MS&ADインターリスク総研株式会社
取締役
デジタルイノベーション本部 副本部長
土井 剛氏
世の中を驚かせた生成AIは、サイバー攻撃者にとっても武器になる。ビジネスを守るためのセキュリティー対策は、さらに難しい局面を迎えているといえるだろう。
また昨今は、ネットワーク機器などの脆弱性を狙う攻撃が大きな脅威になっている。ただ、その被害状況をつぶさに見ていくと、一般的なイメージとは少々異なる実態が浮かび上がってくるという。
「サイバー攻撃の標的にされるのは、著名企業や大企業だけと考える方が多いと思います。しかし、警察庁が発表した資料※によれば、国内のランサムウエア被害の半数以上を中小企業が占めていることが分かりました」とMS&ADインターリスク総研の土井 剛氏は紹介する。
また、不審なメールを開きさえしなければ、ランサムウエアへの感染は避けられると思いがちだ。ところが、不審なメールや添付ファイルによるランサムウエア感染は、実は全体の5%程度。ほとんどが脆弱性を抱えたVPN機器やリモートデスクトップを狙った攻撃によるものであることも見えてきた
※。攻撃者は必ずしも特定の企業をターゲットとしているのではなく、脆弱性を持つ企業を探してランサムウエア攻撃を仕掛けている。その結果、対策が不十分な中小企業の被害が増加しているのだ。
「加えて厄介なのが、金銭目的のハッカーが組織化、分業化している点です。得意分野ごとに集団をつくり、高度な役割分担に基づいて攻撃を仕掛けるケースが増えています」(土井氏)。例えば、専門知識を有するハッカーは攻撃用のソフトウエアやサービスを開発して有償で提供する。IAB(Initial Access Broker)と呼ばれる集団は、あらゆる手段を使って攻撃対象になりそうな企業を見つけ出し、リスト化して販売するといった具合である。そして、実際の攻撃者集団は、これらのツールやリストを購入して攻撃を仕掛ける。驚くことに、身代金の支払い方法を手ほどきするサポートデスク集団まで存在するという(図1)。
「被害を防ぐには、まずIABのリストに載らないようにしなくてはなりません。そこで重要になってくるのが、インターネット上に公開されている『アタックサーフェス』の管理です」と土井氏。クラウドサービスや公開サーバー、ネットワーク機器、部門が独自に導入したシステムなど、外部から見えるIT資産を適切に確認して安全に保つことが、セキュリティー対策の一丁目一番地になるのである。
- ※
- 警察庁「令和3年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」