体験プロセス設計で活用を促進
活用率が30%から70%に向上
2025年に入り、AIエージェント活用の動きが加速している。AIエージェントとは特定の目標を達成するために生成AI(LLM)が自律的に行動するシステムであり、人のパートナーとなって活躍するイメージだ。
こうした中、パーソルワークスイッチコンサルティングでは「ヒトとAI agentとRobotで“はたらくWell-being”の向上へ」を目指すゴールに掲げる。そこで社員を対象に、生成AIの活用促進が従業員体験にもたらす効果について実証効果の測定を実施。2025年3月に調査レポートとして公開した。
パーソルワークスイッチコンサルティング
コンサルティング事業部 DXコンサルティング部 部長
大嶋 利生氏
コンサルティング事業部 DXコンサルティング部 部長の大嶋利生氏は本調査を紐解きながら「生成AI導入だけでは先に進むのが難しい。従業員の体験プロセスを設計し、活用率の向上施策を実施することでアウトプットを最大化できます」と話す。施策を展開した結果、同社では活用率が当初の30%から70%へと向上。また、独自に開発したWell-beingの評価指標「Work Switch Score」において体験スコアが20%上昇したという。
パーソルワークスイッチコンサルティング
コンサルティング事業部 DXコンサルティング部 部長
大嶋 利生氏
AIエージェントは組織の能力拡張にも大きな効果がある。「現場の人員が理解して育てていく“AIエージェントの民主化”が重要です。例えば営業では顧客メールへの一次回答などの自動回答エージェント、過去商談履歴・顧客動向・自社サービス資料からの提案書作成エージェント、営業ロープレ動画からAIエージェントにフィードバックをもらいスキルアップを図るなどが考えられます」と大嶋氏は言う。その上で従来の働き方が変容し、「人の代わりではなく、AIエージェントと一緒に働く“協働”が実現します」と結んだ。
パーソルワークスイッチコンサルティングではヒト、AIエージェント、ソフトウエアロボットが協働してWell-beingが向上する未来を描く
分科会Discussion Report
やがてはAIが人間の判断を支援する時代へ
AIによるパラダイムシフトは仕事をどのように変えていくのか。本分科会にはパーソルワークスイッチコンサルティング、業務自動化の先駆者であるUiPath、AI-OCRに強みを持つAI insideが参加。自動化やAIエージェント活用、AIと人間の共存などをテーマに、「未来の業務プロセスとAIの役割」について議論した。ファシリテーターは日経BP 総合研究所の小林暢子。
左から、日経BP 総合研究所の小林暢子、AI insideの三谷辰秋氏、パーソルワークスイッチコンサルティングの熊倉晃太氏、UiPathの夏目健氏
日本企業の大多数は
生成AI活用の発展段階
まずは企業の生成AIの取り組み状況について教えていただけますか。
熊倉
パーソルワークスイッチコンサルティング
熊倉 晃太氏
生成AIの活用レベルは大きく3つあります。レベル1は対話形式のAI、レベル2はRAG(検索拡張生成)を取り込んだ高精度検索、レベル3は自律的なアクションが期待されるAIエージェントです。
パーソルワークスイッチコンサルティング
熊倉 晃太氏
しかし日本企業の大多数はレベル1〜2にとどまっています。個人の生産性は向上しているものの、組織的な効果測定が難しい状況です。AIエージェント導入の障壁にはセキュリティポリシーの未整備と具体的な活用イメージの欠如が挙げられます。
夏目
UiPath
夏目 健氏
精度への過度な期待も課題の1つです。完璧な精度は現実的には難しい。実務で重要なのは「どこでどう使うか」を具体的に想定することです。
UiPath
夏目 健氏
そこで我々は、RPAとAIの組み合わせによる業務自動化が鍵だと提案しています。例えば1万件のドキュメント処理で半分のチェック作業が削減できれば、大きな価値があります。また、生成AIで全員が恩恵を受けるためには、組み込まれた自動化の一部として使われる状態が求められます。だからこそPoC段階からAIとRPAを組み合わせた評価を行うべきなのです。
