ITインフラSummit 2026 review

〜AIによる業務自動化を実現するITインフラの最適解〜

ITインフラSummit 2026 review〜AIによる業務自動化を実現するITインフラの最適解〜
リスク対策、BCP Forum
ラック

「IT-BCP」の策定と継続的な見直しで
事業継続リスクへの対応を支援する

ITシステムを抜きに現在のビジネスは成立しない。システムが長期間にわたり停止するようなことがあれば、企業の存続にも影響を及ぼすだろう。そこで注目されているのが「IT-BCP」だ。ITシステムの保全をBCP(事業継続計画)の構成要素の1つと捉え、状態を可視化して必要性に応じた対策を実施する。IT-BCPによって、自然災害やシステム障害、サイバー攻撃へのレジリエンスを高める方法を紹介する。

システムの停止によるビジネス影響を
最小化するIT-BCP

株式会社ラック コンサルティング統括部 コンサルティングサービス1部 山田 一樹氏

株式会社ラック
コンサルティング統括部
コンサルティングサービス1部
山田 一樹

現代の企業経営において欠かせないのがリスクへの目配りだ。自然災害やシステム障害、サイバー攻撃といった様々な事業継続リスクを可視化し、万一の事態に対応できるようにするため、BCPを定めている企業は多いだろう。このBCPの中でも、主にITに関わる領域を取り扱うのがIT-BCPである。

「企業が定義するBCPのうち、ITシステムが中断/停止した際に、速やかに復旧・継続を行うことでビジネスへの影響を最小化するための計画をIT-BCPと呼びます」と話すのはラックの山田 一樹氏だ。組織の方針に沿って業務規程などを整備するほか、これに沿って作業の具体的な手順や業務マニュアルなども策定する(図1)。万一の際に「何を」「どの順番で」「どのように対処するべきか」を事前に定義しておくことで、被害を少なく抑えることが可能になる。


図1 IT-BCP

図1 IT-BCP

全社のBCPの方針のもと、ITシステムの復旧・継続に関わる規定や標準を策定したものがIT-BCPだ。具体的な手順やマニュアルなどもこれにのっとって整備していく

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「リスクベース+オールハザード」の
アプローチでリスクに対応

とはいえ、一口にIT-BCPといっても、ITシステムが使えなくなる要因は数多く存在する。オンプレミスのシステムの停止、利用中のIaaS/SaaSの不具合、地震・台風・感染症などによる行動制限、そしてランサムウエアをはじめとするサイバー攻撃など、無数のリスクすべてに対処しようとするのは、現実的ではないだろう。

そこでラックは、リスクベースとオールハザード、2つのアプローチを組み合わせることを推奨している。

「リスクベースは特定のリスクを選定し、それに備えるアプローチです。一方のオールハザードは幅広いリスクに柔軟に対応するアプローチ。基本はオールハザード型で取り組みつつ、特に注意が必要なリスクにはリスクベース型で対応することで、実効性の高いIT-BCPを実現できます」と山田氏は語る。

実際の対応策は、想定される事象を整理・仕分けした上で検討することが肝心だ。例えばセキュリティーインシデントなら「現状可視化」「万一の際の復元力」、システム障害なら「冗長化」、自然災害などのITに起因しない危機の場合は「別サイトへのバックアップ」「リモート対応」などの要素が重要になる。これらを踏まえた上で、EDRの導入やバックアップ強化、システム/ネットワーク環境の分離、代替システムの準備といった個別のアクションに落とし込んでいくのである。

「IT-BCPそのものはあくまで全体を束ねる枠組みであり、個別の対応策や手順までを定めるものではありません。しかし、ここでシステムの重要性に応じた優先順位付けや体制を定義しておくことで、スムーズな対応を実現できるようになるはずです」と山田氏は言う。

規程を継続的に見直すことで
IT-BCPの形骸化を防ぐ

このように事業継続に重要な役割を果たすIT-BCPだが、運用においては注意点もある。

「形骸化しがち」なことはその1つだ。クラウド利用の急速な広がり、生成AIの普及など、企業のIT環境は目まぐるしく変化している。規程が古いままだと、新たな技術やサービスに対応する項目が欠けた状態になってしまい、実効性が低下してしまうのだ。「また、自社を取り巻く状況が変われば、実際に復旧を行う際の順番や優先度も変化します。これらが古かったり不明確だったりすると、作業がスムーズに進まず、結局、ビジネスがストップしてしまうでしょう」と山田氏は指摘する。

このような事態を回避するためには、IT-BCPを継続的に見直すことが肝心だ。BIA(事業影響度分析)によって、どのシステムが止まったらどの業務に影響が生じるかを洗い出す。その上で、各システムに応じたBCP要求レベルを決めて、可用性や保守要件を更新するのだ。

「例えば、BCP要求レベルが高いシステムには冗長化を施し、それほどでもないシステムではバックアップ頻度を下げるといった具合です。IaaSやSaaSなどの外部サービスではSLAに基づくことで、復旧優先度に応じたRTO(目標復旧時間)を確保します」と山田氏は続ける。

また、実際にBCPを発動する際のフローも事前にしっかり定義しておきたい。これについては、自然災害などとセキュリティーインシデントで分けるのが一般的だ。前者では、人身や業務への影響を調査した結果、大きな被害が想定されるのであればBCPを発動する。後者では迅速な初動対応がカギになるため、SOCやCSIRTによるインシデントレスポンスフローを組み込むといった形である。「初動対応で終息できず、影響が長期化しそうな場合は、その時点でBCPを発動するのです」(山田氏)。

同社が支援したある企業では、これらの取り組みを実践することで大きな成果につなげているという。

従来は、BCPの規程が長年更新されておらず、クラウドなどの新技術に未対応の状況だった。そこでラックと共に見直しを進め、時流に即したIT-BCPを策定した。

「システム担当の方はもちろん、業務現場の方にもヒアリングを行い、システムと業務の関係性を明らかにしました。その後、業務の重要度からシステムのRTO、更新のタイミングや平時の運用フローなどを明確化しました。これにより規程の実効性を大きく高めたほか、組織や担当者が変わっても、変わらず同じ対応を実現できるようになっています」と山田氏は紹介する。

このようにIT-BCPの策定・改善を行うことで、有事の際のレジリエンスを大きく高められる。加えて、現状の自社システムの“弱点”を可視化できるようになることも、副次的だが重要なメリットといえるだろう。

「業務とシステムの関連性が明らかになるので、自社の中核業務を可視化して、改善計画の土台をつくることもできます。また、将来的に導入するシステムの非機能要件を統一化する際の材料としても、IT-BCPを利用することができるでしょう」(山田氏)

自社を取り巻く状況を可視化し、BCPの一環としてIT-BCPを策定する。そして、環境やITシステムの変化に合わせて、常に最適な状態へとIT-BCPを改訂・進化させ続けていく。この一連の取り組みを繰り返すことで初めて、事業を支えるIT基盤を具現化できるようになるのである(図2)。


図2 IT-BCPの運用フロー

図2 IT-BCPの運用フロー

IT-BCPの実効性を高めるためには、対策実行後のレビューを通じて見直しと改善を繰り返すことが肝心だ。これによりIT-BCPの形骸化を防ぎ、最新のリスクに適切に対処できるようになる

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ラックはここまで紹介したようなIT-BCPの策定/見直しを支援するサービスを提供している。検討を進めたい企業は、一度相談してみるとよいだろう。

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