2021.03.15
文=中城邦子、構成=市川史樹
食生活の多様化が進み、米の1人当たりの年間消費量は1962年度をピークに一貫して減少傾向にある。一方で、小麦の1人当たりの年間消費量は、1960年度を100とすると2019年度で1.6倍以上。1人1年当たりの消費量は下記グラフの通り。近年の国内消費量はおおむね600万トン弱で推移している。しかし、そのうち国産小麦の占める比率は高くない。2019年度の国産小麦収穫量は103万7,000t。小麦全体の国内消費量のおよそ6分の1にすぎない。
現在、国産小麦の収穫量の約7割を占めている産地が北海道だ。
北海道産が多い理由について農林水産省 農林水産政策研究所の吉田行郷次長は、「早くから農業のプロが本気で取り組んでいたこと、いい品種があって気候も小麦作りに適していた点が大きい」と言う。
十勝や網走などの畑作地帯では、連作障害を防ぐために小麦は主要な作物、そして稲作地帯でも、かつて北海道産の米の評価が高くはなかった時代から、小麦は米の生産を補う主力アイテムとして作られてきたのだ
さらに気候も合っていた。もともと小麦は北の作物。麦は雨が当たると粒から芽がでて、貯蔵していたでんぷん等が消化・分解されてしまい品質が落ちる。それを避けるためには梅雨前に収穫せざるを得ず熟成させづらいが、梅雨がない北海道ではその心配がない。
小麦は、含まれるたんぱく質(グルテン)の量が多く、粘りと弾力性が強いものから順に、パンや中華麺に使われる強力系小麦、うどんなどに使われる中力系小麦、ケーキや菓子、そばなどに使われる薄力系小麦に分けられる。
品質も向上している。2016年の中力系小麦についての製麺試験結果では、うどん用に最も向いているといわれているオーストラリア産「ASW」を日本の上位3品種が上回るなど、国産小麦の品質は大幅に向上している。
日本での小麦栽培は中力系の品種が多く、梅雨がある本州以南では、たんぱく質含有量の多い強力系小麦は、じっくり熟成させることが難しいため作りづらいとされてきたが、その強力系小麦でもこの数年、品種改良したパンやラーメンにも向く小麦が次々に登場しているのだ。
「1972年の世界食糧危機でアメリカは大豆の輸出を禁止。ほとんどの大豆をアメリカからの輸入に依存していた日本ではスーパーの店頭から豆腐や納豆などの大豆製品が消えてしまうことがありました。その後、大豆や小麦は国内で作らなければいけないとの意識が高まり、麦類の本作化に取り組まれるようになりました。米の消費量が減り続ける中、麦の品種改良に本腰が入れられたのです」(吉田さん)
品種改良には10年、20年の歳月がかかる。栽培技術の向上も進み、品種転換とその成果が表れ始めたのが、2000年を過ぎたころからだったという。特に伸長著しいのがパンに適した強力系小麦だ。