先端ハウスとITで挑む高品質トマトの多収栽培

最終ターゲットは品質・収量の自在なコントロール

Withコロナの時代、単なる自動化・省力化ではなく
生産性を上げながら働きやすい職場を作ることが重要

岡田:このシステムができると、トマトの品質を顧客とあらかじめ握って(条件を決めて)、このくらいの品質のものをこれくらいの量くださいということまで取り決めた上で作ることができると考えています。品質と量を実現するための栽培条件と育苗条件も同時に決まります。もちろん環境要素で後から変わるところもありますが、事前にできる限りのマーケットインの考え方が可能になるところがポイントです。

労務管理システムについてもプロジェクトの中に入っていますが、どういうものですか?

岡田:労務管理は非常に大きな課題だと思っています。実際に、働き手の方が高齢化してなかなか確保が難しくなっているという実感があります。われわれのところでも平均年齢が毎年だんだん上がっています。そういう中で、いかに生産性を上げながら働きやすい職場にするかが大切です。

 これまでは今回の収穫はだいたいこのくらいになるから何人でやってくださいということで、とりあえず10人いってわーっと作業をするような感じです。そうなると実は生産性がいいのか悪いのかわかりません。生産性を高めるために何が悪いのかを突き止めようとしても結局わからないという話がよくあります。

岡田社長は「いかに生産性を上げながら働きやすい職場にすることが大切」と語る。写真はハウス内でトマトの収穫をする様子(提供:ベルファーム)

 当社のように100人の方が働いている中で生産性を上げていくためにはきちんと労務を管理しなくてはいけません。この人はこの作業が得意だとか、苦手とかを分けて適材適所で配置する。またこの作業が苦手だという人にはこのくらい頑張りましょうという個別指導につなげていく。そういったキメの細かい労務管理です。

Afterコロナ、withコロナの時代、IoTやロボットを使ったスマート化、自動化がより重要になってくる気がします。これについてはいかがですか?また、バイオマスプラントを使ったサステナブルな取り組みもされていると聞きました。

岡田:いろいろな角度からの見方があると思いますが、ハウス内の作業者同士の接触をできるだけ少なくするという意味で言えば自動化、つまりロボット化は非常に重要です。これは労働量を確保する面でもそういう方向ではあるだろうと思います。

 ただ、今やっているような作業を、すぐにロボットができるかというと、その姿は想像しにくい面があります。トマトの栽培では、不要になった葉を取り除いたりする作業や、トマトの実を収穫したりする作業がありますが、こういった作業は今のロボットにはまだハードルが高いので、まずはできるところからやっていくことになります。

 たとえば、トマトの葉に紫外線を照射することによって殺菌効果があります。従来は装置を固定的に付けてやっていたんですけれども、それをロボットに付けて自動走行をしながらやっていこうと思っています。またトマトの実が出来るためには受粉が必要で普通は蜂を飛ばしていますが、暑い夏場は蜂が飛ばなくなりますし、夏場は花粉の稔性が落ちるのでホルモン剤を人が噴霧することで着果させる作業があります。夏場はこの作業が大変です。これをロボットにやってもらうことを考えています。農研機構が開発した技術ですが、カメラでモニタリングして花を見つけてホルモン剤を噴霧する作業をロボットがやるというものです。

 稔性(ねんせい):受粉して実を結ぶ性質のこと。結実性があること

 いずれにしても、単にハウス内の人と人の接触を少なくするようにするためだけでなく、ロボットと人がうまく共存していくようにしていくことが企業としては必要なんじゃないかと考えています。

 また、これからの農業はエネルギー循環型と言いますか、サステナブルな取り組みが必要だと考えています。うちの農場の隣には関連会社の鈴与商事が運営しているバイオマスプラントを併設しています。ここではベルファームで作っているトマトから出た残渣、つまり不要になって取り除いた葉や茎、その類いを再利用しています。グループの中では食品を作っているところもあって食品残渣もそこに集めていて、発酵させて出たメタンガスをエネルギー源として発電機を回し電力にしています。さらに、この工程で出てくる二酸化炭素はベルファームに導入して光合成に使っている。熱も出ますので温水にして暖房に使うこともやっています。

ベルファームの農場の隣に併設された鈴与商事のバイオマスプラント(提供:ベルファーム)

<取材を終えて>

 環境や気流を精密にコントロールする最先端ハウス、ITやAI、ロボットなどを駆使したスマート農業への取り組み、環境に配慮したバイオマスエネルギープラントとの連動……。どれも未来の農業を支える重要な先端テクノロジーばかりだ。どれか一つでも取り入れていれば農業の世界のフロントランナーと言っていいだろう。ところが、驚いたことに今回取材したベルファームは果敢にもすべてに取り組む。大規模法人であれば話はわかるが、中規模の経営体としては他に例を見ない。ベルファームが目指す農業は、ITやAIを駆使しながら需要に応じて品質と収量を自在にコントロールすることで高い収益性を保つ農業ビジネス。これはスマート農業の未来像そのものだ。ベルファームの試みがどこまでの高みに達するか。取り組みはスタートしたばかりで、まだわからないが、農業の未来と可能性を示す存在であることは間違いない。同社の取り組みからはしばらく目が離せそうにない。