




私たちは、ナンプラ市から80キロほど離れた農村を訪れました。この村では、モザンビーク政府の援助とJICAの技術的な支援を受けて、農業開発を行っています。村のひとに農業の様子を聞いてみましょう。
モザンビークにしてはずいぶん広大な農地ですね。誰の所有物なのですか?
旧宗主国のポルトガルから移民してきた方がオーナーです。ざっと1000haほどありますね。このうち800haを私たち地域の農家が借りています。いま、政府の融資制度を活用して、新しい作物を導入したり、栽培技術の向上に務めています。
何を栽培していますか?
トウモロコシ、ゴマ、キャッサバ、落花生、インゲン、フュジョンという豆などです。これまでは自給自足に近かったのですが、農業規模を拡大したおかげで、現金収入を得られるようになりました。いまは、つくった作物の半分が自分たち用、残り半分を市場に売っています。

(畑を指差して)こちらでは大豆とゴマが交互に植えられていますね。
これは日本の技術指導によるものです。大豆は、空気中の窒素を自分の根に固定するので、肥料がまかれたのと同じ状態になります。ゴマを単体で植えるよりも、地力は衰えず、また同時にふたつの作物を栽培できるわけですね。はじめたばかりなので、これからが勝負です。
今の問題はなんですか?
これだけ広い土地にトラクターが1台しかないので、耕すのは人力中心でとても効率が悪いことですね。それから井戸がたったひとつしかないので、灌漑がちゃんとできない。このため常に水不足です。私の場合、子供が7人もいるので、生活は常に大変です……。
続いてモザンビークナンプラ州の農業局長ペドロ・ドゥクラさんに話を聞いてみましょう。
モザンビークの農業における基本的な課題を教えてください。
なんといっても、水の確保です。灌漑するためのインフラが整っていません。農業を発展させるためには、水を安定供給するための灌漑施設が不可欠なのですが、こちらの農地も含めて、水の供給は雨水に頼りきりです。こちらの場合、近くに川が流れているので、雨期はこの川からポンプで水をひっぱってきています。ただ、これが乾期になると川の水も減ってしまうので、農地に十分な水を供給できません。井戸水や大型河川から水を安定的に供給できる大規模な灌漑施設が、モザンビークの農業発展には欠かせないのです。
農業技術に問題はありますか?
モザンビークの農業の大半はいまだに小規模農家が、人の手で土地を耕して自分が食べるものをつくる自給自足型です。もっと農業規模を大きくして、技術の向上を図って、単位面積当たりの収穫量を増やさなければ、農家は現金収入を得ることができません。
どうすればいいんでしょう?
まず、モザンビークの気候にあった良質な品種が不可欠ですね。それから肥料も農薬もほしい。さらに農業技術の移転も課題です。いずれもお金がかかります。そのためこれまでは実現したくても、無理でした。
そこに日本とブラジルの協力によるプロサバンナが登場しました。
非常に期待しています。持続可能で、より大規模な農業がようやくモザンビークにも根付いてくれるのでは、と思っています。
これまでもモザンビークには先進国からの農業支援があったと聞いています。
残念ながら、かつての農業支援は、先進国側の技術を一方的に押し付けるだけで、モザンビークの気候や土地制度や農民たちの文化を顧みることがほとんどありませんでした。そのため、せっかく投資してもらってもうまく機能しなかったのです。その点、プロサバンナは、モザンビークの気候や土地制度や農民たちの文化を前提として進められている上、地域の物流インフラ開発にあたるナカラ回廊プロジェクトとも連動しているため、モザンビークの農業の未来に大きな可能性を見せてくれている、と感じています。
モザンビークの農業の未来とは?
まず、国内の食料自給体制を確立することですね。トウモロコシがたくさんできれば、主食の確保が可能となります。さらにその先にあるのは、ブラジルのような農業輸出国への発展です。大豆やゴマなど国際商品になり得る作物を増産して、将来は日本へもぜひ輸出したいものです。
10年後、モザンビーク産の大豆でつくった納豆にモザンビーク産のゴマをかけて、朝ご飯を日本の食卓でいただく、というのが当たり前になるかもしれませんね。
ぜひそうなりたいですね(笑)。
農業局長の話によれば、日本と欧米の国際協力はずいぶん色合いが異なり、少なくとも農業においては、自分流を貫こうとする欧米型はうまく定着しなかったそうです。ブラジルで成果を上げた日本の国際協力が、このプロサバンナ計画でも、花開くことを期待しましょう。