ITインフラSummit 2026 review

〜AIによる業務自動化を実現するITインフラの最適解〜

ITインフラSummit 2026 review〜AIによる業務自動化を実現するITインフラの最適解〜
ネットワーク最適化 Forum
インターネットイニシアティブ

機能・コスト・運用のバランスで選ぶ
SASE成功のカギを握るSD-WANの実現法

クラウドファーストの流れの中で、SASEの導入を検討する企業が増えている。SASEを実現するにあたりSWGやCASBといったセキュリティー機能に関心が集まる一方、クラウド時代に業務を快適に行うためには「ネットワークをどのように設計・運用するか」という点にも目を向ける必要がある。本講演では機能・コスト・運用の観点からSASEに欠かせないネットワークの選定ポイントを解説し、同時にそれを実現するサービスが紹介された。

セキュリティー機能だけでは
SASEは実現できない

株式会社インターネットイニシアティブ サービスプロダクト推進本部 営業推進部 ネットワークソリューション課 川口 萌恵氏

株式会社インターネットイニシアティブ
サービスプロダクト推進本部
営業推進部
ネットワークソリューション課
川口 萌恵

コロナ禍や働き方改革などをきっかけに、企業を取り巻く環境は大きく変化した。まずリモートワークが浸透し、在宅や時短勤務など柔軟な働き方が可能になった。クラウドサービスの利用も拡大し、Web会議やスケジュール共有、ファイル保管などのサービスは業務に欠かせないものになっている。

これに伴い、インターネットトラフィックが格段に増加し、送信元・アクセス先ともに企業の“境界外”とつながることが多くなった。「リスクに晒される可能性が高まったことから、すべての通信を信用せず、安全性を都度検証することで脅威から守る『ゼロトラスト』の考え方が浸透しています」とインターネットイニシアティブ(以下、IIJ)の川口 萌恵氏は話す。

このゼロトラストを実現する重要なキーワードが「SASE(Secure Access Service Edge)」だ。IT調査会社の米ガートナー社が2019年に提唱した概念で、個々のセキュリティー機能やネットワーク機能を、クラウド上からトータルで提供できる仕組みのことだ。従来の境界型防御の限界を克服し、クラウド利用を前提にしたIT環境をセキュアかつ柔軟に運用できるようになる。

SASEを実現するための要素は多岐にわたる。代表的な機能としては、クラウド型のファイアウオール機能「FWaaS」、ユーザーやデバイスの信頼性を都度判断してアクセスを制御する「ZTNA」、URLフィルタリングやアンチウイルスにより安全なWebアクセスを実現する「SWG」、クラウドサービスの利用状況を可視化・制御する「CASB」、柔軟なネットワーク設計やトラフィックコントロールを実現する「SD-WAN」などがある。

単一の製品だけ導入してもSASEは実現できない。かといってあらゆる機能すべてを実装するのはハードルが高い。「自社にとって必要な機能はどれなのかを考え、それが自社のコスト感に合うかどうか、そして導入後もしっかり運用できるかどうかをトータルで考える必要があります」と川口氏は指摘する。

機能・コスト・運用のバランスを考える上で、IIJが重要だと考えるのが拠点間通信を担うSD-WANだ。SD-WANとはソフトウエアを用いてWANを仮想的に構築・管理する技術のこと。ソフトウエアによって一元的に制御・管理できるため、柔軟なネットワーク構成やトラフィック制御が可能になる。「WANはIT環境の基盤であり、実は“足し引き”できる要素を多く持っています。機能・コスト・運用のバランスを考えてSD-WANを選定し、『SASE向けネットワーク』を実現することが重要です」と川口氏は説く。


機能・コスト・運用を左右する
SD-WAN選びのポイント

SD-WANの導入を検討する際は、3つのポイントが重要になる。

1つ目は「ローカルブレイクアウトの活用」だ。これは通信の負荷分散を実現する仕組み。信頼できると判断した通信はSASE基盤への接続POPを介さず、拠点から直接インターネットに向かわせる。これによって、通信の集中を回避する。増え続けるトラフィックへの対応策として近年注目されている手法だ。

もちろん全通信をSASE基盤に集約することで、セキュリティーポリシーを統一できるというメリットはある。一方で、SASE基盤に通信が集中することで、通信量で課金されるライセンスコストが大幅に増大する懸念もある。「ローカルブレイクアウトを活用することで効率よく通信を負荷分散させることができるため、コストの最適化を実現できます」と川口氏は説明する。

