2019.06.28
文=平林理恵
ビジネスシーンで精神的な不調を訴える人が増える中、農作業を通じて回復を目指す取組みが広がっている。順天堂大学とNTTコミュニケーションズが実施した実証実験では、農作業の前後でストレスホルモンを計測、半数以上で効果が確認できたという。体験農園での農作業を企業の福利厚生などに活用しようという動きもある。体験農園の事業化によって、農業者にも新たなビジネスチャンスが見えてきた。
週末のガーデニングや庭いじりが、疲れた心身のリフレッシュにつながると感じている人は少なくないだろう。また、医療や福祉の現場でも、精神疾患の改善やリハビリテーションなどを目的に園芸作業を行う「園芸療法」が積極的に導入されている。
植物や土に触れることで、人は癒される。にもかかわらず、これまではそれを示す数値的なエビデンスがなく、その効果は漠然としていた。
そんな中、順天堂大学とNTTコミュニケーションズ(以下NTTコム)は、2018年、農作業を行うことでストレス軽減を実現する「アグリヒーリング」の効果を社会実装する実証を開始した。
この実証実験が今、農業に新たな価値とビジネスチャンスを与えるものとして、また、ストレスを自分でコントロールする手法の創出につながるものとして大きな注目を集めている。
順天堂大学は、以前から唾液の成分を調べることで、脳内から分泌しているホルモンの量を量り、その増減によってストレスを検出するという極めて高度で特殊な技術を持っていた。これに着目し、園芸療法の効果測定とこのホルモン計測技術を組み合わせられないか――と提案したのが、順天堂大学大学院医学研究科の千葉吉史研究員だ。
千葉氏はもともと京大大学院で農業経済を専攻し、提案した当時は農業法人のコンサルティング業務を行っていたが、このプロジェクトの立ち上がりを機に、順天堂大大学院の研究員となった。
「2016年から、農作業の前と後で唾液の中のホルモンがどう変わるかという実験を行い、300例近くのデータをこれまでに取りましたが、ほぼ全ての事例でストレスが下がっています」と千葉氏は説明する。