そもそもこれまでのセキュリティー対策は、脅威の侵入リスクにいかに対処するかという考え方で発展してきた。マルウエアの攻撃を止めるためにファイアウオールやUTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)などの製品を導入し、より高度化した攻撃はサンドボックスで防御。脅威に内部に侵入されてしまった場合は、EDR(Endpoint Detection and Response:エンドポイント検知・対応)で対処するといった具合だ。
しかし、攻撃が増え続けている以上、防御側は延々と後手の対応を強いられることになる。そこで登場したのが、『攻撃の数そのものを減らそう』という原点回帰型の予防的アプローチ「CTEM」だ。
「CTEMは組織におけるサイバーリスクを継続的に発見・評価、対処するためのフレームワークであり、『資産の可視化』『リスクの評価』『継続的なアプローチ』の3点で成り立っています。これによりリスクの早期発見・対処、計画的セキュリティー運用の実現、規制対応や監査の強化などの効果が得られます」と飯田氏は説明する。
実際にCTEMに取り組む際には「1.Scope:スコープ設定」「2.Discovery:発見/検出」「3.Prioritization:優先順位付け」「4.Validation:検証」「5.Mobilization:動員/復旧対応」の5つのプロセスをPDCAサイクルのように回していく形になる。ちなみに1~3は診断のプロセス、4~5は対処のプロセスとなる。
「CTEMを効果的に導入するためのポイントとしては、『スコープ定義とツール選定・導入』『運用方針の策定と定常的な運用』『運用方針に沿った迅速なリスク対応』の3点が挙げられます」と飯田氏は説明する(図1)。
社内ネットワークや公開資産、サプライチェーンといった具合に、組織内外の環境を整理してスコープを定義。その上で、各スコープにおけるリスクを可視化できるツールを導入していく。特にツールを選定する際には、網羅的、かつ十分な可視性を確保できるものを選ぶことが肝心だ。また、実際のリスク対応は、危険度の高いものから行っていくため、優先順位付けに必要な付加情報が得られることも重要となる。
加えて、CTEMの効果を最大限に発揮させるためには、定常的かつ継続的な運用を行うことが求められる。もちろん、発見されたリスクにはすべて対処するのが理想だが、そこにかけられる人的・時間的リソースにも限りがある。リスクの修正に必要なコストも考慮した上で方針を策定し、実際の運用を回していくことが重要だ。また、その過程では複数部門が関与することも多いため、導入検討の段階から関連部門との連携を深めておくようにしたい。
「さらにCTEMには、即時対応が必須となるセキュリティーインシデントと異なり、計画的なタイミングで対処できるという利点があります。様々なリスクに対し、1スコープずつ順番に可能な範囲で対応していけるわけです。もちろん、リスクがゼロになることはありませんが、運用フローを用いて着実に対処していくことで、結果としてセキュリティーレベルの高い組織を作れます」と飯田氏は説く。
セキュリティーレベルの高い組織を目指す上では、冒頭に触れたようなセキュリティーホールを定常的に監視し、迅速に対応できる体制を構築することが必要だ。これが実現できれば、サイバー攻撃に狙われにくくなるだけでなく、攻撃の成功確率を下げることもできるからだ。