グリーンツーリズムが日本の観光を変える

大田原ツーリズム・藤井大介社長に聞く

人口減少によって、全国の農村で過疎化が進んでいる。そんな中、豊かな自然に囲まれた農村を観光資源として活用し、農村で住民らと交流しつつ農作業などを体験するグリーンツーリズムが注目されている。そのモデルとなっているのが栃木県大田原市の第三セクター「大田原ツーリズム」の取り組みだ。大田原市では農家民泊(農泊)を核に、地域に根付いた日常の暮らしの体験や、自然を相手にしたアクティビティなどを盛り込んだ企画で、国内外の人を呼び込み、リピーターを増やしている。同社は今、農村観光によってこれまでの観光の常識を大きく変えようとしているという。グリーンツーリズムを成功させるポイントやこれからの観光のあり方について、同社の藤井大介社長に聞いた。

大田原ツーリズム 藤井大介社長(写真:山下裕之)
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栃木県の大田原市は「グリーンツーリズム」のモデルとして注目を集めています

藤井:おかげさまで農家民泊を核とした当社(大田原ツーリズム)のグリーンツーリズムと地域活性化事業は現在、大田原市の行政区を越えて、近隣の那珂川町、那須町、那須塩原市まで広がり、農家民泊の受入れ先農家は全部で170軒まで増えました。年間の観光交流人口は約9000人、宿泊数は約6000泊に達しています。それでも受入れ農家さんの数が限られているのと、一つの農家さんの受入れが過密にならないよう制限していることから、依頼をお断りしている状況です。さらに協力農家さんを増やす努力をしているところです。

どのような人たちが「農家民泊」を利用しているのでしょうか

藤井:農家民泊の利用者のほとんどは教育旅行です。そのうち5~6割が国内の子供向けツアー、1~2割が国内の学校・団体、あとの2割は台湾をはじめとしたアジア各地の学校の企画ツアーという割合です。

大田原市でグリーンツーリズムの事業を始めるきっかけは何だったのでしょうか。

藤井:私はもともとメーカーに勤めていました。その後、脱サラして地域づくりをする会社を起業し、それから3年ほどたった頃、栃木県の大田原市から地元の交流人口を増やしたいというご相談を受けたことが直接のきっかけです。

大田原ツーリズムが設立された2012年は、グリーンツーリズムという言葉がそれほど一般的ではありませんでした。なぜ農村を観光資源として活用しようと思ったのでしょうか

藤井:地域を農業から活性化したいという強い思いが根底にありました。他の地域から人を農村に呼び込んで、そこで長く過ごしてもらう農村観光はそのための有力策であり、一つでも良いので、一つの仕掛けで地域活性化の糸口が見つけられればという思いがありました。

当時から普通の農村であっても観光資源になるという確信はありましたか?

藤井:そうですね。農村に滞在する理由をつくるのはそれほど難しいことではないと思っていました。地元の人にとっては「何にもない田舎」かもしれませんが、都会の人にとっては自然の宝庫です。季節によって色合いを変える山や清流、田んぼや畑が広がる色鮮やかな田園風景が貴重な光景です。その豊かな自然の中で、川で遊んだり、山登りをしたり、農作業を手伝ったりして地域の暮らしを体験することにわくわくするんです。地元の人にとってはただの「作業」でしかない土手の草刈りも、得難い体験ですよね。大事なのは場所ではなく目的なのです。

 たまたま大田原市は広い田んぼや畑が広がる農業地域で、代々農業を営む家庭が多いことから農家民泊や農業体験を打ち出しましたが、その土地ごとに何かしらの特長や魅力ある資源があるはずです。その土地の強みを生かして企画コンテンツに生かせば、人を呼ぶことはできます。

 観光は、コンテンツを作ってプロモーションをかけることで作ることができます。全国どの地域でも、その地域にこだわって徹底的に努力すれば、人を呼び寄せることはできると私は思っています。