Generative AI Conference REVIEW

電通総研/日本政策投資銀行

日本政策投資銀行の事例に見る
生成AI導入・定着手法

清水 久之 氏

清水 久之

電通総研
営業第二本部
エンタープライズ営業第1ユニット
戦略企画営業部 シニアプロデューサー

小笠原 悠祐 氏

小笠原 悠祐

日本政策投資銀行
情報企画部 デジタル戦略室 室長

倉嶋 昌平 氏

倉嶋 昌平

日本政策投資銀行
情報企画部 デジタル戦略室 副調査役

近年、生成AI活用の取り組みを本格化させた日本政策投資銀行(DBJ)。生成AIソリューション導入で同行を支援した電通総研と共に登壇し、「なぜ生成AIの活用は進まないのか?」と題する講演を実施した。

まず電通総研の清水久之氏は、生成AI活用が進まない理由として「4つの壁」を提示した。1つ目は無関心の壁、2つ目は、興味はあるもののためらいがあるゆえに活用にいたらないという壁、3つ目は一度利用してみたものの成果が出ないという壁、4つ目は個人で使いこなしても部署や組織全体として使いこなせない壁だ。

これらを打破するための解決策として、清水氏は「ツール」「人材・組織」「テーマ・業務」の3つの軸を示し、「それぞれの原因に沿った施策の実施が必要だ」と説明する。電通総研では「ツール」に関してエンタープライズ向け生成AIソリューション「Know Narrator」を開発・提供しており、DBJもその導入企業の1社だ。

契約書業務で成果を実証
現場の疑念を成功体験で払拭

次に登壇したDBJ小笠原悠祐氏は、同行の生成AI活用における現在地を説明した。約2年前に同行はAIを導入したものの当初はなかなか活用が進まなかったと小笠原氏は振り返る。取り組みを主導したデジタル戦略室のメンバーのほとんどがシステム関係の部署出身ではなかったが、「逆にユーザー目線でAIの使い方や広め方を思いつくことができた」と小笠原氏はその利点を語った。

次に登壇したDBJの倉嶋昌平氏は具体的な取り組みを紹介した。まず着手したのが契約書に基づくトラブル対応業務だ。シンジケートローンなどでは50~200ページに及ぶ膨大な契約書があり、トラブル発生時には全てを読み込んで対応する必要があった。「業務を詳細に分解し、自分たちの思考プロセスを言語化すればAIの適用が可能になる」と倉嶋氏は考え、現在では契約書の構造化や該当条項の検索、対応方針の検討、通知文の案文作成といった一連のプロセスをプロンプト化し、生成AIに実行させる仕組みを構築。「人間が行った場合に膨大な時間がかかる当業務も、生成AIにて大幅な時間短縮が可能になった」と倉嶋氏は効果を説明する。

成果を上げた後の取り組みも重要だ。定量・定性の両面で効果を報告書にまとめ、現場担当者主導のオンライン説明会を実施した。「これまで抵抗を示していた人も、我々の仲間となってくれた」と倉嶋氏は語る。経営陣にはデモ動画を活用して丁寧に説明を行い、その結果、他部署からもプロジェクトの申し込みが増加した。

自走できる仕組み作りへ
パッケージ化で全社展開を加速

一方で「質と量のダブルバインド」という課題も見えてきた。全社展開には多くのプロジェクトが必要だが、1つの部署と密に進めてしまうと人的リソースが不足してしまう。そこでDBJは「コンサル型からプロダクト型へ」の転換を図った。

具体的には「生成AI業務適用パッケージ」を整備。進め方をまとめた教科書や活用事例を視覚的に示すデモ動画、プロンプト作成を支援するワークシートなどのツールキットで構成される。業務の選定、業務の分解、プロンプトの作成、プロンプトの運用という4段階のプロセスを体系化し、各部署が自律的にプロジェクトを推進できる仕組みを構築した。

生成AIの業務適用プロセス
各部署が生成AIの業務適用を自律的に行えるように取り組みプロセスを体系化

並行して草の根活動も展開している。AIツールの使い方を毎週昼の時間にライブ配信し、生成AI研修も内製化した。1000人規模の組織で400〜500人が任意参加するなど、関心の高さがうかがえる。各部署の勉強会支援や他金融機関との情報交換、写真付き事例集の作成・共有など、コミュニティ形成にも注力している。

これらの取り組みの結果、社内AIチャットを毎月利用しているというユーザー数は約300人から約950人へと増加した。倉嶋氏は「日本企業の生成AI導入率は欧米と変わらないものの満足度が低いという調査結果があり、生成AIは業務プロセスへの組み込みが鍵になる。そこでは現場がAI活用へ主体的に取り組んで自走できる環境と仕組み作りが非常に重要になる」と語り、講演を締めくくった。

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