ITインフラSummit 2026 review

〜AIによる業務自動化を実現するITインフラの最適解〜

ITインフラSummit 2026 review〜AIによる業務自動化を実現するITインフラの最適解〜
クラウド基盤最適化 Forum
さくらインターネット

日本国内における4つの「主権」を確保
AI開発を加速する国産クラウドの挑戦

生成AIの爆発的普及に伴い、クラウドインフラの在り方が根本から問われるようになっている。データが国家の競争力を左右する時代になり、「主権(ソブリン)」をどう確保するかが重視されるようになったのだ。これを日本国内で実現できるものとして注目されているのが「さくらのクラウド」だ。ここではこのサービスの特長やソブリン確保に対するアプローチ、日本のAI開発環境を劇的に進化させようとしている取り組みを紹介したい。

自分たちで開発・機能改善・維持する
という強い想い

さくらインターネット クラウド事業本部 エバンジェリスト 亀田 治伸氏

さくらインターネット
クラウド事業本部
エバンジェリスト
亀田 治伸

クラウドにおけるグローバルトレンドが、いま大きく変化しつつある。いわゆる「ソブリンクラウド」を重視する流れが加速しているのだ。ソブリンとは、日本語では「主権」や「独立性」を意味する言葉。ソブリンクラウドは自国の法律や規則に準拠し、データ主権やシステム主権、運用主権を確保したクラウドサービスを指す。

「ソブリンという言葉はITの世界だけではなく、様々なメディアや国会の議論などでも登場するようになっています」と語るのはさくらインターネットの亀田 治伸氏だ。特にデータの観点では世界は閉じつつあり、米国やEUのみならず、オーストラリアやインドネシア、マレーシア、シンガポールといったアジア圏でも、独自のデータ保護戦略を打ち出すケースが増えているという。

「現在の日本では、AWS、Azure、Google Cloud、Oracle Cloud の 4 つがガバメントクラウドとして認定され、民間企業でも広く利用されています。一方で、これらのサービスはグローバルに提供されているため、日本国内にデータセンターが設置されていても、米国の法規制の影響を受ける可能性があります」(亀田氏)。

このような中、日本国内における主権を確立しやすい国産クラウドとして注目を集めているのが、さくらインターネットが提供する「さくらのクラウド」だ。これは2011年から提供されており、現在デジタル庁からガバメントクラウドの条件付き認定を受けている。そして2026年4月からは、正式にガバメントクラウドとして認定される予定だ。

「さくらインターネットが開発するクラウドは、前述のデータ主権、システム主権、運用主権に加えて、技術主権も重視しています」と亀田氏。海外の商用製品を利用するとベンダーの意向によってライセンス体系や調達コストが変動するリスクがあるため、仮想化基盤をOSSを活用して自作し、他のパーツも可能な限り自分たちで開発・改善・運用維持できる技術を採用しているのだという(図1)。

図1 4つの主権を確保するさくらのクラウド

図1 4つの主権を確保するさくらのクラウド

さくらのクラウドでは、一般的にいわれているデータ主権・システム主権・運用主権の3つに加え、技術主権を含めた4つの主権を確保。これは国内事業者だからこそ実現できる価値だという。

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「また運用もすべて社員のみで運用しており、データセンターの場所やどのような監査を受けているのかも含め、透明な形で情報を提供。自分たちで開発し、必要に応じて機能改善を行い、維持できるようにしておくこと。これこそが『国産クラウド』という言葉に込められた、さくらインターネットの想いなのです」(亀田氏)。


拠点展開や料金体系、接続性なども
大きな特長

このように「国産のソブリンクラウド」として重要な位置付けにあるさくらのクラウドだが、特長はこれだけではない。特に注目したいのは、ハウジングやホスティング、専用サーバー、ベアメタルサーバーなど、多様なニーズに柔軟に対応できる、幅広いマネージドサービスを提供している点だ。

「例えばGPUなど、仮想化してしまうとパフォーマンスが下がるものやソフトウエアライセンスの関係で仮想化しづらいものを、そのままさくらのデータセンターに置くことができます。これをクラウド上のストレージサーバーと内部ネットワークで直接連携することで、機械学習などに必要な大量のデータに、より高速にアクセスできるようになります」と亀田氏は述べる。

