



2013年2月、ケニアとモザンビークに取材に行ってきました。そういえば、田中理事長も、同じ時期にモザンビークへいらしたそうですね。
ええ。池上さんが訪問された直後です。私も、池上さんが辿ったのと同じルート、ナカラ港からナンプラまで車で往復し視察してきました。
では、田中理事長も9時間にも及ぶ自動車での移動を体験されたわけですね。あの自動車移動で、アフリカは大変に広い大陸だと体感しました。それから、道路をはじめ物流インフラの整備が、社会と経済の成長には欠かせない、とも。
あんなに長く車に揺られる経験は、日本ではまずないですね。日本人の大半はアフリカをそれほど広いと思っていないのではないでしょうか。そのイメージを植え付けた犯人は、メルカトル図法の世界地図なんです。
え、メルカトル図法の地図が、ですか?
はい。メルカトル図法は、緯度が高くなるほど相対的に面積が広く示され、緯度が低いほど相対的に面積が実際より狭く示されます。アフリカは赤道を中心に北半球と南半球に広がる大陸です。このせいで、実際より小さく見えてしまうのです。本当はユーラシア大陸の次に広い巨大な大陸なのです。
まさに! 私たちはユーラシアをひとくくりに語ることはないくせに、アフリカについては、つい「アフリカ」とひとつにまとめて語りがちです。けれども、実際のところ、アフリカは非常に多様性に満ちた地域ですね。
その通りです。
自然環境も、地中海沿岸、砂漠、サバンナにステップ、熱帯雨林、珊瑚礁に面した海、高原、氷河の残る高山と多岐にわたっています。一番北にあたる地中海に面したチェニジアの首都チェニスは、緯度でいうと日本の茨城県にあたり、赤道を超え、遥か南端の南アフリカの喜望峰にはペンギンが住んでいます。人種も多様ですし、国の数は54にのぼる。これほど多様性に富んでいる大陸はないかもしれません。
この10年間、アフリカは急速に経済成長を続けてきました。2000年以降の経済成長率は年5%程度。予想以上の高成長ぶりで、さらなる成長が期待されています。
だから、改めてビジネスの世界でアフリカが注目されているわけですね。
ええ。ただし、その一方で課題も山積しています。池上さんがご指摘されたアフリカの多様性は、成長の源泉にもなりますが、一方で成長を妨げる要因になることもあります。まず54カ国もあるアフリカでは、各国の経済規模や成長度合いに著しい差があります。
大国がある一方で弱小国家もあります。資源に富んだ国もあれば、そうでもない国もあります。治安が安定している国もあれば、いまだに紛争が絶えない国もあります。そして、ビジネスの発展の面ではとても重要なポイントなのですが、海に面していない内陸国が54カ国中16カ国にのぼります。
アフリカを訪れて実感したのですが、海に面していない、つまり港を自前で持てない内陸国は貿易の面で非常に不利ですね。アフリカの外の国と単体で貿易ができませんから。
おっしゃる通りです。地政学的に見ると、アフリカ大陸では、一国単体では経済成長しにくい構造を抱えているのです。内陸国は、アフリカ以外の国と貿易をするために、必ず隣の沿岸国の港を利用しなければなりません。つまり、自国の経済が隣国との政治関係や隣国の開発状況に左右されてしまうのです。
ところが、アフリカはこれまで必ずしもすべての国の地域は仲がよかったわけではない。隣国同士で紛争問題を抱えているケースも少なくありませんでした。そうなると、内陸国も沿岸国も発展できない……。
そのとおりです。ですから、アフリカの経済が発展するには、まず各地域のすべての国々で治安と社会が安定し、隣国同士が仲良くなる必要があります。その上で、国境を超えた物流網を構築しなければなりません。数カ国をまたがる道路や鉄道の物流インフラを延伸し、内陸国も沿岸国の港を利用できるようにする。
その一例が、今回私がモザンビークで取材してきた「ナカラ回廊」ですね。モザンビークのナカラ港と北部の中心都市ナンプラを結び、さらに国境を越え、隣の内陸国マラウイやザンビアまで幹線道路と鉄道を延伸する。回廊沿いでは大規模農業を一体開発し、産業化する。
物流を整備し、農作物や鉱業製品が流通し、輸出され、あるいはさまざまな製品が海外から輸入される。そうなれば、モザンビーク北部地域とマラウイとザンビアが一緒に発展できる……。
まさにそうなれば理想的です。池上さんが取材されたモザンビークのナカラ回廊開発を筆頭にアフリカ南部10カ国の地域では、全部で8つの回廊プロジェクトが優先回廊と位置付けられており、その多くに対して日本が資金面でも技術面でもさまざまな国際協力を行っています。
成果が出ている地域もあるんですか?
モザンビーク南部の首都マプトと南アフリカとを結んだ「マプト回廊」では、マプト近くにアルミニウム精製を行うモザール社が両国の出資で立ち上がり、アルミニウム輸出は現在のモザンビークにとって最大の外貨獲得手段として成長しました。またマプト港は、南アフリカ北部地域にとっても重要な貿易港として利用され、回廊沿いは急速に経済発展が進んでいます。
その一方で、ナカラ回廊の取材でつくづく感じたのは、まだまだ基本的なインフラの整備が立ち後れていることです。道路も幹線道路の一部を除くと未舗装地域が大半ですし、ナンプラではしばしば停電を経験しました。サハラ以南のアフリカでは経済成長が進んでいるケニアでも電力普及率は20%程度だそうです。
まさに今のアフリカにとって、社会と経済の双方が発展するためには基礎インフラの整備が絶対不可欠の要素です。現状では、たとえば海外から工場を誘致するのも難しい地域がありますね。物流網と電力網が整備されていないと、話が始まりませんから。
農業に関しても、灌漑設備の充実や、農作物を運ぶための道路網の整備がなされないと、今以上の発展は難しいですよね。日本をはじめ先進国も、アフリカのインフラ整備にはもっともっといろいろなかたちで国際協力をすべき、という感想を持ちました。
インフラが整えば、いろいろな可能性が生まれます。都市は一気に発展します。工場立地にふさわしい場所では、第二次産業も勃興するはずです。そしてその結果、アフリカ外との貿易が活性化する。そうなってはじめてアフリカが、世界のビジネスシーンにデビューすることになります。
そのキックオフに欠かせないのがインフラの整備、というわけですね。