先端ハウスとITで挑む高品質トマトの多収栽培

最終ターゲットは品質・収量の自在なコントロール

まずは多収技術の開発からスタート
10アール当たり40トンの収量を目指す

現時点の感触はいかがですか?

岡田:結果はまだこれからですが、基本的には多収を目指して、まずは数量を獲りたいと思いながらやっています。

 今のわれわれの主力である「あかでみトマト」は、赤くて凝縮したという意味で名付けた糖度の高いもので、トマトに独自のストレスを掛けることで甘みや酸味などが凝縮するように栽培しています。品種は大玉で定評のある桃太郎系統のものを使っています。また、栽培方式としては5段分(実になる花房が5段分の意)作って終わらせる(苗を撤去する)ことを繰り返す方式ですので、収量に限界があります。詳しくは言えませんが年間で10アール当たり20トンは行っていません。もう少し生産性を上げられるとは思っていますが。

 今回のハウスではまずは年間で10アール当たり40トン、30段くらいまで行くんだろうと思っています。品種はやはり桃太郎系です。また、あかでみトマトほどはストレスを掛けない栽培方式を採っています。こちらは、まず収量を確保できるようにして、それができたらその後は糖度などの品質を今の「あかでみトマト」に近づけていくことを考えています。昨年の8月から始めて、いろいろとトライをしたり、条件を振ったりしながらやっていますが、収量40トンの目標への手応えは感じています。

新しく導入されたハウスのメリットは?

岡田:強制換気ということで、風をアクティブにコントロールできるところが大きいと思います。風を動かすのは(ハウス内の)温度と湿度をトマト栽培に適したものにすることが目的です。トマトにとっては風がまったく動かないのも良くありませんが、ありすぎるのも良くない。例えば旧来の50アールのハウスだとトマト栽培の棚は長い方向で140メートルくらいになり、中程には風が届かずうんともすんとも動きません。新しいハウスでは計算による気流制御で一番の最適解を導いています。実際に温度の低下を感じています。

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導入したTキューブの仕組み(左)とハウス内の空調設備(右)。Tキューブでは外部の日照、雨、温湿度の各センサーとハウス内の温度、湿度、二酸化炭素、水分センサーなどで環境を高精度にチェックしながら気流、温度・湿度、二酸化炭素の濃度などをコントロールしながら作物の光合成に最適な環境を実現しているという(提供:ベルファーム)

IT、AI、ロボットを駆使して
マーケットインと高品質多収生産を両立させるスマート農業へ

5月からスタートされたスマート農業実証プロジェクトはどのようなものでしょうか?

岡田:こちらは農業のスマート化でいかに生産性を上げていくかという国の事業にエントリーしたプロジェクトになりす。

ハウス内で育てるトマトに囲まれたベルファーム代表取締役社長 岡田典久氏(提供:ベルファーム)
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 われわれも10年前から始めていろいろシステムを入れてきましたが、各方面でアナログが残っています。データも分散していますし、データを取る行為もアナログでした。このままでは生産を効率化していこうとしてもデータを分析して答えを出そうとした時に非常に効率が悪く、なかなか正しい答えにたどり着けません。実体が把握しづらいというのがこれまでの農業の現場です。それを、この事業を使って未来の農業のモデルになるようなものが作れたらと思っています。

 例えば、これまでは、規格外品が、いつ、どういう理由で出てしまったのかを定性的に把握するよりほかありませんでした。規格外品が出たらどうするか、どのくらい出るかも正確に把握できず、結果としてトマトなど農産物の値段は下がり、生産者の経営を悪化させます。いかにこうした規格外品を出さないか、原因を潰して栽培にフィードバックしていくかという流れにしていかなくてはいけません。

 今回のプロジェクトにはいろいろなものを詰め込んでいますが、最終目標は、トマトの低段栽培においてマーケットインの農業を実現するシステムを作ることです。つまり、顧客ニーズに応じた高品質トマトの計画的な生産を実現させることです。このために内閣府の戦力的イノベーション創造プログラム(SIP)である「収量や成分を自在にコントロールできる太陽光型植物工場」で開発されたツール類や制御装置など新しい栽培技術や最新の自動選別システム、農業ロボットの導入などをしていきます。

ベルファームが2020年5月にスタートさせたスマート農業実証プロジェクトの全体像。ベルファームでは、ITシステムやAI技術、ロボットなどを駆使して生産から販売、経営に至るまでの情報を統合するような仕組みを考えている(提供:ベルファーム)
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