

生成AI活用に関連した多様なソリューションが登場している。既存のSaaSにチャット型の生成AI機能を組み込んだもの、企業ごとの基幹データや業務フローに合わせたAIシステムの内製化を支えるもの、生成AIネイティブな機能を提供するSaaSなどそのタイプは様々だ。
そうした多くの選択肢から、企業はどんな点に留意してソリューションを選べばよいだろうか。多くの企業が生成AIに期待するのは生産性向上だが、それには大きく2つのアプローチがある。
1つは「投入時間の削減」だ。これは例えば顧客応対のプロセスの自動化を通じて、顧客満足度の向上やコスト削減につなげるアプローチ。もう1つは「付加価値の創出」である。こちらは、自社データから短時間でユニークな気付き(インサイト)を抽出し、競争優位を築くことだ。
もちろん、どちらのアプローチが“正解”というわけではないが、フライルの財部 優一氏は、次のようなメッセージを投げかける。
「労働集約的に行われてきた業務を効率化する狙いから、多くの企業が投入時間の削減を重視しているのではないでしょうか。しかしDXの本質は、いかに高い付加価値を生み出すかにあります。これを実現できるかどうかが、今後の5年間における企業の事業成長に大きな差異をもたらすでしょう」
それでは生成AIを、どうやって付加価値の創出につなげていけばいいのか。そのカギを握るのが、企業にある保有データの80~90%を占めている非構造化データだという。
例えばCX(顧客体験)の改善の場合、これまで顧客とのやり取りから得られた様々な気付きは、「お客様相談室」や「カスタマーサポート窓口」など、顧客接点を担う一部の部門でしか活用されてこなかった。
しかし生成AIを活用すれば、テキスト、音声、レビューといった大量の定性データを構造化できるほか、SQLを書かなくても複雑なデータ分析を行うことができる。さらに簡単な指示(プロンプト)を入力するだけで、業界ごとの特性を捉えたレポート作成も行える。つまり「顧客インサイト分析の民主化」によって、商品開発やマーケティング、営業、R&D、品質管理など、あらゆる部門に利用可能となるわけだ(図1)。
図1 「お客様相談室」を全社の顧客価値創造の起点に飛躍
顧客接点部門に閉じて活用されてきた顧客インサイトを、商品開発やマーケティング、営業、R&D、品質管理など、あらゆる部門の戦略的な意思決定に役立てていく
「実際に当社が生成AI活用を支援したある企業では、『一次情報の共有スピードが圧倒的に変わった』『お客様相談室から伝えられる情報がリッチ化し、顧客の新たなニーズが発見できるようになった』『様々な一次情報の分析結果が、関連部門から大きく期待されるようになった』といった変化が表れています」(財部氏)
ただし新たな付加価値につながるCX改善を図っていくためには留意すべきポイントもある。それは「業界特有の課題への理解」だ。例えば小売業界なら、多くの企業が「カスタマージャーニーのどこに問題があるのか調査が困難」「店舗が多すぎて現場の解像度を高めづらい」「顧客体験のサービス部分を担う人の離職率が高い」といった課題を抱えている。
「小売業における顧客体験の多くが人的要素に依存しているため、従業員が認識する課題について検討することが重要です。また、店舗やエリアごとの課題の傾向の違いを把握し、それに対する対応策を講じる必要もあります」(財部氏)
一方、消費財メーカーは「商品点数の多さ」や「間接的な顧客接点によるインサイト獲得の困難」のほか、「健康被害などの致命的リスクを早期に検知する必要性」といった課題を抱えているケースが多い。
「SNSで広がるクチコミなどの大量データを収集・活用するほか、お客様相談室に寄せられるデータと、担当部門ごとに毎回ばらばらに実施されてきた調査結果を統合するなど、商品を横断的に分析する仕組みづくりが重要になります」と財部氏は説明する。これと同様に金融業やサービス業など、業種によって留意点が異なってくるわけだ。
こうした生成AIに関する課題に対し、フライルではVOC(顧客の声)の「収集」から「分類」、顧客インサイトの「分析」、各部門の効果的なアクションを導き出す「活用」まで、一貫して支援するソリューションを提供している(図2)。その中核となるのは以下の3つの機能だ。
図2 フライルが提供する生成AIソリューションの全体像
VOC(顧客の声)の「収集」から「分類」、顧客インサイトの「分析」、各部門の効果的なアクションを導き出す「活用」まで、一貫して支援する
1つ目は「データの管理・連携機能」。これは音声データを含む膨大な非構造化データに対応し、データ取得やデータ連携を実現するもの。2つ目は「AIワークフロー機能」だ。部門ごとのニーズに応じた柔軟なワークフロー設計を実現する。
「多様な部門のニーズやデータソースに合わせた最適な処理プロセスを設計できることに加え、反復的なレポート作成業務にも対応しています」(財部氏)
そして3つ目が「分析支援AIエージェント」だ。これは「部門やツールごとに分散した顧客フィードバックがサイロ化しており全体像がつかめない」「分析ツールの操作やクエリ作成が難しく、非データ職が活用できない」といった課題を解決する機能だ。
「AIとチャット形式による対話を通じて、バイアスを押さえつつ誰でも簡単に顧客データや顧客インサイトにアクセスすることが可能となります。簡単に言えば『お客様について社内で最も詳しい情報と知識を持っており、聞けば何でも教えてくれる存在』です」(財部氏)
これらの機能を通じて、各部門に応じた様々なKPIの改善が可能になる。経営層には「全社横断の収益標向上」、商品開発部門には「次回購買意向度(NPI)の向上」、マーケティング部門には「NPSの向上」、お客様相談室には「問い合わせ数の削減」、営業部門には「受注率・単価の向上」といった形だ。こうした点が評価され、ダイソーやJTB、アスクルなど多種多様な業界に利用されている。
「単なるデータ分析にとどまらず、顧客に関するあらゆる情報から価値を創出し、DXを推進する。それがフライルの生成AIソリューションの真価です」と財部氏。生成AIの力を借りて、顧客の声を全社の成長エンジンへと変えていく取り組みが、今まさに求められているといえるだろう。