2つ目は「ブロードバンド回線の選定」だ。WAN接続のアクセス回線としてフレッツ回線が広く利用されているが、インターネットトラフィックの増大に伴い、従来のIPv4ネットワークの混雑が問題になっている。「IPv6 IPoEに対応したサービスを利用し、混雑を迂回できるかどうかは重要な選定ポイントです」(川口氏)。

また、障害時を想定し、マルチキャリアによる冗長構成も考えておく必要がある。異なるキャリアの回線を組み合わせることで、1つのキャリアに障害が発生しても、ネットワークを使い続けることができるからだ。

その際、回線は拠点ごとに適切なものを選択すべきだ。例えば、ユーザーやトラフィックの多い拠点はハイスペックな回線、小さな拠点はコストを重視した回線を選択する。こうして適材適所の回線を選択すればアクセス回線コストを最適化できる。

3つ目が「適切なルーターの運用管理」だ。ランサムウエアの感染経路として最も多いとされているのがVPN機器への侵入だ。エンドポイントのセキュリティーレベルを高めても、ルーターが適切に管理されていないと、攻撃者に狙われる危険性がある。

「脆弱性に備えてファームウエアを最新に維持できる仕組みがあるか。ローカルブレイクアウトを含めた通信制御をセキュアに行えるか。長期的にサポートしてくれるのか。これらはルーターの運用管理において重視すべき事項です。ゼロトラスト環境の整備が進んで、オフィスなど拠点設備の優先度が下がったとしても、ネットワーク機器の運用が疎かになるのは非常に危険です。ここはコストダウンをせずに、セキュアに運用していく必要があります」と川口氏は訴える。

SD-WANの導入から運用まで
トータルサポート

こうした3つのポイントを踏まえ、IIJでは最適なSASE向けネットワークを提供しているという。その基盤となるのがSD-WANの「IIJ Omnibusサービス」だ(図1)。「拠点間をつなぐWANを提供するだけでなく、トラフィックが多いとされるSaaS通信のローカルブレイクアウト機能も実装。通信の負荷分散によりコストパフォーマンスを最適化することができます」と川口氏は説明する。

図1 SASE向けネットワークの実現例

図1 SASE向けネットワークの実現例

IIJ Omnibusサービスによって、拠点間を結ぶSD-WANを容易に実現できる。さらにIIJのクラウド基盤にFWaaS、ZTNA、SWG、CASBなどのSASEに求められる機能を企業に合わせてカスタマイズすることができる

[画像のクリックで拡大表示]

各拠点からのアクセス回線にはIPv6対応のフレッツ回線も選択できる。マルチキャリアによる冗長構成にも対応し、安価なベストエフォート回線からギャランティ回線まで多彩なラインアップがある。

ネットワークの監視や管理、制御は専用の管理ポータルから行える。ルーターのバージョンや稼働状況のチェックなども行えるため、運用負荷を下げ、セキュアな管理が可能だ。「IIJ Omnibusサービスを活用することで、機能・コスト・運用のバランスがとれた最適なSASE向けネットワークを実現できます」と川口氏は強調する。

導入もシンプルだ。「提供するルーターはIIJが開発したもの。ゼロタッチプロビジョニングに対応しており、接続するだけで拠点展開が完了します。設定ミスや設定変更が発生しても、リモートから復旧・再設定が可能です。SD-WANルーターの保守も標準で付いているので、安心して運用できます」(川口氏)。

ただし、何から手を付けたらいいか分からないというケースもあるだろう。“あるべきSASEの姿”は企業・組織ごとに異なるからだ。どうすれば最適な形を実現できるのか。IIJはそうした悩みを一緒に考え、最適な解決策を提案する無償のワークショップも提供している。それが「IIJ Sketch & Draw Workshop」だ(図2)。これは3日間かけて行うプログラムで、企業・組織の課題を洗い出した上で、機能・コスト・運用の観点から最適な構成案を提案してくれるという。

図2 IIJ Sketch & Draw Workshopの概要

図2 IIJ Sketch & Draw Workshopの概要

顧客が抱えるIT課題をIIJのスペシャリストが3日間の対話を通して解決するワークショッププログラム。答えを押し付けることはせず、課題をともに考え、深掘りし、今後の可能性を探る

[画像のクリックで拡大表示]

「SASEの価値を決めるのは、セキュリティー機能の数ではありません。SASEの成功を左右するのはネットワークをコストと運用の最適バランスで設計する考え方です」と川口氏。今後も、IIJはSD-WANのIIJ Omnibusサービスを軸に、SASEの実現をトータルにサポートしていく考えだ。

関連リンク
お問い合わせ

株式会社インターネットイニシアティブ
URL:https://biz.iij.jp/public/application/add/33