高性能なAI が持続的な成長と
競争力の強化を支援する
グーグル・クラウド・ジャパン
日本代表
平手 智行氏
AIを「転換をもたらす技術」と捉えるグーグル。2016年から「AIファースト」を掲げ、研究開発と実装に注力してきた。以来、AIリーダーとして市場を牽引し、日本で最も信頼され貢献できるパートナーを目指し、「AIの力で解き放とう、日本の可能性」を行動指針に、次々と新たなサービスを提供している。中でも注目を集めるのが、2024年12月にグーグル・クラウドが発表したAIエージェントサービス「Google Agentspace」。
グーグル・クラウド・ジャパン
日本代表
平手 智行氏
平手氏は「Google Agentspaceは社内外の情報に対して統一的にアクセスし、能動的なアクションを可能にするサービス。これにより組織全体の知識活用が進み、従業員はより効率的に仕事をこなし、お客様はより満足度の高い体験を得られる。結果として、企業の持続的な成長と競争力の強化につながります」と強調する。
Google AgentspaceはAIエージェントプラットフォーム。組織を横断した情報収集・共有、エンドツーエンドの業務代行、人材不足の解消に貢献する
例えば顧客に営業をかける際、従来は担当者が様々な情報を人力で収集してまとめ上げ、営業計画を練っていた。だがGoogle Agentspaceを活用すれば、過去10年分のIR情報、顧客のインタビュー記事、取引情報やCRM情報、ERPやファイルサーバーにある類似業界の最新情報までを集めて分析して提案できるようになるという。
「これはあくまでも一例に過ぎません。なぜならGoogle Agentspaceは、情報を活用するあらゆる場面で人間に比べて質、量ともに桁違いの情報を集約できるからです。AIエージェントの新しい波に乗ることは、日本経済全体を活性化させ、再び世界をリードするチャンスと言えるのではないでしょうか」と平手氏。そして活性化を支援するため、今後も伴走者として一緒に取り組みを進めていく考えを示した。
分科会Discussion Report
Google AI が加速するビジネスイノベーション生成AI活用の最前線
先進企業はいかに生成AIを事業に組み込んでいるのか。小売、製造、EC、保険の4業界からAIリーダーズが参加し、各社の事例を報告。今後の展望も含めて活発に意見を交換した。ファシリテーターは日経クロストレンド発行人の佐藤央明。
左から、グーグル・クラウド・ジャパンの小池裕幸氏、日本特殊陶業の木村和之氏、損害保険ジャパンの中島正朝氏、エイチ・ツー・オー リテイリングの小山徹氏、ZOZOの風間昭男氏
先進企業が取り組む
生成AIのユースケース
皆さん、グーグルのAIを事業で活用されています。具体的事例について教えていただけますか。
小山
エイチ・ツー・オー リテイリング
小山 徹氏
私たちは百貨店とスーパーマーケットを運営し、日々お客様に最高の購買体験を提供できるよう努めています。競争の激しい小売業界で業務効率の向上と顧客満足度の向上を目指し、「Google Workspace with Gemini」を導入しました。さらに、一部の高度な業務では「Vertex AI」も併用しています。
エイチ・ツー・オー リテイリング
小山 徹氏
特徴は“現場目線でユースケースを考える”こと。プロンプトテンプレートも従業員が売り場で感じた困りごとが出発点ですが、百貨店とスーパーではユースケースがまったく違います。そこで汎用的に使えるテンプレートを作ったところ、マーケティング部がメディア取材の議事録を作成したり、EC用のレシピ提案に活用したりなど、様々なユースケースが生まれ、従業員の活用も増えています。より高度な活用も検討中で、社長からは外部に頼ったレポート作成ではなく、生成AIを活用して内製するように指示が出ました。意見を集約するためにも、今後は全社を巻き込んで進めることが重要になってきます。
中島
当社は間違いが許されない金融商品を扱うため答えが勝手に生成されては困ります。そのため、代理店向けのQAデータベース「教えて!SOMPO」の効率化に生成AIを活用しています。具体的には、ざっくりとしたキーワードから正しい質問を導き出す検索支援、多様なQAセットの作成、膨大なマニュアルやQAデータから照会内容に最適な回答案を自動生成する独自開発の「おしそんLLM」(教えて!SOMPO LLM)によって代理店向けの業務をサポートしています。