またデータセンターを国内の東京と石狩で展開し、ハウジング・ホスティング・専用引き込み拠点として、大阪データセンターを用意していることも重要なポイントだ。多くのクラウドベンダーは東京・大阪などの東西2拠点体制でBCP対策を行っているが、さくらのクラウドはこれらに加えて北海道も利用できる。

今後数年間で発生するといわれている大規模地震では、東京と大阪が同時に影響を受けることが懸念されているため、第3の選択肢があることはより確実なBCP対策に貢献するはずだ。もちろんISMAP(※)に登録されているため、運用のコンプライアンスも含めて安心して利用できる。

価格に関しても優位性が高い。円建て決済によって為替の影響を最小化しており、主要サービスは20日以上の利用で月額料金が適用され、データ転送も無料で行えるからだ。つまり従量課金でありながら、月額固定料金であるかのように見積もれるのである。

そしてネットワークの接続性も高い。以下の図2に示すように、実に様々なオプションが提供されている。その中でもAIなどの活用で特に重要になると考えられるのが、ハウジングサービスや各種GPUサービスと、最大800Gbps相当の高速通信が行える内部ネットワークの存在だ。

図2 さくらのクラウドの多様な接続オプション

図2 さくらのクラウドの多様な接続オプション

さくら内のサービス間接続はもちろんのこと、外部クラウドサービス、SINETやLGWAN、フレッツ網といった閉域網との連携も可能だ

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※ISMAP:Information system Security Management and Assessment Program。政府が求めるセキュリティー基準を満たしたクラウドサービスを予め登録・評価する、日本政府のセキュリティー評価制度。

GPUクラウド「高火力」で
AI開発の加速にも貢献

こうした強固なクラウド基盤を持つ同社は、その強みをAI分野にも拡張している。それが純国産の生成AIプラットフォームである「さくらのAI」だ。これは複数展開しているAI関連サービスを取りまとめた総称だが、そのサービス群を支えるインフラとして提供されているのが、「高火力」シリーズと呼ばれる国産GPUクラウドだ。

この高火力シリーズには、全部で3種類の提供形態があり、いずれもデータセンタースタッフが24時間体制の監視・管理を行っている。

1つ目は、NVIDIA製高性能GPUを搭載した仮想マシンを手軽に利用できる「高火力 VRT(バート)」。生成AIの学習・推論に最適化された仮想マシンを、初期費用不要で990円から時間単位で利用可能だ。

2つ目は、ベアメタル型の「高火力 PHY(ファイ)」。AI開発に欠かせない圧倒的な性能を持つNVIDIAの最新GPU「H100」「H200」または「B200」のいずれかを8基搭載したベアメタルサーバーを、初期費用なし・月額費用のみで利用できる。

そして3つ目が、顧客企業が事前に用意した「Dockerイメージ」を、毎回同じ環境で実行できるコンテナ型GPUクラウドサービス「高火力 DOK(ドック)」である。NVIDIA H100をはじめとしたGPUを、初期費用なし・従量課金で利用できる。面倒なインフラ管理も不要なので、運用負荷も軽減可能だ。

「これらの高火力シリーズの上に様々なモデルを載せて利用できるようにしたのが『さくらのAI Engine』です。これはモデルの実行・通信・保存まで、すべて国内クラウドで完結しているため、外部へのデータ送信が行われません。ここでも主権を意識した、安心・高速な生成AI環境が実現できるのです」(亀田氏)。

すでにAIエージェントを開発するための自動化機能を備えたフレームワークも数多く登場しているが、これらほぼ全てさくらのAI Engineと組み合わせて動作可能。さらにさくらインターネットでは、AI開発を支援するコンサルティング的なサービスも提供しているという。

こうした国産クラウドをうまく活用すれば、これから加速していくAI開発も安心して行える。さくらのクラウドのようなソブリンクラウドへの注目度は、これからさらに高くなっていくはずだ。

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