ロボット農機、いよいよ本格実用期に!

クボタが描くスマート農業の未来と現状

現状のニーズに合ったレベル1.5も投入

 クボタでは、レベル2やレベル3を目指す開発とは別に、現在のニーズに沿った中間型とも言えるレベルの農機開発を並行して進めている。

 その一つが年内に発売するロボットコンバインWRH1200Aだ。佐々木専務はこの機種を「レベル1.5」と位置づける。有人運転を前提としたものだが、GPS機能による高精度の位置制御をしながら自動運転ができる。収穫中に食味と収量を感知するシステムも付いている。「GPSを使い、経路を自動計算して最短経路で設定できる。走行、旋回、刈り取り、昇降蛇も全部自動です。ただし必ず人が乗る有人での利用です。レベル1とレベル2の間のレベル1.5と位置づけています」(佐々木専務)。

2018年12月から販売が始まる自動運転アシスト機能付きコンバインWRH1200A。トラクタと同様に「アグリロボ」と名付けられているロボット農機だ。オペレーターが搭乗した状態での自動運転で稲・麦の収穫を行う。RTK−GPSによって高精度の位置制御ができる。(写真:高山和良)

ソフトウェアの中核がKSAS

 スマート農業の実現のために、ロボット農機と並んで重要になるのがクラウド型営農支援システムだ。

 クボタでは自社のクラウド型営農支援システムを「KSAS」(KUBOTA Smart Agri Systemの略。ケーサスと読む)と名付け、2014年から顧客である農家・生産法人にサービスを提供している。「現時点でサービスの加入者は6200ほど、このうちKSAS対応の農機と連動させて使っている方が600ちょっと。稲作で言えば日本の圃場の4.4%がKSASで管理されています」と佐々木専務は語る。

 クボタではこのKSASをさらに普及させ、バージョンアップをしながら未来のスマート農業に対応させていく。

 既に、現状のKSASは農業におけるPDCAサイクルを回すために極めて重要なツールになっている。サービスに加入している農家・生産法人は、自分が管理する圃場をPCやスマートフォン上の電子地図で管理し、それぞれについて、いつ、どんな作業をしたか、どんな肥料や農薬をどのくらい投入したか、といった記録を付けていく。従業員に対しての作業指示も簡単になる。こうした作業記録や指示、育成状況などは圃場ごとにいつでも見ることができるため、適正な作業をしているのか、肥料や農薬の過不足はないかを把握できる。

■クボタの次世代農業ビジョン
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クラウド型営農支援システム「KSAS」(KUBOTA Smart Agri System)。クボタが目指すスマート農業の中で、コントロールタワー的な役割を果たす。KSASと、自動運転できるトラクター、田植機、ドローン、コンバインなど各種ロボット農機がデータ連携しながら農作物を育てる。気象データや市場のデータなどとも連携し、農業経営に関わる各種情報システムとも連動する。(資料:クボタ)

 さらにKSAS対応農機と連動させると、一歩進んだ使い方ができる。今のところ、稲作向けのサービスとして提供されているが、これが未来のスマート農業向けクラウドサービスの原型になる。現時点では、食味・収量センサー付きのKSAS対応コンバインと連動させることで、米の品質改善のPDCAを回せる仕組みになっている。具体的には、コンバインで収穫すると同時に、圃場ごとの食味・収量を計測。そのデータをKSASのサーバーに送り、蓄える。圃場ごとにどんな肥料をどれだけ施したかがわかり、出来た米の食味と収量と関係づけられるため、次の作付け時の施肥設計に活かすことができるのだ。

 クボタでは、このKSASを段階的にバージョンアップしていく。

 次のステップでは、圃場ごとの管理ではなく、圃場を数メートル単位で細分化し、細かく区切った場所ごとの管理にする。このように精緻化した上で、管理する情報の種類を増やす。5メートル単位で細かくメッシュを区切り、細分化された場所ごとに収量や品質のバラツキを見られるようにする。同時に、天候情報との連携、ドローンによるリモートセンシングで作物の生育状況や病害虫発生状況の把握、水位センサーと水管理システムとの連携といったことにも積極的に取り組んでいく。

 さらにその次のステップで、細分化した場所ごとに、食味・収量、作業経路、施肥状況、生育状況、土壌肥沃土、土質といった育成に関わるすべてのデータを持てるようにして、これをビッグデータ解析技術で解析・処理をできるように進化させる。さらには、各種ロボット農機とクラウドが直接自動通信できるように連動することで、未来のスマート農業のコントロールタワーに進化させるのだ。

 バージョンアップと同時に、稲作以外の作物にもKSASの仕組みを拡充する。クボタでKSASを担当する小林義史氏(同社 農機国内営業部 KSAS推進グループ長)は次のように語る。「水稲、麦、大豆、露地野菜というところを考えています。これまでは農機の連携ということで水稲を中心にやってきましたが、小麦とか大豆とか収量や水分を測定できるものを追加で出すことで作物の範囲を広げていきたい。ユーザーの20%ほどの方が野菜作で使っているので野菜に特化した機能も追加していこうとしています」。

クボタでKSASを担当する小林義史氏(同社 農機国内営業部 KSAS推進グループ長)。(写真:高山和良)

完全無人の“ミライ”は近い!?

 クボタ・ミライ・アグリ・ビジョンが描いた、完全に無人化した究極のスマート農業が実現するにはまだかなりの時間がかかるだろう。だが、ロボットトラクターが本格実用期に入ったことの意味は実に大きい。これをきっかけにハード面での整備が今後加速することは間違いない。実際に使われることで課題解決のスピードはどんどん上がる。数が出ればコストも下がる。自動車の無人運転技術の取り込みも期待できる。法・規制面での整備、補助金取得などの行政面での支援などが進めば、一気に普及が進むだろう。

 これらと連携するクラウド型サービスのほうも基本骨格が既に出来上がっている。様々な作物の栽培ノウハウや植物生理学上の知見のデータ化やAIとの連携、業界を通じての農機データや通信インターフェースの標準化など、解決すべき課題はハッキリと見えている。これらを一つひとつ着実に潰していけば、完全無人でのスマート農業がどんどん現実のものになってくるはずだ。

「クボタ・ミライ・アグリ・ビジョン」では、人はコンピューターと対話するだけで農業生産ができるようになる。写真は気象予測を基に、人とAIが対話しながら圃場ごとの作業スケジュールを決めているところ。AI任せではなく、人の意思が介在する。(写真:クボタ提供)