コンテンツのAI自動生成はもう古い
生成AIによる引用の分析が出発点に
アドビ
デジタルエクスペリエンス事業本部
インダストリー ストラテジー
マーケティング プリンシパル
Manish Prabhune(マニッシュ プラブネ)氏
アドビはここ数年、AIの活用によってWebコンテンツの作成を自動化し、企業の「より速く」「より良く」といったニーズに応える製品を提供してきた。例えば、2023年に発売した画像生成AI「Adobe Firefly」は、1枚の写真と講演のスクリプトデータさえ用意すれば、写真に写っている人物があたかも実際に講演を行っているような動画を自動的に作成できる。
アドビ
デジタルエクスペリエンス事業本部
インダストリー ストラテジー
マーケティング プリンシパル
Manish Prabhune(マニッシュ プラブネ)氏
さらに2025年6月に発売した新ソリューション「Adobe LLM Optimizer」では、生成AIによる引用を意識して、Webサイトのコンテンツを最適化するための分析やアドバイスを提供する。導入企業は、消費者が生成AIに尋ねた結果に最適な自社商品情報を提供する形で、Webマーケティングの成約率を向上させることができるというわけだ。この製品を加えたAdobeの新ソリューションに触れると、ここ数年の生成AIを活用した業務改善の取り組みもかすんで見えてしまうことだろう。
生成AIは消費者がブランドを調査し、発見し、関わる方法を急速に変革する
消費者はAI経由での情報収集が主流に
AI引用をブロックする企業は要注意
アドビのプラブネ氏は普及が進む米オープンAIの対話型AI「ChatGPT」を使う生活者の意識変化についても説明した。例えば、オフィスに置く家具を選定するために、おすすめの製品とオンライン商談の対応などを聞いてみたとする。ChatGPTは、質問者の意図をくみ取った上で、メーカー数社が提供する主要製品の比較分析結果を回答。生活者は従来のように、複数のWebサイトを見比べて調べる必要はなく、メーカーの立場からすると、AIが競合他社の情報を調べて、営業の商談までを代行してくれたことになる。つまり、マーケティングと営業のプロセスが一本化され、商品の発見から購入に至るまでの消費者行動にも変化が起きている。
日本企業が認識すべき重要な視点としてプラブネ氏は「『Adobe Analytics』で日本のWebサイトのトラフィックを分析したところ、3~5%はChatGPTを経由していますが、トラフィック全体は減少傾向にあります。その理由は日本企業のWebサイトの5~6割がChatGPTからのアクセスをブロックするポリシーで運用しているためではないかと推測しています」と話す。AI経由で来るトラフィックが増加しており、成約率向上にも有効であることを考えると、日本企業はこうしたポリシーを見直す必要があるとともに、抜本的に変える時が来たということになる。既に米国ではテスラが、自動車の中にある組み込み型装置にAI機能を導入した。消費者の意図をWebサイトだけではなく、日常的に扱う機器のAI学習内容を通じても収集できる。「AIを単なる業務の自動化だけに利用するのではなく、新しい付加価値によるビジネスのレバレッジを利かせる観点から活用すべき状況になったと考えられます」(プラブネ氏)
デジタルタッチポイントは多様化する。LLMの新しい付加価値体験が期待を上回る体験となる
AI引用に最適化する新ソリューション
企業経営層への貢献度向上を実現
後半でプラブネ氏はアドビの提供するAIビジネスの革命を支援する新ソリューションを紹介した。「Adobe LLM Optimizer」を活用すると、企業はAI経由のトラフィックを監視し、ブランドの露出度をベンチマークすることができるほか、「発見されやすさ」「エンゲージメント」「コンテンツを改善するためのアドバイス」などを受け取り、迅速にデジタルチャネル全体に展開することができる。
従来は、調査した顧客層の属性にマッチするコンテンツを提供するという発想で、Webサイトを構築していた。しかし、生成AIは消費者の属性を普段の何気ないコミュニケーションから学習、蓄積していく。例えば、消費者が自分の写真の加工をAIに依頼しただけで、容姿の属性がAIに暗黙のうちに学習されることもある。こうしたAIの能力を踏まえて、サイト最適化を検討すべき状況になっている。アドビ自身も、「アクロバット」という製品名で検索する消費者が減ってきたことを受けて、「PDFを編集したい」という意図を持った消費者にマッチするWebサイトに方向転換しているという。
アドビはAIを活用したWebサイト構築用ソリューションとして、コンテンツの作成、管理、効果測定を一元化、高速化する「Adobe GenStudio」を2024年に投入した。また、利用者の属性・ニーズを学習して、AIチャット機能を最適化する「Adobe Brand Concierge」を2025年3月から提供している。従来は新ソリューションを1年に1回のペースで開発していたが、今では四半期に1回のペースに加速し、Webサイトを最適化するプラットフォームを抜本的に刷新しているところだ。
プラブネ氏は最後に「アドビはこの2年間、主にビジネス活動のボトムラインを効率化したり、改善したりする方向で、Adobe FireflyなどのAI機能を製品に取り入れてきました。今後はワークフローの標準化や効率化、コンテンツ分析に関するデータ収集の低コスト化など、ボトムラインへの貢献は引き続き強化する方針です。加えて、顧客ごとに最適化されたコンテンツを大規模配信する『マスパーソナライズ』を新ソリューションで実現し、経営層などトップラインへの貢献度を高めていきます。アドビがこれまで15年かけて伝えてきたデータ×クリエイティブの世界観が、今ようやく実現することにエキサイトしています」と話し、講演を終えた。








