大量のコンテンツが必要な時代
生成AIの活用が必須に
アドビ
デジタルメディア執行役員
ビジネスマーケティング本部長
竹嶋 拓也氏
AIによるCX(カスタマーエクスペリエンス)やEX(従業員エクスペリエンス)の変革が急ピッチで進んでいる。そこで重要な鍵となっているのが、デジタルコンテンツだ。
アドビ
デジタルメディア執行役員
ビジネスマーケティング本部長
竹嶋 拓也氏
ディスプレイ広告や動画配信、InstagramやTikTokのようなSNS、TVerのようなコネクテッドTV、自社サイトや自社アプリ、電子メール、店頭のデジタルサイネージなど、配信チャネルの数が急増している。チャネルごとに特性やニーズが異なるため、流すコンテンツのスタイルや内容を変える必要があるが、これにより1つの広告キャンペーンでも、制作すべきコンテンツのバリエーションが爆発的に増えているのだ。
仮に、8つの製品のキャンペーンを15チャネル、35カ国語で展開し、10パターンのコンテンツを毎月(年12回)更新していくとすると、年間50万4000種類のコンテンツが必要になる。これだけの量のコンテンツをどうやって作るかが、企業の大きな課題になっている。コンテンツ制作における生成AIの活用が、待ったなしのテーマになっているのだ。
パーソナライズの重要性増す
生成AI活用の基盤「Adobe Firefly」
さらに、コンテンツをパーソナライズすることの重要性が高まっている。アドビとマッキンゼー・アンド・カンパニーが実施した共同調査によれば、「顧客体験の向上が最優先事項」と回答した経営者は85%、「パーソナライズされたオファーを期待」と答えた消費者は71%、「12カ月以内に顧客体験の取り組みに生成AIを導入する」と答えた企業は52%に及んだ。
こうしたニーズを受け、企業のクリエイティブやコンテンツ制作の分野に様々なツールを提供してきたアドビは、AI時代に即した新たなソリューションを提供している。
その土台となるプラットフォームが「Adobe Firefly」だ。ここで、ビジネスで安全に商用利用できるコンテンツを作るための生成AIモデルを用意している。「Image Model」「Vector Model」「Video Model」の提供を既に開始しており、今後は「Audio Model」や「3D Model」を追加していく。
この土台の上に、企業ごとのカスタマイズレイヤーがある。企業がFireflyを独自にトレーニングし、社内やアプリケーションで使いやすくする仕組みだ。
これらの基本アセットを活用し、AIの支援によって膨大なパターンのコンテンツを生成していく。そのためのソリューションは、大きく4つある。
1つ目は「Adobe Creative Cloud」だ。生成AIとクリエイティブツールが統合された基本的な制作環境である。2つ目は「Firefly Services」で、コンテンツの膨大なバリエーションを生成AIで一括作成し、市場投入までの時間を大幅に短縮する。3つ目はコミュニケーションのテスト、承認、結果測定を1つの操作画面から実行できる「Adobe GenStudio for Performance Marketing」。4つ目が「Adobe Express」で、プロのクリエイターに頼まなくても、広告、マーケティング、広報、販売促進、人事、営業などの担当者が簡単な操作でコンテンツを制作、修正できる環境を提供する。
デジタルメディアが普及したことで、異なるチャネル、異なる言語、異なるバリエーションで大量のコンテンツ制作が必要になっている
コンテンツサプライチェーンの時代
AI基盤を活用する企業が続々
後半で、竹嶋氏は同プラットフォームを活用しているグローバル企業の事例を紹介した。
クボタは100種類以上の製品に関するWebサイトを複数の言語で運営し、ユーザーごとの興味関心に即して内容をパーソナライズしている。FireflyのAIを独自にトレーニングし、コンテンツ制作のアプリと連動させることで、ブランドの一貫性を保ちながらコンテンツを大量に自動生産、配信できる体制を整えた。
PCメーカーのレノボは、ブランドのガイドラインにユーザーごとのペルソナに応じた定義を加えることで、ブランドイメージに合ったコンテンツのバリエーションをAIで大量に自動生成している。
アドビの社内でも、このプラットフォームを最大限に活用している。大量のコンテンツを自動生成し、ユーザーやチャネルに合わせたパーソナライズを実行することで、コンテンツの制作コストを約63%削減した。コンテンツのクリック率を57%向上させ、投資対効果(ROI)を140%高めている。
ファッションブランドのCOACHは、AIに学習させたカスタムモデルから製品のデジタルツインを作成。これをFirefly上で運用し、新デザインの検討やマーケティングに活かしている。
今日のコミュニケーション戦略を語るうえで、AIは避けて通れない。ブランドの品質とイメージを維持する形で大量のコンテンツを自動生成し、クロスチャネルで展開する。一人ひとりのユーザーに最適化されたコンテンツを作り、最適なチャネルとタイミングで届ける。
そのコンセプトを、アドビは「コンテンツサプライチェーン」というキーワードで説明している。製品だけでなく、コンテンツのサプライチェーンが求められる時代になった。
竹嶋氏は「AIはあくまでもツールであり、人のクリエイティビティに代わるものではありません。上手に活用すれば、強力な味方になってくれます」と話し、講演を終えた。
「コンテンツサプライチェーン」を支える基盤。AIモデルを提供する「Firefly」が土台となり、その上でカスタマイズレイヤーや各種制作環境が機能する








