

今日の物流領域で顕著なのが人手不足の問題だ。加えて、多く残るアナログな業務プロセスが非効率の温床となっている。特に企業間物流においては、情報連携手段が電話やFAXといったアナログツールに依存していることが多い。そのため、データの共有・連携が進まず「情報断絶」状態に陥っているケースも少なくないという。
この状況を打開すべく、業界各社の支援に取り組んでいるのがHacobuである。「データ・ドリブン・ロジスティクスが社会課題を解決する」という信念のもと、物流領域向けのSaaSを提供するほか、物流関連システムの開発や物流DXコンサルティングなどの事業を展開する。「2015年の設立以来、多様な製造業、小売り・卸企業などの業務効率化や変革を支援してきました」と同社の坂田 優氏は話す。
同社の中核ソリューションが、クラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」だ(図1)。配車の受発注、トラック予約受付、動態管理といった現場課題を解決する機能のほか、生産・販売・在庫情報の管理やビッグデータ解析の機能も持つ。多様なケイパビリティによって「物流DX」を支援する。
図1 クラウド物流管理ソリューション「MOVO(ムーボ)」
人手不足をはじめとする物流現場の課題を解決する。同時に、企業間物流をデータで可視化し、分析・最適化する物流DX支援ソリューションだ
出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所『スマートロジスティクス・ソリューション市場の実態と展望【2024年度版】』バース管理システム市場の売上高および拠点数におけるシェア
https://mic-r.co.jp/mr/03240/
また、このMOVOによって同社は「物流情報プラットフォーム」を構築することを目指している。企業間の柔軟なデータ連携を実現することで、非効率の解消と物流の最適化を実現する狙いだ。「蓄積したデータを分析することで、さらなる課題の解決や改善に役立てることもできます。物流DXを加速するプラットフォームとして、これまで約900社のお客様にご活用いただいています」(坂田氏)。
加えて、物流の変革を考える上で外せないのが昨今の法改正についての視点である。
例えば2025年4月にドライバー不足と労働時間規制による輸送力不足への対策として、改正物流関連2法が施行された。「これにより荷主も荷待ちの短縮や積載効率の向上に向けた努力義務を負うようになりました」と坂田氏は説明する。
下請取引の健全化に向け、貨物自動車運送事業法も改正された。これまで対象外だった荷主から物流事業者への委託部分も規制対象となり、適正な運搬料の支払いや多重下請け構造の是正を目指すことが必要になった。
このような環境変化に対応し、荷主がコンプライアンス対応を進める上でも実態データの収集・活用は不可欠だ。しかし、冒頭で触れた通り、現状はこの点がブラックボックス化している。「このままでは『受注した荷物が運べない』『運送会社が対応できなくなった』『物流費が高騰する』といった問題が発生し、それが荷主企業の成長の足かせになることも考えられます」と坂田氏は言う。
必要なのが「データ・ドリブン・ロジスティクス」である。物流の現場が長年行ってきた勘・経験・度胸による“KKDロジスティクス”を脱却し、現実のデータに基づく物流最適化を実現する。Hacobuの物流情報プラットフォームを利用すれば、データ収集、分析、施策立案、実行のサイクルを回せるようになる。これによりデータ・ドリブン・ロジスティクスを推進することが可能だという。
「さらに今後は、データがこのサイクルにおいて重要な役目を果たすようになると見ています。優れた物流ビッグデータを持つ企業ほど競争力が高まる。そのような世界がやってくるかもしれません」と坂田氏。同社はこの状態を「データ・ドリブン・ロジスティクス」と呼び、物流DXで目指すべき1つのゴールと位置付けている。
Hacobuの物流プラットフォームは、このデータ・ドリブン・ロジスティクスの基盤にもなる。具体的には、次の3段階で環境構築を進めるのがポイントだという。
第1段階は「現場レベルでのデジタル化の推進」。各工場などの現場単位でデジタル化を進める。例えば、花王の豊橋工場では、経営改革の一環として生産部門とロジスティクス部門を統合。製造と物流の一体化を目指して製品出荷を完全自動化した。「カメラやトラック誘導の仕組み、出荷指示システムと当社の『MOVO Berth』を連携することで、トラック到着時にスムーズに荷物を受け渡せる環境を構築しました」と坂田氏は紹介する。
第2段階は「全社レベルでのデータ活用」だ。これについては全国9拠点にMOVO Berthを導入したデンソーの事例がある。「物流は差別化領域ではなく協調領域」との考え方のもと、情報システムにおいても外部の仕組みを積極的に活用することで、大きな成果につなげているという。
そして第3段階が「他社とのデータ共有・活用」である。MOVOは企業同士のデータ連携、ビジネスマッチングの基盤になる可能性を秘めている。「共同輸配送やトラックシェアの必要性については国も議論を進めています。MOVOに蓄積されたデータを活用することで、物流事業者や業界の枠を超えて全体最適化された状態をつくりたいと考えています」と坂田氏は述べる。そのためのサービスとしては「MOVO X-Data(クロスデータ)」を用意しているという(図2)。
図2 共同輸配送・マッチングの基盤となる「MOVO X-Data」
「どのような荷物が」「どこからどこへ」「どのような手段で運ばれているのか」というデータに基づき、事業者や業界の枠を超え物流を最適化する仕組みを提供する
「物流問題の解決のカギを握るのが生成AIやAIエージェントであり、それらを活用する上で不可欠なのがデータです。また、今後、AIのインパクトが想像を上回る大きさになっていくでしょう。データなしにはAIは活用できません。現場の情報はデータ化し蓄積していくことで、将来の競争優位性の源泉になると考えます」(坂田氏)。Hacobuの提案は、物流DXの実現、社会課題の解決に向けた重要なヒントとなるだろう。