大学農業サークルと農家が「いい関係」を続けられる理由

~神戸大学農業サークルと丹波篠山市西紀南地区の「恋」ものがたり

全国の大学で農業サークルが人気を集めている。「食と農林漁業大学生アワード2019」で農林水産大臣賞を受賞した神戸大学地域密着型サークル「にしき恋」は2012年度の神戸大学農学部の授業をきっかけに発足。丹波篠山市・西紀南地区で大きな役割を果たしている。大学と農家や地域の連携は全国各地で実施されているが、長く継続し、定着しているケースはそれほど多くはない。農家と大学のハッピーな関係はどのように作りあげられたのか、その秘密を探ってみた。
北川二郎さん・恵さん夫妻と、この日集まったボランティアメンバー。OBやOGが参加することもある。2年生が立ち上げたサークルということもあり、伝統的にサークルの代表は2年生から選ばれている(写真:水野浩志)

 全国の大学の農業系サークルが熱い。各地に農業系サークルが生まれ、複数大学合同の農業系サークル交流会や合同説明会などのほか、大学生向け農業フリーペーパーも発行されている。

 2019年11月には、「第8回 食と農林漁業大学生アワード2019」が開催された。応募したのは北海道から宮崎まで25の学生団体。2年連続でファイナリストになり、2019年に最優秀賞「農林水産大臣賞」を受賞した学生サークルがあると知り、訪ねてみた。

「西紀で農業ボランティアをするようになって、天気のことをすごく意識するようになりました」という「にしき恋」代表の田口さん(写真:水野浩志)

 兵庫県丹波篠山市西紀南地区で活動する、神戸大学の学生を中心とした農業系地域密着型サークル「にしき恋」だ。「現在、団体のメンバーは180人。神戸大学農学部の学生が6割、3割が他学部の学生。神戸大学全11学部の学生が所属しています。1割が他大学の学生です」と、代表の神戸大学国際人間科学部2年の田口友理香さん。

 活動内容は、農家の⼿伝いをする「農業ボランティア」と、耕作地を借りて丹波⿊⼤⾖を⽣産販売する「にし恋Farm」、地域活性化を⽬的とした様々な「プロジェクト活動」の3つ。中心となっているのは、毎週末に行われる農業ボランティアで、田口さんも、新入生のサークル勧誘時にたまたま参加して、その魅力にはまったひとり。

 「大学生が地域に入って農業をできることに感動しました。以来、ほぼ毎週、篠山に来ています」。

大学の授業がきっかけでサークルが誕生

「学生の本業は勉強。農家と触れ合いのなかで農業を意識してくれるものがあったり、また行きたいと思ったりしてくれることがあればいい。そのための環境づくりが大事だと思っています」と北山さん(写真:水野浩志)

 にしき恋が誕生したのは8年前。2012年度の神戸大学農学部の授業、「実践農学入門」で篠山市の西紀南地区で農業実習をした学生が翌年、ボランティアをしたいと名乗り出たことがきっかけだった。

 学生からの相談を受けたのは、「実践農学入門」の実習の際に受け入れ窓口となっていた、西紀南まちづくり協議会事務局長の北山透さんだ。以来、今に至るまで学生ボランティアと地元農家のコーディネート役をつとめている。

 「当時7名の学生が、このまま縁が切れるのはさびしい、お世話になった農家さんに恩返しがしたいと申し出てくれたのです。地元で声をかけたところ4軒が受け入れを申し出てくれました。しかし、ボランティアで来てくれると言っても、神戸大学がある六甲から篠山までは、往復2000円ほどかかります。農家の方たちは交通費ぐらい出したいといったのですが、サークルの設立メンバーがみな頑固でね(笑)、どうしてもお金はいただけないというから、だったらお昼は用意しましょう、ということになりました」

 学生サークルのため活動は基本的に土・日曜日・祝日。農閑期の週末は5~10名ほどが参加。秋の黒枝豆の収穫期は希望農家も増え、学生も50人前後が毎週末訪れる。

 毎週木曜日までに、北山さんがボランティアを希望する農家と希望人数を取りまとめ、学生側は参加人数を北山さんに伝える。北山さんは各農家へ振り分ける人数を決め、誰がどこに行くかは当日学生が決める。

 農家の希望と参加人数が合わないこともあれば、雨で予定の作業ができないこともあるが、希望農家が多いのに参加学生数が少ないときは、土日で振り分けて融通する。参加学生数の方が多ければ、大規模農家が多めに受け入れてくれる。雨で予定の農作業ができなくなれば、納屋の片付けに切り替えたり、今日はゆっくり話でもしようと歓談タイムになったりすることもある。「その辺は、農家さんが臨機応変にやってくれるので助かっています」(北山さん)。

 最初に学生ボランティアを受け入れた農家は4軒だったが、今では30軒になった。個人農家から法人化している大規模農家まで受け入れ先はさまざまだ。「畑から元気な声が聞こえてくる、楽しくやっているのが見えると、私たちも力がもらえますし、一生懸命やっている学生の気持ちが伝わり『あそこの家が手伝ってもらっているなら、うちもやってもらおうか』と、自然と広がっていきました」