農研機構が本腰!急加速するニッポンの農業AI研究

50人超の精鋭を結集、専用スパコンも導入し開発本格化へ

研究の成果はデータベースに蓄えられ、WAGRI経由で使われる

 農研機構の成果はすべて統合DBに研究データとして蓄えられて、機構内で徹底的に活用され深められる。それと同時に、統合DBに溜められた農業データはWAGRI(農業データ連携基盤)経由で外部の農業関係者にも共有される。一部のものについては、外部企業や公的な研究機関で実用化・商用化される。「活用可能なものに関して外部提供するための出口としての役割をWAGRIが担っています」と川村氏は説明する。逆に農研機構はWAGRIのビッグデータを取り込み、農業AI研究に活用する。

 WAGRIは、日本の農業とその関連分野(バイオや環境など)でデータを流用・交換できるように、やり取り可能なデータ形式で農業関係のありとあらゆるデータが登録される情報プラットフォームで、会員の法人・企業・組織が利用できるようになっている。ここには農研機構から提供される研究データ、農業情報研究センターの成果も含まれる。

農研機構が開発する農業AI技術や様々なノウハウ・知見は、形式を整えデータの形で統合データベース「NARO Linked DB」に蓄えられる。この統合データベースは、WAGRI(農業データ連携基盤)とデータのやり取りができるようになっていて、農研機構の農業AI技術は、WAGRI経由で民間企業や外部の研究機関からも使えるようになる。(資料提供:農研機構)
農研機構が開発する農業AI技術や様々なノウハウ・知見は、形式を整えデータの形で統合データベース「NARO Linked DB」に蓄えられる。この統合データベースは、WAGRI(農業データ連携基盤)とデータのやり取りができるようになっていて、農研機構の農業AI技術は、WAGRI経由で民間企業や外部の研究機関からも使えるようになる。(資料提供:農研機構)
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課題は、優秀なAI研究者をどう集めるか

 ここまで、農業情報研究センターの体制づくりは順調と見える。当面の課題は、成果を出しつつ優秀なAI人材をどう集めるかだ。

 成果を出し続け、400人ものAI Readyな研究者を育てるためには、センター内のAI技術自体が陳腐化してはいけないし、AI技術を高めながら計算資源の手配・構築にも目を配り進化させていく必要がある。このためには優秀なAI分野のエキスパートが喉から手が出るほど欲しい。

 こうした人材の確保がなかなかできないのが農研機構の目下の悩みだ。今は、どの業界でも、AI研究者は引っ張りだこの状況にある。データ戦略室室長でもある川村氏も、「ご存じの通りAI研究者は引く手あまたなのであちこち就職できますし、なかなか人が集まらないということが正直なところあります」とこぼす。

 しかし、川村氏はAIのエキスパートとして農業ほど面白いジャンルはそうないという事実に期待する。「農業が面白いのは、一番手前には人がコントロールできない自然があって最後のところにはお客様の顔が見えているところです。美味しいものを作ればそれだけお客様が喜んでくれる。AI技術の適用先として、これだけフィードバックが返ってくる分野はそんなにないと思います」

 さらに「AIの研究者は、トイプロブレムという言い方をしていますが、実社会、実世界のデータではないところで研究する人も多い。実際の応用に興味がある方であれば農業AIはとてつもなく面白いと思っています」と語る。

 そもそも農業は、太陽と土、雨、風を相手にしてきた人類最古の技術とも言える。最古の技術である農業に、今の最新技術であるAIを組み合わせることで何が生まれるのか……。それは日本の農業を大きく変え、未来の日本に大きな恵みをもたらす可能性がある。農研機構、そして農業情報研究センターの農業AI研究が今後どんな実を結んでいくか、期待は大きく膨らむ。

専用スパコン「紫峰」の前で農業AIについて語る杉浦綾氏(左)と川村隆浩氏(右)。
専用スパコン「紫峰」の前で農業AIについて語る杉浦綾氏(左)と川村隆浩氏(右)。