昨今のセキュリティー事件を俯瞰すると、元派遣社員による情報持ち出し、従業員の管理不備によるランサムウエア攻撃の被害拡大、サポート詐欺がきっかけとなった個人情報の漏洩など、たった1人のインシデントによって大規模な被害が引き起こされるケースが後を絶たない。
かつての社内業務は、そもそもIT化されていないプロセスも多かったため、システムに対する基本的な侵入防止やルール、運用による多層的な防御体制を構築することで、サイバー攻撃を防ぐことができた。しかし現在は状況が様変わりしている。ダークWebなどを通じた犯罪のビジネス化により、サイバー攻撃の高度化や分業化が進み、攻撃の精度が飛躍的に向上するとともにボリュームも増加している。結果、従来のような多層的なセキュリティー対策が意味をなさなくなってきているのだ。
「これからのセキュリティー対策としては、従業員を『いかに守るのか』だけではなく、従業員を『最後の砦』として位置付ける必要があります。従業員の意識を高めて強靭化し、ますます高度化していく攻撃に対して適切に振る舞えるようにしてこそ、サイバー攻撃の被害を防ぐことができます」とLRMの藤居 朋之氏は説く。
その基盤となるのが、従業員に対するセキュリティー教育である。しかし、多くの企業がセキュリティー教育で成果を得られていないのが実情だ。LRMが2024年に実施した「組織の情報セキュリティ教育に関する調査」でも、「セキュリティ教育に充てる時間が不足している」や「担当者やリソースが不足している」といった課題が挙げられている。
また、「効果測定ができない」という課題を挙げる企業も多い。
例えば「インシデント○件減少」「従業員満足度○%以上」「理解度確認テストのスコア平均○○点以上」といった指標を掲げるものの、これらはセキュリティー対策にほとんど寄与していない。「従業員のセキュリティー意識を高め、正しい行動を促すという、セキュリティー教育本来の目的を満たせているかを測る指標にはなりにくいのです」と藤居氏は指摘する。