さて、「集落丸山」の今後はどうなっていくのか。
LLPの事業期間はスタートから10年間と区切られている。その後の運営についてはどのように継続していくのか今後の協議によって決まる。現在はおおよそのビジョンはあるが、ハッキリと決まっているわけではない。いずれにしても、宿のサービス実務にいま携わっている住民がいつまでもそのまま続けていけるわけではない。どこかの時点で必ず若い層の参加が必要になるのだ。
金野さんは集落丸山が自走できるようにすること、つまり集落自らがすべてを運用できるようになることがベストだと語る。
「こういう仕組みづくりを集落だけでやるには限界があります。僕ら中間事業者の役割は集落に不足するリソースをその都度補填すること。次の大きな山を築くために、どういう人がいればいいのか。いないなら僕らが続けるのかですが、僕らは伴走型支援です。ベストソリューションは僕らが何もやらなくてもいいような人が集落にIターンで来て住人として内部化することだと思っています」
佐古田さんの言葉も重い。
「評価いただいているのは村人が運営しているからこそ。いま集落の女性にがんばってと無理を言っていますが、次第に高齢化していきますので、やはり後継者が必要です。今核になっているのが集落内の食べどころの2店。こうした、自分たちのロマンを語って実現するような後継者。そういう次の世代に委ねたい。運営を外に丸投げするような方法が一番不幸だと思っています」
次を担う側もまた相応の覚悟でこうした期待を引き受ける。宿泊施設に隣接するレストラン「ひわの蔵」のシェフを務める村木さんは今45歳。佐古田さんと金野さんが今後の10年先、20年先を担ってほしいと期待する一人だ。
村木さんは控えめながらも、しっかりと地に足を着け、今と未来を見つめている。
「いま集落の運営をされている方々が10年後、20年後となったときにさすがにそのままということではないと思うので、なにがしかのお手伝いができたらと考えています。若い世代が何かを作っていかなくてはいけません。ただ、今は毎日ひたすら、お客様にいい料理を提供することに集中しています。集落にいいレストランがあると言ってもらえるようにしたい。そうしなければ、10年後、20年後はありませんから」
このように、若い世代が住民としてこの集落に入りながら、宿泊事業を持続可能なものへと昇華させることが理想だ。それに加えて、外部からこの地域に惚れ込んで、集落の活性化に寄与している人たちもいる。実際に、ある人は様々な人を巻き込みながらこの集落に通い耕作放棄地を復活させ、そこで酒米を作り、丸山集落の酒を商品化するところまで持っていった。
こうした動きが幾重にも重なり、その行動と思いが結果として積み上がっていけば、金野さんと佐古田さんの描く「集落丸山」の明るい未来像が確かなものとして見えてくるはずだ。その姿の中に、農泊事業を進める全関係者が追い求める成功の秘訣が内在している。