
「ChatGPT」をはじめとする生成AIが企業ユーザーからも大きな注目を浴びている。しかしPoC(概念実証)が進む中で、「自社でどのように活用してよいか分からない」「セキュリティー面が心配」「うまく使える社員と使いこなせない社員で差が出てしまう」などの懸念が出てきているのも事実だ。ユーザーローカルの講演では、実際にChatGPTをビジネスで活用している企業の事例を交えながら、PoCを成功させるための3つのポイントについて考察された。

「ChatGPTは、既に人間を超える精度を備えています」と語るのは、ユーザーローカルの大手 大輝氏だ。東証プライム市場に上場している同社は、ビッグデータ分析ツールやAI関連ツールの開発を手がける企業。テキスト・画像・音声など様々なデータを対象としたAIアルゴリズムやAI製品の研究・開発も行っている。
この数年の間におけるChatGPTの進化は目覚ましい。米国の司法試験で上位10%に入ったり、日本の医師国家試験で合格点を取ったりすることはその一例だ。ChatGPTが企業ユーザーからも注目されている理由を、大手氏は「単に賢いというだけでなく、人間の上司よりも相談しやすいからです」と説明する。24時間いつでも相談できる上に、回答も数秒から数十秒で返ってくる。
こうした優位性を評価して、ChatGPTをビジネスで活用する動きが世界的に加速している。「今後、生成AIを使いこなせる企業とそうでない企業との間には、労働力や効率性において大きな差が生まれることが予想されます」と大手氏は説明する。例えば、人間が頑張って1日に1件のメルマガを作る企業と、ChatGPTが1日に100件作る企業を比べれば、どちらが勝者になるかは自明だろう。
ただし、ChatGPTの導入を支援している同社には「情報漏えいなどのセキュリティー面が不安」「社内での活用方法が分からない」といった懸念事項の声が届くという。これらの懸念を払拭するために、大手氏は5つの活用方法を推奨する。
1つ目が、商談準備や営業ロールプレイング(ロープレ)での活用だ。商談を成功させるために営業担当者は事前に入念な準備をするが、そこでChatGPTを活用すれば成約率を格段に高められるという。
営業担当者は、事前に商談のストーリーを作るが、顧客の業務や課題を熟知していないと成約する可能性は低い。しかし、ChatGPTを活用すれば顧客の業務や課題が分からなくても、商談ストーリーを生成できるのだ(図1)。
自社や商品の情報や商談の大まかな流れ、顧客情報などをChatGPTに伝えると、顧客の業務や課題が分からなくても商談ストーリーを自動生成してくれる
当日のデモでは、自社の業態と自分が担当する商品を記述した後に、商談の大まかな流れ、顧客情報などを伝えると、ChatGPTが「顧客が抱える想定課題」「商談中のヒアリングポイント」「クロージング戦略」などの商談ストーリーを生成していた。生成された文章の一部をコピーして質問を繰り返せば、自分が深掘りしたいことに対するトークスクリプトを生成することも可能だ。担当する商品の情報を既存のデータベースから検索する機能も備えている。「中堅やベテランの社員に相談しても回答までに長い時間を要することが、ChatGPTではほんの数秒で処理できます」と大手氏は説明する。
2つ目が、メルマガやSNS投稿の作成だ。こうした用途の文章では、取り上げる商品や顧客ターゲットによって内容が大きく変わってくる。この活用方法では、シャンプーメーカーのマーケティング担当者が20代男性をターゲットとしたシャンプーのメルマガを生成するデモを披露した。
3つ目が、Excelの関数作成・コーディングだ。ChatGPTは文章だけでなく、コードや関数も生成できる。例えば「店舗全体売り上げのシートから、店舗ごとの売り上げを作るマクロ」の作成方法と尋ねると、それを作成するための具体的な手順を日本語の箇条書きで出力する。プログラム言語や関数を知らない担当者でもマクロを作成できるわけだ。
4つ目が、社内マニュアル検索・QA対応だ。これは、マニュアルはあるがたくさんの種類があって見つからない、あるいは1ファイル当たりのページ数が多く内容も複雑なので社員に読まれない――といった場面で役立つ活用方法だ。マニュアルなどの文書ファイルをChatGPTに連携させておけば、「経費精算の手順を教えてください」といった曖昧な質問でも具体的な手順と該当するマニュアルを提示してくれる。これによって、社内からの問い合わせ件数を大きく削減できる。
5つ目が、資料の翻訳や要約・ダブルチェックだ。作成した文章の翻訳や要約を生成することはもちろんのこと、作成した企画や資料が社内ルールに違反していないかも確認する。ダブルチェックをする手間や、翻訳する時間などを削減できる。日本マイクロソフトが公開した資料によると、生成AIを利用することで1人当たり月に14時間程度の業務を削減する効果があるという。
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現在、多くの企業が生成AIを利用したPoCを進めているが、成功に導くためには3つのポイントがあるという。
1つ目が、「自社専用の環境を作ること」だ。無料で公開されているツールを利用していると、利用したデータがAIの学習に利用され、社内の機密情報が外部に漏れる恐れがある。実際、生成AIツールを提供している米グーグルでも、ユーザーに対して機密情報を入力しないように警告している。逆にいえば、自社専用の環境を整備できれば、情報漏えいのリスクを気にすることなく、強力な生成AIのポテンシャルを自在に試し、業務やビジネスに活用することができるわけだ。
2つ目は「自社のデータと連携させること」。具体的には、社内マニュアルや顧客事例、財務情報、製品情報、顧客アンケートなどだ。大手氏は「インターネット上には公開されていない自社データをChatGPTと連携させることで、実務に即した形での利用が可能になります」と説明する。
最後に3つ目が、「思い切ってたくさんの社員に使わせてみること」だ。IT部門だけで検証してみる、あるいはベテラン社員だけで使ってみるなど、限られたユーザーだけで試すと、検証が進まない場合が多いという。逆に生成AIを高度に活用している企業では、様々な職種や年代の人材がテストを実施している。「AIの学習に使われない安全な環境を整備したら、商品開発、マーケティング、営業、エンジニア、事務など、一部の人ではなく、職種を問わず多くの社員に使ってもらうことで、自社ならではの活用方法が見つかります」と大手氏は補足する。
同社でもChatGPTのポテンシャルを最大限引き出すために法人向けChatGPT環境構築ツール「ユーザーローカルChatAI」を提供している。その特長は、①入力したデータがAI学習に利用されない安全な環境、②社内で「誰が」「どのように活用しているのか」利用状況をきめ細かく把握できるため、リスク管理やナレッジのシェアが容易にできること、③ExcelやWord、PDFなど社内にあるデータと連携して利用できるため、社内ファイルの検索や要約もできること、の大きく3つだ。
現在なら、完全無償で利用できるという(図2)。社員が安全かつ簡単に利用できるクラウドサービスなので、興味がある方は試してみるものよいだろう。
「予算が取れない」「どう使えばわからない」などの顧客の声を受けて、法人を対象として無償で提供している(上限100人)
