2020.08.31
文=高山和良

今井さんは日本能率協会コンサルティング(以下、JMACと略)で、製造業へのコンサルティング・ノウハウを活かして、農業の現場への生産性や収益性向上のためのコンサルティングを展開されています。現在の御社と今井さんの立ち位置について教えてください。
今井氏(以下、敬称略):そもそも私は青森のリンゴ農家の次男で、子どもの頃から家業の手伝いをしながら、親が苦労している姿を見てきました。朝から晩まで一生懸命仕事をしても儲からないのが農業だというイメージを持っていました。父親には子どもには農業を継がせないという思いがあり、私は全く違う分野の職に就いたわけですが、そこで経験を積みながらも、農業はこのままでいいのだろうかと悶々と考え続けてきました。
製造業で培ったものづくりに関するコンサルティングのノウハウを農業の現場にも活かせるのではないかと考え、社内に農業プロジェクトを立ち上げて今年11年目に入りました。今、そのプロジェクトマネージャーを務めながら、製造業のコンサルティングと並行して農業現場のコンサルティングをしています。
JMACは経営コンサルティングファームですので、どうしたら農産物の収量が上がるのかという栽培技術の知見はありません。ただ、作業性や収益性の改善や、資材調達コストの低減、販路拡大、サプライチェーン構築という上流から下流までの様々な観点から農業経営を変えていく、ものづくりのコンサルティングノウハウを持っています。こうしたノウハウを活かして農業の現場支援をしてきた結果、ここ数年で生産性を2倍近く向上した例が出始めています。
農業の生産性向上というと、具体的にはどのようなことでしょうか?
今井:例えば、葉物野菜の生産現場では栽培の作業そのものよりも、収穫や包装の作業工程に時間とコストがかかっていて、生産のボトルネックになっています。このため、もっと作付面積を増やしたくても増やせない生産者がいます。
こうした収穫や包装工程の作業はものづくりの現場の「カイゼン」の考え方が活きるところです。こうしたコンサルティングをすることによって、農業の現場でも生産性や収益性を2倍近く向上することができます。
こうした支援実績がだんだんと広がり、経営意識が高い生産者の間にコンサルティングを受けてみようという人が徐々に増えているというのが現状です。また、農林水産省の農業生産性向上プロジェクトにおいて、全国6カ所で80の農業経営体の方に生産性向上の実践研修をして、農業のカイゼンを推進しています。
製造業の現場で活用されているさまざまなカイゼンやQCDの手法を進めつつ、ICTツールを始めとした最先端ツールを取り込み、それを活かす仕組みを整えていけば、大規模農業であっても、また、家族経営を中心とした中小規模の農業であっても、収益性を向上できる道が必ずあると考えています。