

既存の「生成AI」が、ユーザーから与えられた指示内容によってテキストや画像などのコンテンツを作成するのに対し、「AIエージェント」はユーザーの目的に合わせて複数のエージェントやサービスが連携し、自動的にタスクを実行する。
このAIエージェントを組織的に利用すれば、自動化による業務の効率化、人的ミスの削減、リソース最適化などの効果が期待できる。
「AIエージェントは組織内で様々な活用法が考えられます。中でも効果が出やすいのが、社内の問い合わせやリクエスト対応、お客様サポートなど工数の大きい業務領域です。ただし、適応するには社内に散在している非構造化データを、どう戦略的に管理・活用していくかが重要なポイントになります」とアトラシアンの渡辺 隆氏は説明する。
企業内には、基幹システムによってデータベースに蓄えられる「構造化データ」と、テキスト、画像、音声、動画、メールといった多様な形式の「非構造化データ」が存在している。その比率は一般的に「2:8」といわれ、膨大な量の非構造化データはいわば業務ノウハウの塊だ。これをAIエージェントに活用させれば、ビジネスの様々な場面で大きな価値を生み出す可能性がある。
ただし、多様な非構造化データを生成AIやAIエージェントと連携させるには課題もある。データの保存場所が散在していたり、データを正確に管理・共有できる仕組みがなければAIの回答精度の低下につながるからだ。
アトラシアンではこうした課題を解決するためのソリューションを提供している。
2002年にオーストラリアで創業したアトラシアンは、チームでの開発・運用、ナレッジ管理・プロジェクト管理等をサポートする製品群で継続的な成長を遂げているITベンダーだ。クラウドサービスを中心に世界で30万社を超える導入実績がある。
「アトラシアンのプラットフォームを使えば、普段行っている業務の中で非構造化データのナレッジをそのまま活用していただくことが可能です。情報を集約するためのデータベースやAIエージェントの仕組みをわざわざ構築しなくても、当社のクラウドプラットフォームには、ユーザーが自動的に実行させたいタスクなどに応じたAIエージェントが豊富に実装されています」と渡辺氏は話す(図1)。
図1 企業内の非構造化データを集約
アトラシアンのクラウドプラットフォームでは、普段行っている業務の中で非構造化データのナレッジをそのまま活用することができる。情報を集約するためのデータベースやAIエージェントの仕組みをわざわざ構築する必要がない
AIエージェントはアトラシアンが開発したものだけで数十種類以上ある。パートナー企業が作成したAIエージェントも増えつつあり、ノーコード・ローコードで開発できるユーザー独自のAIエージェントも組み込むことが可能だ。
対象はITエンジニアやIT運用者だけではなく、プロダクトの開発チーム、営業、人事、財務、法務、経営陣なども含まれる。これを業務フローに組み込むことで、作業時間を数時間から数日にわたって大幅に短縮することができ、企業内すべてのチームのナレッジ活用を加速させる。
アトラシアンのクラウド基盤に用意されているAIエージェントには、チーム内のミーティングあるいは顧客の声を活用して、より深いトリビアを抽出できるもの、ソフトウエア開発チーム向けに一緒にコードレビューを行ってくれるもの、IT運用チーム向けにはインシデント発生時の対応を過去のナレッジを基にアドバイスするものなどがある。
それでは具体的にAIエージェントをどのように活用ができるのか。まずは先にも触れた「問い合わせ処理」だ。企業ではあらゆる部門で日々問い合わせ業務が発生するが、これをAIエージェントが代行することで業務を大幅に効率化できる(図2)。
図2 問い合わせ処理のイメージ
企業ではIT 部門だけでなく人事、総務、法務、マーケティングなどあらゆる部門で日々問い合わせ業務が発生する。これを人に代わってAIエージェントが対応することで業務を大幅に効率化することができる
「例えば従業員がPCにログインできなかった場合、Slackの画面上で『ログインできない』とメッセージを送ります。するとAIエージェントが『このような処理をしてみてください』と具体的な解決策をいくつか表示してきます。この回答は社内のナレッジから抽出されたものです。これでうまくログインできればOKですが、どうしてもできない場合は『うまくいかなかった』と返します。するとここで初めてIT部門の担当者がアサインされ、担当者がユーザーとのやり取りを行います。AIエージェントが可能な限り人手を介さず処理を行うため効率性が高まり、ユーザーもすぐに回答が得られるので安心して問い合わせができます」(渡辺氏)
新規事業のアイデア出しや営業戦略のプランニングといった「アイデア出し・ブレスト」にも有効だ。例えば「開催したイベント参加者のリードをどうフォローしていけばいいか」とリクエストすると、会議参加者の1人となったAIエージェントが、画面上のホワイトボードに様々なアイデアを自動的に提示する。従業員たちはそれを叩き台に議論を交わし、アイデアをどんどん膨らませていくというイメージだ。
「AIエージェントが出した答えをすべて鵜呑みにしてはいけません。あくまで叩き台としながら人間たちがアイデアを膨らませていく、深掘りをしていくというイメージです。この使い方も非常に効果があります」(渡辺氏)
このようにAIエージェントは、日々更新される企業内のナレッジをベースに、チームおよび企業全体を活性化させる新しい協働作業の在り方を実現する。
「当社が5000人を対象に調査を行った結果、AIをチームの一員として捉えるリーダーのもとでは、仕事の質とスピードが飛躍的に向上することが分かりました。リーダーがAIを受け入れ、積極的に試したり学んだりするよう従業員に動機付けすれば、AIのメリットを最大限に引き出すことができます」と渡辺氏。生成AI/ AIエージェントを日常的に活用できる環境構築こそが、DXの実現に向けた近道となりそうだ。
