こうしたみかん発酵茶の機能性を広くアピールするため、研究開発と並行して目指しているのが「機能性表示食品」の届出である。
ご存じの方も多いだろうが、機能性表示食品はアベノミクスの規制緩和政策の一環として2015年4月に導入された制度で、それ以前は食品の機能をアピールできるのは「特定保健用食品(トクホ)」や「栄養機能食品(主にサプリメント)」に限られていた。このうち1991年に定められたトクホ制度では、最終製品を用いた臨床試験で、有効性や安全性を国の審査において立証しなければないため、その取得には多大な時間や費用が必要だった。一方、新たにスタートした機能性表示食品制度では、原則的に消費者庁への届出だけですむようになっているため、健康食品を手がける企業とっては、科学的根拠に基づいた食品の機能や効能を比較的手軽にアピールできるメリットが生まれた。
| メーカー | 商品名 | 表示 |
|---|---|---|
| アサヒ飲料 | カラダカルピス | 体脂肪を減らす |
| 味の素 | 毎朝ヒスチジン | 疲労感軽減と頭の冴えに |
| 伊藤園 | 日本の健康 玄米茶 | おなかの調子を整える 脂肪の吸収を抑える |
| 江崎グリコ | GABA | 事務的な作業による一時的・心理的なストレスを低減する |
| カゴメ | カゴメ野菜ジュース | 血圧が高めの方に |
| キリンビバレッジ | キリン サプリ レモン | 一時的ストレスを軽減 |
| 日本水産 | 毎日これ1本 EPA+DHAソーセージ | 中性脂肪を下げる |
| 雪印メグミルク | ガセリ菌SP株 ヨーグルト | 内臓脂肪を減らす |
| 制度開始 | 機能性表示食品 | 特定保健用食品(トクホ) |
|---|---|---|
| 制度開始時期 | 2015年4月 | 1991年9月 |
| 届出・許可件数 | 1374件 | 1053件 |
| 国の審査 | なし(※) | あり |

この制度を所管する消費者庁食品表示企画課の久保陽子さんによると、2018年9月現在、機能性表示食品の届出を受理したのは1374件にのぼり、そのうち最も多いのは加工食品、次いでサプリメント、生鮮食品の順になっているという。また、商品パッケージに具体的な健康効果を表示することによって、その販売実績を大幅に向上させた企業も決して少なくない。たとえば、カゴメ経営企画室広報グループの北川和正さんによると、「消費者庁への届出により2017年10月から“血圧が高めの方に”との機能性表示を行った『カゴメ野菜ジュース』の2018年1~6月の販売金額は、前年同期(2017年1~6月)と比べて約70%増となった」という。機能性表示食品の2018年の市場規模は、前年比15.1%増の1975億円になるとマーケット調査会社の富士経済は予測している。
2014年から本格化したみかん発酵茶の共同研究は、すでに商品化に向けた最終段階に入りつつあると宮田さんは語ってくれた。
「みかん発酵茶の商品化については、平成29年度(2017年度)から31年度(2019年度)の3年間、農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)の経営体強化プロジェクトに認定されています。このプロジェクト中では、地元の農家の所得を2割向上させるほか、試験終了後1年以内に機能性表示食品の届出をすることになっています。つまりは研究開発で終わることなく、事業化することを見据えているのです」
事業化に向けて、長崎県農林技術開発センターなどの指導によって農家には一次加工品であるみかん発酵茶の製法を習得してもらっている。並行して「みかん発酵茶」の効果を長崎県立大学教授の田中さんらが実証して論文にする。一方、この経営体強化プロジェクトには一次加工品の流通を担当する企業と製品の生産・販売を担う健康食品メーカーも参画しており、新商品の開発も具体的なものとなっている。そして、こうした商品化へ向けた一連のプロセスの中で重要な役割を果たすのが、商品の魅力を消費者へとアピールする機能性の表示なのである。
「現在、われわれが行っているのは血流改善をテーマにしたヒトでの実証実験です。これにより実際の商品化に際しては、冷え症の改善、肩こり改善、疲労回復といった消費者にもわかりやすい機能を表示できるようにしたいと思っています」と田中さんは語る。
宮田さんによると、製品化への具体的な流れとしては、2019年に機能性表示食品の届出をすませ、翌2020年には新商品の発売にまで漕ぎ着ける予定だという。
気になるのはみかん発酵茶の味だが、さわやかな紅茶の香りがすばらしく、人間の感覚を用いて製品の品質を判定する「官能試験」においても高い評価を得ている。これまでに「五島つばき茶(椿の葉+茶葉による発酵茶)」、「ワンダーリーフ(ビワの葉+茶葉による発酵茶)」という長崎県の特産品を用いた発酵茶で人気商品を生み出してきた田中さんと宮田さんの2人も、口を揃えて「苦みの強い三番茶から飲みやすく、ものすごくおいしい発酵茶を生み出すことができた」と太鼓判を押す。
そして、機能性表示食品の届出が受理されれば消費者へのアピール度もさらに高くなるだけに、新商品の登場には大きな期待と注目が寄せられている。長崎県の農業の活性化にもつながる新たな発酵茶の発売が待ち遠しい。