カマキリとテントウムシで無農薬レモンを作る!?

日本農業賞・大賞に輝いた「地域特産物の作り方」とは

今年2月、日本農業賞「食の架け橋の部」で大賞に輝いたのが、愛知県豊橋市で天敵昆虫を使いレモンの無農薬栽培を実践する河合浩樹さんだ。日本農業賞は、農業技術や経営面で優れた実績を挙げた農家や団体に贈られる賞で、その大賞ともなれば国内最高レベルの証しになる。河合さんは、カマキリやテントウムシなど、害虫にとっての天敵昆虫を駆使して無農薬でレモンを生産する独自の栽培法でよく知られている存在だ。しかし、今回の受賞は、生産技術だけでなく、無農薬レモンを核に異業種の人たちを巻き込み地域の食ビジネスを立ち上げたり、優れた農産物を生産できる腕利きのプロ農家集団を作ったりしてきた実績が評価された。河合さんの取り組みは、地域と農業の振興を考える関係者にとって絶好のお手本になる。

河合果樹園のハウス内で、カマキリやテントウムシなど30種類以上の天敵昆虫を駆使して栽培されているレモン。(写真提供:3点とも河合浩樹さん)

 毎年2月に発表される「日本農業賞」は、国内農業関係者にとって最も権威ある賞と言えるだろう。3つの部門ごとに大賞と特別賞が選ばれ、特に大賞はそれぞれの分野で国内最高レベルの取り組みを実践している農家や団体の証しだ。受賞者はNHKの全国放送で何度も取り上げられるので、番組や記事を見たことがあるという人は多いのではないだろうか。

 賞を主催するのは、JA全中(全国農業協同組合中央会)、JA都道府県中央会(都道府県農協中央会)とNHK(日本放送協会)。「個別経営の部」「集団組織の部」「食の架け橋の部」という3部門に分け、優れた取り組みを実践する農家・団体を表彰している。

 そうした受賞者の中で、今回、ひときわ異彩を放つ生産者がいる。その人こそ「食の架け橋の部」で大賞を受賞した河合浩樹(かわいひろき)さんだ。河合さんは、農業生産が盛んな愛知県豊橋市の東、静岡県境近くで果樹園を営むみかん農家の5代目。河合さんはこの地でそもそもの家業であるみかんのほか、カマキリやテントウムシなど、害虫を捕食する天敵昆虫を使って無農薬でレモンを生産している。無農薬レモンの生産者はほかにもいるが、30種類以上もの天敵昆虫を自在に駆使する農家はほかに例を見ない。関係者の間では“知る人ぞ知る”異色の柑橘(かんきつ)農家なのだ。

 「虫たちは仕事のパートナー。私は彼らを外部採用したり配置転換をしたりしながら活躍してもらっています」と笑う河合さん。カマキリやテントウムシを部下として使って無農薬レモンを作る……、なんとも驚きの生産方法だが、今回、河合さんが大賞に選ばれた理由は、実はそのユニークな生産手法だけではない。そうして作った無農薬レモンをベースに異業種の人たちや同業者農家たちと連携してきた実績を評価されてのことなのだ。

ハウス内で「ボックス栽培」という方法で育てるレモンを前に語る河合浩樹さん。「ボックス栽培」は、木を地面に直接植えるのではなく、鉢に植えて根の広がりを制限しながら育てる手法。樹勢は弱くなるが、果実生産をする上で様々なメリットが得られるという。(写真:高山和良)