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研修ハウスで1年みっちり“修業”

新規就農者を増やすJAグループ宮崎の挑戦

新規就農者を増やす取り組みは、日本の農業を再生する喫緊の課題だ。JAグループでも日本各地で取り組んでいる。その中でもひときわ目立つのが宮崎県にある「JA宮崎中央」だ。研修生は専用のハウスを1年間任され、実際に販売するきゅうりやミニトマトを自分の手で作り、営農の基本を身につける。卒業後の就農率は実に96.7%ときわめて高い。就農後わずか1年で、地域でもトップクラスの生産農家になる卒業生もいる。地域農業を支える人材を輩出する仕組みとして、宮崎方式に大きな期待が寄せられている。

「ジェイエイファーム宮崎」の研修用ハウス。ミニトマトを作っている

 農林水産省の統計データによれば、農業を支えてきた人たち、いわゆる基幹的農業従事者数は1995年には約256万人だったが、2015年には約175万人と、この20年間でなんと80万人も減った。比率で言えば32%もの減少になる。この減少傾向に少しでも歯止めをかけない限り、日本の農業が早晩立ちゆかなくなる。新規就農者を増やす対策は、もはや待ったなしの状況だ。

新規就農者を増やす宮崎県

 そんな中、農業研修の独自の仕組みを作り上げ、新規就農者を大きく増やしているのがJAグループ宮崎だ。

JA宮崎中央会 営農対策部部長
三田井 研一 氏

 「県の新規就農者はここ数年、年間300人前後で推移しています。15年は341人とこの6年間で最大になりました」と語るのはJA宮崎中央会営農対策部部長の三田井研一氏。「JA宮崎中央会」(以下、県中央会と略)は宮崎県の全体のJAグループを管轄する組織だ。

 三田井氏が挙げた新規就農者341人のうち、法人への就農者が203人。残りの138人は独立就農、いわゆる農家になった。このうち64人が新規参入組、つまり農業以外の道から飛び込んで来た。こうした数値は全国でもトップレベルだ。この宮崎県の中でも“ダントツ”の実績を誇る農業協同組合が「JA宮崎中央」だ。県の組織である県中央会とよく似た名称だが、宮崎県に13ある単位JAの1つで、宮崎市と国富町を管轄する。

 JA宮崎中央では、子会社の「有限会社ジェイエイファームみやざき中央」(以下、ジェイエイファーム)で新規就農を希望する研修生を受け入れ、1年間(8月から翌年7月)の実地研修を通じて野菜の栽培や管理技術を習得させ、独立就農に導いている。

就農率はほぼ100%

 ジェイエイファームは、高齢化が進む地域の営農を支援する目的で設立された農業生産法人(現:農地所有適格法人)だ。JA出資型と呼ばれ、JAの経営資源を活用して設立・運営される。野菜や水稲の育苗事業をメーンにしているほか、会社のハウスや農地で野菜を作る農業経営事業、農家にとって手間のかかる農作業を代行する農作業受委託事業などを行う。新規就農者を育てる研修事業は、2番目の農業経営事業の中に含まれる。研修生は栽培用のハウスを任せられ、実際に売り物となる野菜を作りながら、1年かけて農業の基本をみっちりと学んでいく。

ジェイエイファームみやざき中央のハウス

 JA宮崎中央とジェイエイファームが06年の研修事業を始めてから、今年で11期目を迎える。11期目は16年8月~17年7月までの1年間だ。これまでに受け入れた研修生の数は、11期生の6人を含めて合計99人になる。昨年の第10期生までの93人のうち、90人が就農を果たした。断念した人はわずかに3人。就農率は96.7%ときわめて高い。研修の中身の濃さがうかがい知れる数値だ。しかも90人のうち、農家の経営者となった独立就農組が71人にもなる。こうした実績は、全国各地の関係者から注目を集め、そのノウハウを得ようと日本全国のJAから視察者が訪れる。

失敗しにくい作物で意欲ある人を育てる

ジェイエイファームみやざき中央 専務取締役
松山秀人 氏

 JA宮崎中央とジェイエイファームの研修がこれほど高い就農率を挙げている理由にはいくつかある。(1)意欲ある人を選ぶ、(2)失敗しにくい作物を選ぶ、(3)基本を徹底的に身につけさせる、(4)研修後の就農支援も全力でサポートする、という4点に集約される。これらの根底には、意欲を持って飛び込んできた人たちを「何が何でも就農させてあげたい」(ジェイエイファームの専務取締役、松山秀人氏)という強い思いがある。

 研修生たちは、未来の地域農業を担う、言ってみればJA宮崎中央にとっては大切な“金のたまご”たちだ。だからこそ受け入れる前には念入りに人を選ぶ。面接を通じて、人柄をはじめ、どれだけ農業に本気で取り組む意欲があるか、就農後も継続していけそうかなどが見極められる。

 松山氏は「私たちには責任があります。せっかく農業を始めたのに失敗して借金を背負うようなことは絶対にさせられない。そのためにも受け入れる人を選びます」と語る。