
COLUMN2019.11.22
時計の専門家は時計をどう選ぶのか? プロが自腹で買った本気時計
編集者安藤夏樹 氏
今から20年近く前の話ですが、当時とても勢いのあった証券会社の社長をインタビューしたことがありました。相手は金融一筋で成功を収めたビジネスパーソン。こちらは金融雑誌に異動したての若手記者。失礼のないよう、ダークスーツに白シャツ、控えめな柄のネクタイをして、取材に臨みました。とても緊張していたのを覚えています。ところが、取材が始まってすぐ、相手の一言で緊張がほどけました。「変わった時計していますね。見せてもらえますか?」。そんな雑談が場の緊張を和らげ、結果として取材が成功したのです。これ以降、ビジネスウォッチとしてあえて個性的なものを選ぶことが増えました。「相手が興味を示す時計を選ぶ」技を知ったのです。今年手に入れたグッチのグリップなどはまさにそんな1本だと思います。
一方で、いつも個性的なものばかり購入しているからか、「落ち着いた雰囲気の時計も持っておきたい」という思いが常にありました。そこで手に入れたのが、グランドセイコー。ファーストモデルの復刻版です。SS製で、オリジナルとは異なる真っ白なダイヤルに、美しさを感じました。本来は黒いレザーバンドが付いていますが、グレーのものに替えて使っています。この時計は、ケースや針の磨きなど細部の仕上げが丁寧で、随所に日本らしさを感じる。自分の出自を代弁してくれる気がして、海外の方への取材の際などは、よく腕にしますね。

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