玄米ブーム!? 巨大胚芽米「金のいぶき」に注目集まる

金のいぶき代表取締役社長の尾西洋次氏に聞く

まだ生産量は少ないが、玄米品種として注目を集めている米がある。その名前は「金のいぶき」。宮城県古川農業試験場で生まれた品種で、胚芽部分が通常の米の3倍にもなる巨大胚芽米だ。関係者の間では数年前から知られた存在だったが、健康食としての玄米が改めてクローズアップされていることもあり、この2、3年で一般市場での存在感を増している。宮城県では同県が誇る銘柄米のササニシキ、ひとめぼれ、だて正夢と並ぶ県の顔として位置づけ、キャンペーンを進める。この品種を見い出し、普及に尽力してきた株式会社金のいぶき代表取締役社長の尾西洋次氏に、そもそもの経緯と現状、今後について聞いた。
株式会社金のいぶき代表取締役社長で一般社団法人高機能玄米協会副会長の尾西洋次氏(写真:高山和良)
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最近、いろいろなところで「金のいぶき」という玄米品種名を見聞きするようになりました。そもそもどんな経緯でこの品種に注目することになったのでしょうか?

尾西:最初は、宮城県古川農業試験場で開発者の永野邦明先生(現在は東北福祉大学感性福祉研究所特任教授)にお会いしたことです。私は当時、尾西食品という非常食の会社を経営していまして*、その事業所が古川農業試験場から歩いて行けるような近い距離にありました。

*2013年から亀田製菓のグループ会社に。

 私が玄米に手を出した理由は単純でして、非常食を扱っていたので、常食も取り扱いたかったのです。非常食は万が一の時のための商品で、お客様にお渡しした時に「食べないでください」と言わなければなりません。作っている側としてはせつないところがあります。ですから、私は常々、常食をやりたいという思いを持っていました。

 当時の尾西食品では、発芽玄米の商品を取り扱っていて、健康食品のファンケルさんや他の何社かで「日本発芽玄米協会」(現・一般社団法人 高機能玄米協会)という組織を作り、発芽玄米に適した品種がないか探していました。その流れの中で、永野先生が東北胚202号という品種を持ってこられたんです。胚芽が大きくて、玄米として食べられて、かつ、もち系のものを開発されていた。普通のお米の胚芽は3パーセントぐらいしかないんですが、この品種は12パーセントもある超巨大胚芽米だったんです。

それを見てどう思われたのですか?

巨大胚芽米「金のいぶき」。胚芽部分が通常の品種(右)の3倍ほどもある。(写真提供:金のいぶき)
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尾西:その時は、見てくれが悪いので正直「使えない」と思ったんですよ。お米の形が貧相で、胚芽が大きくてかっこ悪い。だから、2年ぐらいほったらかしにしてしまいました。今から考えると永野先生には誠に申し訳ないことをしました。

 その後、米の需要を伸ばしていくためにどうしたらいいかということで、いろいろ調査した時に、植物性油脂が伸びているということで東北胚202号に着目しました。ぬかの量が普通の倍取れるので、米ぬか油の原料にしようとして米油プロジェクトを作ったんです。「水田の油田化計画」なんてことを考えました。こちらは3年ぐらい一生懸命やりましたが、経済的には成立しませんでした。

 たまたま何かの会議で永野先生と同席して、自分で食べてもいないのに「東北胚202号は、見てくれ悪いからまずいんでしょ」というようなことを言ってしまったんです。そうしたら、怒られまして。「そんなことありません。食べてみてください」と。実際に食べてみたら、「何だこれ?」というぐらいおいしかった。普通に炊けて食べやすいし、甘くておいしい。胚芽が大きいので、ゴマみたいに食感がプチプチしている。驚きました。そこからの変わり身は早かったんです。米油プロジェクトを急遽中止にして、「主食でいく」と宣言して切り替えました。

『金のいぶき」(東北胚202号)を開発した永野邦明氏。現在は東北福祉大学 感性福祉研究所 特任教授。 2019年3月まで宮城県古川農業試験場 場長。「ひとめぼれ」をはじめ多くの品種育成に携わった。写真は古川農業試験場時代のもの。(写真提供:金のいぶき)