三谷
AI inside
三谷 辰秋氏
当社では、生成AIを活用してあらゆる帳票の高精度なデータ化を実現しています。従来、人手を要していた多種多様なレイアウトにも対応し、業界最高水準の読取精度を誇るAIエージェント「DX Suite」が、データ入力の前後工程をまとめて自動化することで、大幅に工数を削減します。
AI inside
三谷 辰秋氏
今後は、人間は最終確認のみとするなど、人の関与を最小限にしたフルオートメーションへの移行を目指していきます。
「経路依存性」から脱却し
組織をAIレディな体制に
では、活用がうまく進んでいる企業の特徴とは何でしょうか。
三谷
現場の課題感を起点に、経営層がAI活用を企業変革の中核戦略と捉える企業ほど、継続的な成果につながりやすいと感じています。AIを人と協働する“バディ(相棒)”として位置づけ、認知能力の拡張に活かすことが重要です。これにより、知的生産性の高い業務へ人材を再配置する「バリューシフト」が可能になります。
夏目
現在、当社ではAIエージェントプログラム開発ツール「Agent Builder」のプレビュー版を公開していますが、非常に反響が大きく、様々なユースケースが生まれています。従来のIT製品は「導入して終わり」という考え方でしたが、そこから脱却する段階に突入したように感じています。なぜなら業務自体が常に変化し、社内ポリシーや規制、取引先ルールの変更などにも適応しなくてはならないからです。
日本企業は既存の業務プロセスを疑わずに継続する「経路依存性」に陥りがちですが、一度導入したソリューションは、現時点では最適解であっても将来的には正解でないかもしれない。そうした危機感を持つ先進的なユーザーは既に自動化に取り組み、成果を出しています。
新しい技術を使いこなすためには、組織自体の変化が不可欠。経営層による戦略的ビジョンの提示はもちろんのこと、AI時代に適した人材の採用、既存社員のスキルアップ支援など総合的な組織変革を通じて、AIの活用スピードと効果を最大化できるのです。
バーチャル労働者のAIが
足し算の効果をもたらす
5年後、10年後の業務プロセスにおいて、AIはどのような役割を果たすと考えていますか。
夏目
人材不足の中で成果を上げるには、2つの方法があります。1つ目は個人の生産性向上です。ここではAIを「パワードスーツ」のように活用し、個人の能力を強化することを重視します。用途が明確に定められた製品にAIを組み込むことで利用のハードルが下がれば、誰でも簡単に価値を出せるようになるでしょう。
2つ目は労働力の増強です。AIが「バーチャル労働者」となって単純作業を代行することで、人間は高価値業務に集中できます。我々はこの2つをコスト削減・時間短縮の「引き算の効果」、新たなビジネス創出の「足し算の効果」と表現し、とくにバーチャル労働者の活用に注目しています。
三谷
AIは、信頼できるバディとして人と協働する存在へと進化しており、それによる働き方の変化はすでに始まっています。AIが業務の一部を担うことで、人はより創造的な判断や価値創出に専念できるようになり、真のバリューシフトが実現します。人とAIがそれぞれの強みを活かして共創することで、業務の質はもちろん、組織全体のパフォーマンスも飛躍的に向上していくことでしょう。
熊倉
多くの企業ではまだデータを十分に蓄積していませんが、人材減少や社員の流動性を考えると、「会社の判断」をデータとして残すことが重要です。
既に「AIに業務判断を学習させる」考え方も広まりつつあります。業務内容や判断基準、意思決定プロセスを記録し、AIに学習させることで人間の判断をサポートする方法です。例えばオンライン会議での意思決定プロセスをAIで解析し、ヒアリングなしで知見を抽出できる可能性が出てきました。技術的にはまだ実現していませんが、デジタル化が進むことで業務改善のアプローチも変わると見ています。








