
LEADERS INTERVIEW2023.11.17
リーダーが語る「経営と相棒時計」
SBIホールディングス株式会社 代表取締役 会長 兼 社長 北尾 吉孝 氏

「昔から金融業界には、ロレックスオーナーが多かったんです。アメリカのインベストバンカーなんか特にそう。彼らと頻繁に顔を合わせていたこともあり、次第にいいな、と思うようになりました」
SBIホールディングス代表取締役会長兼社長、北尾吉孝氏の多忙な毎日の相棒は、ロレックス「オイスター パーペチュアル デイトジャスト」だ。聞けば、購入は社会人2、3年目の頃。20代中盤の青年にとっては随分高い買い物のようにも思えるが、「良いものを買って、長く、大切に使い続ける。これが、私が父から受け継いだ思想。いわば、北尾家のファミリートラディッションなんです」と話す。
注目すべきは、まったく同じモデルを2本所有しているという点だ。
「腕時計は、定期的にオーバーホールに出しますよね。その間、以前は別の時計を使っていたんですが、デザインが違うと、どうにも文字盤が見にくい。やっぱり慣れ親しんだ時計じゃないとだめだと感じ、数年前に2本目を購入したんです」
ここまで徹底して同じモデルを愛用し続ける北尾氏だが、シーンによっては別の時計を着用することもあるという。
「海外出張に出ると、パーティーの招待を受けることも度々ある。タキシードを着る時のために、このカルティエの『タンク フランセーズ』を持っていきます」
ロレックスも、カルティエも、愛用のモデルで特徴的なのは、さりげないダイヤ使い。そこには、無類の宝石好きだという北尾氏のこだわりが見え隠れする。
「ダイヤはもちろん、石全般が好きでね。シャツのカフスボタンも、スーツに合わせてあつらえたりもします。たとえば、紺のスーツにはサファイヤ、グリーンのスーツにはエメラルドという具合です」
そうしたさりげないおしゃれの作法も、駆け出しの金融マン時代に出会った、ニューヨーカーたちから学んだという。
1999年の創業以来、金融界におけるイノベーションを起こし続けてきた北尾氏。今もっとも力を注ぐプロジェクトのひとつが、半導体事業だ。今年7月には、台湾第3位の半導体受託生産大手・力晶積成電子製造(PSMC)と共同で、日本に半導体工場をつくることに合意した。
「中には、金融のプロである北尾さんがなんで半導体事業をやるんですか?と聞いてくる人もいる。でも、どんな事業を展開するにも、まずはお金が必要ですよね。『金融を核に金融を超える』。これがSBI グループ近年のテーマです」
とはいえ、最適な投資分野を選定するにあたっては、時代を見極める眼が必要不可欠。そのためには、「全方位的に興味を持つ」「否定から入らない」「情報を鵜呑みにせずに、自らしっかりと調査をする」、この3点が重要なのだと北尾氏は話す。あくまでニュートラルに構えたうえで、この時代が真に必要とする事業は何かを模索する―。これこそが、氏のビジネスセオリーなのだ。
「半導体に関していえば、かつて日本は世界シェア50%以上を誇っていた。それが、アメリカとの貿易摩擦を経て低迷し、現在のシェアはわずか10%ほどです。半導体がなければ電化製品はおろか、急速にEV化・自動運転化の進む自動車だって生産できない。今ここで我々が金融をバックボーンに半導体事業に取り組むことは、時代の必然だったといえます」
そしてひとたびプロジェクトが動き出すと、不思議なことに、必要なパートナーが自然と現れるのだという。
「僕が求めたからではなく、必要なものは『天意』として、あちら側からやってきてくれる。常々そう感じています」
あらゆるビジネスを支える絶対的な存在である、金融。しかし、そのビジネスのあり方に関していえば、時代と共に常に進化し続けている。
「大昔は、貝殻がお金だった時代もあったわけです。現在でいえば、アナログからデジタルへ、システムが進化することで、新たなビジネスの可能性が生まれる。将来のビジネスに備えて研究を進め、我々こそが新たなマーケットをつくっていかなければならない。そうした気概で日々仕事に取り組んでいます」
目まぐるしく、刻一刻と変わり続ける社会環境。そうした変化を捉えつつも、確固たる“自分”を持つことの大切さについても、北尾氏は同時に言及する。
「自らの考え方や行動が他に左右されず、自由であること。そしてそれが、世界に通用するものであること。これは、本社会議室に掲げている書『融通四海』が意味するところでもあります」
SBIグループの根底を支え続ける、経営哲学。この揺るがぬ思想があるからこそ、柔軟かつ多様なビジネスを全世界に向けて展開していけるのだ。
「考えてみれば、時計をはじめとしたファッションも、僕はずっと変わりません。定番品を愛用して、流行は一切追わない主義。髪型も、スーツのディテールも、数十年前から同じです。でもそのためにはまず、自分に何が似合うのかを自分でしっかりと見極めてきた。そのうえで“ゴーイングマイウェイ”を貫くことが、僕のスタイルなんだと思っています」
文=中村真紀、いなもあきこ 写真=吉澤健太、菊池陽一郎、本浪隆弘
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