木村
日本特殊陶業
木村 和之氏
我々は製造業なので、もの造り及びサプライチェーンに関する数多くのデータが蓄積されています。しかし、データ同士の横断的な連携はまだ不十分です。数値データは基より、マルチモーダルの画像・動画・音声まで活用する方向で動いています。そしてそれらは、需要予測の精度を高め在庫や仕入れを正確にコントロールしようと、AI活用も含めトライしています。
日本特殊陶業
木村 和之氏
活用するAIは数多く存在しますが、社内データの機密性確保と今後の技術発展の視点から、まずはグーグルの技術に集約する方針で進めています。また、進化の早いAIエンジンやツールは自社で作成するのではなく、グーグルの「NotebookLM」「Google Agentspace」など、良いAIツールを“いち早く業務活用”することが重要と考えています。
風間
ZOZOでは会社全体のグロースに活用したいと考えています。その中心にあるコンセプトが「『服』を届ける」から「ワクワクできる『似合う』を届ける」へのシフトでした。リアル店舗の「niaulab by ZOZO(似合うラボ)」で収集したデータと生成AIを連携させれば、これまで以上に「『似合う』の提案」の精度向上が見込めます。ファッションコーディネートアプリ「WEAR by ZOZO」でもGeminiのマルチモーダルを活用して「なぜこの服があなたに似合うのか」を可視化するようにしました。このように効率化、社内のエンパワーメント、顧客とのエンゲージメントに威力を発揮すると思っています。
エンジニアが最近、パラダイムシフトを感じたと話していました。これまでは自分が書いたプログラムをAIが手伝ってくれる形だったのに、今ではAIが書いたものを人間が手伝う時代になったと。そうなるとプログラミングしたいエンジニアの役割も変わらざるを得ない時代になってきます。これに限らずAIによるパラダイムシフトをどのようにコントロールするかが課題になっています。
導入の苦労はあるが
得られる果実も多い
導入で苦労した点は。
中島
損害保険ジャパン
中島 正朝氏
カスタマーセンターのオペレーターはお客様からの問いかけの意図を正しく汲み取り、言語化できないことがあります。なので、汎用型のAIで答えを導き出したいプロンプトを作ること自体が難しいんです。まずはその壁があると感じます。それから、生成AIにはハルシネーションのリスクがつきものです。「このケースで保険金が出るか」と聞かれて間違っているのに「出る」と答えたらそれがファイナルアンサーになってしまう。そのため、代理店への対応は必ず人間が担当しています。
損害保険ジャパン
中島 正朝氏
風間
確かに、生成AIに対する過度な期待は禁物です。プレーンな状態で組み込んでファッションアドバイスを行っても普通のものになってしまう。だからこそ、より特別なものにするための工夫が求められます。そしてビジネス、テクノロジー、デザインの3つが交わる部分を探すことも重要です。
木村
とはいえメリットが大きいのも事実です。例えば、プログラムのコードなどそれぞれで癖がありノウハウが必要なものも、生成AIはそれぞれに合わせ対応するのでエンジニアの負担が格段に減りました。そうした点はとても生成AIに助けられています。
小山
おっしゃる通り、ソフトウェア開発の分野ではかなり効率化できています。当社では熟達したプロや若手を含めて取捨選択が早くなるイメージで、開発品質の底上げに貢献しています。ただそれもナローダウン(絞り込み)までの話で、最後の判断はやはり人間が下す必要があります。いずれにせよ当社では開発に限らず積極的に生成AI活用を進めていきます。お客様に提供する前に従業員が使いこなすことができれば、いよいよ生成AIによるお客様との対話型コミュニケーションが可能になるはずです。
AIを使いこなすほど
人間の価値の重要性が高まる
AIと人間の共存についてはどう考えますか。
小山
