
事業部ごとに構築されたシステムや、ブラックボックス化したシステムによって引き起こされる情報のサイロ化が、DXの阻害要因になっている。この状況を打開する上で有効なのがノーコードツールを活用することだ。これにより、ビジネス部門担当者を含む多様な人材がデータを扱えるようになり、サイロ化の解消や組織全体のDX推進につなげることが可能になる。サイボウズ「kintone(キントーン)」の強みについて、同社自身の事例を基に紹介する。

日本企業のDXの遅れが叫ばれて久しい。見えてくるのは、「個別の取り組みが社内各所で散発的に行われている」という実態だ。これについてサイボウズの萩澤 佑樹氏は次のように語る。
「事業部門ごとに構築されたシステムやレガシー化したシステムなどに起因する情報のサイロ化が、この状況を生んでいます。例えば、ERPといえど業務で必要なすべてのデータをカバーするのは不可能で、各部門が必要に応じてExcelやSaaSを利用しています。このような形で、ますますサイロ化が進行しているのです」
この流れを断ち切るために、どのような方策が必要なのか。王道の解決策といわれるのは「全社のデータ戦略を策定し、データ活用体制を構築する」ことだ。これにより顧客や社員に提供する情報の価値を高めるとともに、その価値を生かす新たな組織能力を獲得する。
しかし、残念ながらこれはあくまで理想論といえる。自社内にどういったデータが、どこにどんな形で存在しているのか分からない。さらには、どのような人材がデータ活用に向いているのかさえ見当がつかない状況で、全社のデータ戦略を描くのは難しいからだ。
「そこで当社は、それとは異なるアプローチで高度なデータ利活用を具現化しています」と萩澤氏は話す。具体的には、データを無理なく集約・一元化しつつ、データ活用に対するモチベーションや改善意識が強い人材でチームを形成してデータ利活用を推進するのである。
その取り組みの基礎を支えているのがノーコードツール「kintone」だ。ノーコードツールとは、文字通りコードを全く書かずに目的のアプリケーションを開発できるツールのこと。プログラミングスキルを持たないビジネス部門の担当者でも、自ら主体的に業務改善アプリを開発して利用できる。「実際、kintoneのユーザー企業における導入担当者の93%が、非IT部門に所属する方です。2024年4月末現在で導入企業数は3万4000社に達しています」と萩澤氏は紹介する。
同社におけるkintone活用の例を見ていこう。前提としてサイボウズは「ワンプラットフォームで組織全員が情報を共有する」ことを目指している。インサイダー取引やプライバシー侵害につながる情報を除き、あらゆる情報をオープンに共有する。この状態で、現場が主体となって業務改善を進めることでチームワークの質を高め、組織全体の進化を促したいと考えている。
「一般には、『最小権限の原則』に基づき、業務に関係する情報だけをアクセス可能にするのが望ましいといわれますが、当社は極力オープンかつ公明正大に情報を扱うことで、組織内の情報格差の是正、業務改善の促進、意思決定の迅速化などにつなげたいと考えています」と萩澤氏は話す。
既に多くのアプリケーションをkintoneで開発して運用している。営業・顧客サポート部門における顧客情報管理、案件管理、マーケティング部門におけるタスク管理や外注先管理、全社員が使う各種申請フォームやFAQ、ファイル共有アプリなどがその例だ(図1)。
社員が自主的にアプリをつくることを基本としている。同時に、個人情報や機密情報などの一部を除いて、全社員があらゆる情報にオープンにアクセスできるようにしている
「業務アプリケーションは、使う人自らがkintoneでつくるのが基本ルールです。部門内で使うものはもちろん、全社で使うもの、全社で見るべき情報を扱うものもその対象です」(萩澤氏)。これにより、開発を外注することによるコスト増やベンダーロックインを回避できる。また、自分でつくったアプリだからこそ、特別な愛着も生まれる。業務プロセスやデータが“自分ごと化”されるという副次的な効果も得られているという。
●本記事のセミナー動画はこちらから視聴可能です
さらに様々なアプリをkintone上で構築・利用する過程では、外部システムが保有するデータとの連携ニーズも発生する。そこで同社は、この連携の仕組みについてもkintoneで開発して運用している。
例えば、マーケティングオートメーションツールや販売管理システムのデータのほか、管理会計システムが保有する予算のマスタデータ、データウエアハウス内にある企業マスタデータなどとの連携がその例だ。「連携先のシステムでデータの変更があった場合、バッチ処理またはリアルタイム処理でkintone側に反映する、またはその逆の連携を行っています」と萩澤氏は説明する。
このような仕組みを構築する過程では、組織体制も変更した。データ利活用や業務改善への意識が強い人材が徐々に可視化されてきたことを受け、それらのキーパーソンを中心としたチームの形成とその活動促進を図っているのだ(図2)。
kintoneの活用過程で生まれてくるキーパーソンを中心として、マーケティングや営業企画、経営企画、システムエンジニアなどのドメインごとのデータ活用体制を構築している
「この方針のもと、マーケティングや営業企画、経営企画、システムエンジニアなどのドメインごとのデータ活用体制を構築しています」と萩澤氏は述べる。DXを推進するに当たって、人は最も重要な要素の1つといえる。IT知識の有無によらず、誰でも簡単に利用できるkintoneが、組織内の優秀な人材を可視化するツールにもなっている。
サイボウズは、ルール整備の指針となる「kintoneガバナンスガイドライン」、業務改善リーダー向けの「kintone SIGNPOST」やDX人材の育成に向けたガイドラインなど、kintoneの価値をさらに高めるためのドキュメント群も多数用意している。これらを活用すれば、サイボウズが実現したのと同様の効果を引き出すこともできるだろう。DX推進に向け、一度検討してみることをお勧めする。
