロジーは米マイクロソフトが毎年実施している「マイクロソフト ワールドワイド パートナー アワード」で「カントリー パートナー オブ ザ イヤー アワード」「クラウドパッケージドソリューションズ」「メッセージング」「パブリックセクター―ガバメント」の4部門で2016年にアワードを獲得した。このうち「クラウドパッケージドソリューションズ」と「パブリックセクター―ガバメント」の2冠については、全国農地ナビの開発とクラウド上での運用・情報公開が対象となっている。

 運用が始まった全国農地ナビは、今後も情報の更新が図られ、常に新しい農地情報が提供される。その情報をどのように生かすかが次のフェーズになる。

「全国農地ナビ」では農地情報が更新され、その農地に合った作物を選定できる(写真:ソフトバンク・テクノロジー)

就農支援、営農コンサル――ノウハウを持つ2社と協業

 全国農地ナビによって、農地の情報は整備されつつある次の段階は、農地がどのように生かせるかという情報の提供だ。いわゆる農業の知見、営農のノウハウが必要になってくる。

 そこでソフトバンク・テクノロジーは、2016年9月にマイファームと合弁会社「リデン」を設立した。リデン(社長は上原氏が兼務、資本金1500万円の出資比率はソフトバンク・テクノロジー66%、マイファーム34%)は、農地検索サイト「農地の窓口」の運営のほか、農地情報をベースに企業や人の農業参入をサポートする。「リデンという社名の“リ”はリニューアルや利益の“リ”、“デン”は田から取りました」(上原氏)。

農地検索サイト「農地の窓口」のトップ画面(写真:リデン)

 「農地の情報を公開し、企業や人の参入を促すだけでなく、融資を受けるための営農計画策定やその実践などのノウハウを提供します。さまざまなノウハウを持つマイファームやテラスマイルと協業することで、農業分野事業を肉付けしました」と、上原氏は農業の活性化に照準を合わせていると強調する。

就農を志す人への就農支援も重要になる(提供:ソフトバンク・テクノロジー)

 3社協業によるICT農業支援事業は、緒に就いたばかりだ。全国農地ナビからスタートして、マイファームやテラスマイルとの協業、さらにはドローンやモバイルなどソフトバンク・テクノロジーのリソースを農業生産の効率化に役立てるなど、自社の得意技を生かすことも視野に入れている。

 時代が変化する中、農業にも革新が必要だという思いがある。上原氏自身、マイファームのアグリイノベーション大学校に入り、農業の勉強を始めたのだという。