オプテージ/フィックスターズ
今こそバーティカルAI参入の時期
世界と戦うためのインフラとは?
中原 晃宏 氏
オプテージ
データセンタービジネス推進部
マネージャー
浅原 明広 氏
フィックスターズ
マーケティング部 CMO
オプテージの中原晃宏氏とフィックスターズの浅原明広氏が「日本企業の勝ち筋、バーティカルAIとそれを支えるインフラ」と題した講演を行い、日本企業がAI市場で競争優位を築くための戦略と、それを支えるインフラ基盤の重要性について語った。
浅原氏は冒頭、米国マーケティングリサーチ会社が発表した日米の生成AI市場規模比較に言及し、2030年に向けて両国とも成長が見込まれるものの、その規模には約4倍の差があると説明した。こうした状況下で日本企業はどこで戦うべきか。AIの世界では、インフラ層と基盤モデル層はすでに強力なプレイヤーが支配しているため、今から参入するのは難しい。しかし浅原氏は、シリコンバレーのベンチャーキャピタルであるセコイア・キャピタルの作成した資料を引用し、「アプリケーション層には広大なホワイトスペースが広がっている」と語り、ここが日本企業の攻めるべき領域だと強調した。
業界特化型AIの可能性
独自データが競争力の源泉に
このアプリケーション層で特に注目されるのが、業界特化型の「バーティカルAI」だ。浅原氏はその有望性について2つの理由を挙げた。1つは業界特化型データの価値増大だ。各企業が持つ固有のデータを汎用AIモデルに学習させることで、カスタムAIを比較的容易に構築できるようになった。もう1つはAIエージェントの登場だ。AIが単なる補助ツールから「業務を担う組織メンバー」へと進化することで、人間の仕事を直接代替できるようになる。これにより、ターゲット市場は「労働市場全体」へと拡大する可能性がある。
浅原氏は米国での具体例として、医療紹介ワークフローを自動化するサービスと、トラックドライバーとの業務連絡を自然な会話でこなす物流特化型AIエージェントを紹介した。いずれも創業から1〜2年の企業だが、すでに100億円規模の投資を獲得し、業界標準を築こうとしている。「バーティカルAIをまさに今始める時期である」と浅原氏は訴える。市場はまだ黎明期にあり、オープンなAIモデルの登場で参入障壁も下がっている今なら、日本企業にもまだチャンスは十分にあるという。
推論と学習で異なるインフラ要件
都市型と郊外型の使い分けが鍵
続いて、浅原氏から引き継ぎ、中原氏はバーティカルAIを支えるインフラ基盤について解説した。生成AIに取り組むには、データセンター・回線サービス、サーバー環境、パフォーマンスエンジニアリング・アプリケーションの4領域全てにおいて最適化が必要となる。中原氏は特にインフラ要件について、電力、ネットワーク、レイテンシー、実行基盤、データの5区分で整理した。
また、ひとくちに生成AIと言っても学習と推論でさらに要件は異なる。「学習フェーズでは大量のGPUが必要で、1ラックあたり数十kWから100kWという大電力を消費する。一方、推論フェーズではリアルタイム性が重視され、低レイテンシーと他システムとの接続性が鍵となる」と中原氏は語る。
推論には通信トラフィックが集中し接続性の高い都市型データセンターが、学習には大電力と広いスペースを確保できる郊外型データセンターが適している。オプテージは大阪曽根崎に都市型データセンター「OC1」を2026年1月に開設し、自社光ファイバー網による高品質な通信回線サービスの提供やメガクラウドやIXが集積する堂島・心斎橋エリアから3キロメートル圏内という立地の優位性を持つ。郊外型データセンターとしては、生成AI向けコンテナ型データセンターを2026年度中に福井県に開設する予定であり、原子力由来のCO2フリー電力を利用した水冷GPUサーバーの設置を想定している。
中原氏の説明を受け、最後に浅原氏はパフォーマンスエンジニアリングの重要性を強調した。開発フェーズでのファインチューニング高速化は市場投入のスピードアップにつながり、運用フェーズでの応答時間改善は顧客満足度とユニットエコノミクスに直結する。それぞれの強みを組み合わせた両社は「アセットの融合で日本を生成AI先進国に導く」を協業のスローガンに掲げ、日本企業のバーティカルAI実現を支援していく構えだ。
