



アフリカの経済発展に欠かせないのが、農業ですね。
はい。とりわけ主食になる穀物の生産の拡大はアフリカ諸国にとって最重要課題のひとつです。農業はアフリカのGDPの32%を占めています。ところが、個々の農業は、いまだに天水頼りの小規模農業が多く、農地面積の割には、単位面積あたりの収量は低いまま。灌漑設備が充実していないため、渇水など天候不順にも左右されやすい。
食料の安定生産が果たせないと、社会も経済も基礎体力がつきません。また、相対的に物価が高くなってしまいます。いま、日本はアフリカ各地で主食となる穀物生産の規模と質を上げるための国際協力を行っています。そこで注目されているのがコメです。
ケニアで日本の国際協力でコメの増産を試みている地域を取材しました。コメ食、人気、ありますね。アフリカの人たちは、豊かになると、そして機会があれば、コメをたくさん食べるんだ、ということを学びました。
サハラ以南のアフリカでは、トウモロコシなどのでんぷん質を練って餅状にした「ウガリ」が主食、という地域が多いのですが、コメが手に入りやすくなると、「3食全部コメのごはん」というのが珍しくなくなる。
「ウガリ」は腹持ちがとてもいいのですが、コメに比べると栄養価が低いんです。コメの生産がアフリカで増えていけば、コメ食はより当たり前になっていくと思います。
もしかすると「ウガリ」は飽食日本に向いた食べ物かもしれませんね。腹持ちがいいですから。ウガリダイエットとして流行するかも(笑)。ケニアや、以前取材したウガンダのように稲作を積極的に行っている地域の食生活を拝見すると、アフリカでは日本以上に「お米が主食」になる可能性がありそうです。
日本では、アフリカ23カ国と協力して、アフリカのコメの生産量を10年間で倍増させることを目指す「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」プロジェクトを2008年に立ち上げました。
池上さんが取材された、ケニアでの稲作地域での灌漑施設の充実や二期作、二毛作の普及プロジェクト、ウガンダでのネリカ米栽培プロジェクトは、いずれもCARDの一環です。各地での収穫量は、質量ともに確実に上がり始めています。
コメの増産が果たせれば、アフリカの食料供給が安定し、経済成長の基礎が固められますね。コメ以外では、モザンビークのナカラ回廊沿いでは、大豆とトウモロコシの生産向上のための取り組みを始めた現場を取材しました。ブラジルと日本とが共同で、現地農家による持続可能な大・中・小規模農業の共存モデルモザンビークに根付かせようという「プロサバンナ」プロジェクトです。
元を辿ると、1970年代後半から20年以上に渡り、ブラジル中部のセラード地帯で農業開発プロジェクトを行い、荒地を一大穀倉地帯に変えた実績がJICAにはあります。技術協力をし、融資も行いました。結果、ブラジルは大豆とトウモロコシ等の一大農産物輸出国に成長したのです。
話はちょっと変わりますが、2012年夏、大豆の主生産地である北米では気温が上がらず、大豆が不作でした。
国際価格が急騰しましたね。
ただし、危機的な状況を避けることはできました。それは、南米のブラジルに世界有数の大豆生産の拠点があったからです。アフリカにも大豆やトウモロコシなど穀物の生産拠点ができれば、国際価格は一層安定します。
セラードとナカラ回廊地域の社会経済状況は大きく異なりますので、セラード農業開発の経験がそのまま移転できるものではありませんが、日本とブラジルの技術を活かした協力を通じて、モザンビークが大豆やトウモロコシ等の生産拠点になれば、同国のみならず世界の人々に大きく貢献するでしょう。
アフリカで食物生産が安定すると、アフリカ内部だけでなく、全世界にメリットをもたらすんですね。