これからさらにAI活用が進めば単なるエージェントからパートナーに昇格するかもしれません。グーグルとは、スーパーのチラシ制作への応用について話しています。今は人海戦術で数十人が各社のチラシを比較しながら制作していますが、一発でできるようになったら大幅なコスト削減につながる。さらに言えば、AIのバイヤーすらも夢ではなくなります。
そうなるとすべてが自動化されますが、人と接する小売業がそれでいいのかという疑問は残る。金融システムなどはますます高度化するでしょうが、そうでないところは人の温度感を求める原点回帰が起きるのではないか。ちょうどその過渡期にいると感じる場面は多いですね。
木村
小山さんの言うように、すべてを自動化すればいいわけではない。我々が取り組んでいる製造現場の自動化では、人の動きを動画からAIによりロボットに覚えさせることなど進めていますが、最後の微妙な動きはロボットには不可能です。とくに人間による勘、コツを含めた様々な気づきに価値がある。自動化でコストダウンする部分、人間の価値創出の部分、このバランスをどのように取っていくかは悩ましいところです。
小池
グーグル・クラウド・ジャパン
小池 裕幸氏
人間の営みすべてをデータ化できるわけではありません。データ化できないニュアンスのような部分は必ず残るはず。逆にAIを使いこなして人間がどのような価値を提供するかが重要です。この点を忘れなければ、これまでの働き方が変わる可能性を秘めています。
グーグル・クラウド・ジャパン
小池 裕幸氏
中島
“AI-Ready”の基盤づくりも欠かせない戦略です。企業の情報発信は公式サイトを閲覧してもらうことが前提でしたが、ユーザーが「Gemini Deep Research」などを駆使して、公式サイトを経由せずに調査するのが当たり前になりつつあります。その際、AI-Readyな形で正しく構築することが大前提になります。お客様は生成AIがまとめた情報を信用するからです。だからこそ、AIに向けた正しい情報発信をしていかないと選ばれなくなるとの危機感があります。
AIエージェントが
ビジネスのゲームチェンジャーに
今後の展望を教えてください。
木村
「Google Agentspace」に期待しています。今まで社内データを民主化して皆で使えるようにしてきましたが、AIに答えさせると部内の機密情報まで他部署の人に漏れてしまいます。この機密性をコントロールできるのが「Google Agentspace」です。この情報の機密性を細かく担保し、より効率化が見込めるAIエージェントの活用を進めています。
中島
当社も「Google Agentspace」や「NotebookLM」による社内情報の検索・共有・調査に力を入れていきます。中長期的には、代理店とのコミュニケーションやナレッジ共有の効率化を目指します。最終的には営業やコールセンターに問い合わせなくても、すべて「教えて!SOMPO」で答えられるようになるまで整備するのが理想です。
風間
ZOZO
風間 昭男氏
多くの人はこの20年ほどでインターネット、スマホと2度の技術的なイノベーションを経験し、3度目として生成AIがやってきました。画像を読み込んだときに最も饒舌に説明してくれたのがGeminiで、画像生成に関して最も低コストだったのもGeminiでした。今後はAIエージェントをどのように活用していくかに取り組んでいきます。
ZOZO
風間 昭男氏
またEコマースは2000年頃からUIが変わっていませんが、AIにより変化を迎えるだろうと予測しています。それに適応していくことも、我々にとってのチャレンジになります。
小山
繰り返しになりますが、AIを使う部分と、人がやるべきことをきちんと区別していくことが大切です。省人化は経営的なコスト削減の観点では正しいかもしれませんが、お客様にとってはそうではない可能性も高い。恐らく、AIを活用しながら最適解をずっと探し続けていくことになるでしょう。それが小売業の宿命だと思っています。
小池
現在は情報過多の時代です。我々はAIを提供して、より早く目的の情報にたどり着けるようにしたい。ただし、効率やスピードだけでは測れない価値、相手への配慮や共感、心遣いといった人間的な要素もビジネスや社会においては依然として重要です。AIが進化を遂げる一方で、改めて人間の価値が見直される時期はきっと来ると思います。








