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アフリカの現状を知ろう

今回お話を伺う宍戸健一さんは、国際協力機構(JICA)きってのアフリカ通です。アフリカ大陸をまたにかけて、長年日本からの国際協力を束ねて、現地に根付かせる仕事に従事されてきました。

実は、私もお世話になりました。
3年半前の2009年夏、スーダンを取材したときのことです。

当時のスーダンはまさに南部スーダンが国家として独立する寸前。長年の内戦に一区切りがつき、治安面ではある程度安定してきたものの、インフラが破壊され、さまざまな社会システムが機能していない状態でした。

新しい国家ができる直前の模様を私はレポートしました。このときさまざまな取材先のアテンドに尽力いただいたのが、当時、JICAのスーダン事務所の所長さんだった宍戸さんでした。

2013年、日本で開催される第5回アフリカ開発会議(TICAD)に向けて、日本とアフリカを行ったり来たりと大忙しの宍戸さんに、アフリカの市場の今と、日本からの国際協力の現状について、お聞きいたしましょう。

池上アフリカの経済は、いまどんな段階に来ているんでしょうか?

宍戸日本におけるアフリカのイメージは、エジプトなど地中海に面した北部アフリカを除くと、今まで「経済的なパートナー」というイメージからは程遠く、

内戦が頻発する。
危険が多い。
風土病も怖い。
インフラが整っていない。
労働者の質が低い

……というものでした。 けれどもこのイメージのアフリカは20世紀までのものです。例外はありますが、多くのアフリカ諸国では21世紀に入って大きく変わってきています。

政治が安定し、インフラが徐々に整い、インターネットが浸透し、携帯電話が普及し、経済が急速に発達し、ビジネスチャンスが拡大しています。

60年代の日本、90年代の東南アジアとそっくりです

池上ちょっと前の東南アジアのようですね。

宍戸まさにその通りです。さまざまな統計を見ると、現在のアフリカは、1990年代半ばに急成長した東南アジアと非常に似た状況にあります。

池上東南アジアを含む東アジアは、その時期に急激な成長を遂げましたね。世界銀行は1993年に『東アジアの奇跡』というレポートをまとめたくらいです。

宍戸具体的にいうと、農村部から街に出てきた若者が頑張って働くと、バイクと携帯電話を持つ生活が手に入る。これが今のアフリカのイメージですね。とはいっても、現金一括払いでは購入できる人はほとんどいません。バイクという交通手段と、携帯電話という通信手段を一般の人たちが手に入れるには、分割払いが必須の仕組みです。南アフリカなど一部のアフリカ各国では庶民向けのローンを導入が進み、より多くの人たちがバイクと携帯電話を自分のものにすることができました。

池上なんだか昔の日本を思い出しますね。ローンによるクレジットである月賦は、戦後日本の高度成長時代に導入され、庶民がテレビや自動車を手に入れる大きな助けになりました。

宍戸たしかに!自動車や、家電、ステレオなどは「月賦払い」が基本でしたね。いっぺんに10万円を支払うことはできないけれど、毎月5000円ずつ20 数回に分けてならば払える、という人たちが、日本の経済成長を支えました。今のアフリカでも同じようなことが起きているわけです。

池上21世紀のアフリカは、1990年代の東南アジアにそっくり。1990年代の東南アジアは、1950年代から60年代にかけての日本にそっくり。つまり、今のアフリカは、高度成長期直前の日本とそっくり、というわけですね。

そう考えると、急にアフリカに親しみがもてるようになりますね。しかも、日本人の知恵を活かすチャンスも出てきそうです。なにせ、私たちが50年前経験したことを応用できるかもしれないわけですから。

宍戸その通りです。だから、アフリカ各国は、日本の協力を心待ちにしています。国際協力の現場に居続けた私の実感です。

ただ、いまアフリカが必要としているのは、いわゆる「援助」ではなく、「投資」だ、ということです。2005年前後に、世界各国からアフリカ大陸へのお金の流れが大きく変わりました。なんとそれまで中心だった「援助」の総額を、ビジネスベースの「投資」の総額が上回ったのです。

池上つまり、アフリカは援助の対象ではなく、ビジネスの場になっているということですか?

宍戸はい。アフリカには54の国があり、まだまだ援助が必要な国もたくさんあります。けれどもアフリカ全土で見ると、支援のステージから、投資のステージへ、つまり経済成長が始まっている国が多数を占める、といえるわけです。

池上アフリカは世界からの援助で貧困から脱出しようとしている国ばかり、という認識を改めないとなりませんね。

それにしても、アフリカが急速に経済成長し始めた理由は何でしょうか?

石油を中心に豊富な資源が成長の起爆剤に

宍戸まず、豊富にあった地下資源の採掘と開発が、政治の安定に伴いようやく軌道に乗り始めた、という点があります。

モザンビークやタンザニアでは最近豊富な天然ガスが見つかっています。両国の年間生産量は日本での消費量の半分相当の規模になると見込まれており、すでに日本企業が開発の権利の一部を得ています。

かつて私が勤務した頃は、エネルギー資源のない国だったガーナでも、21世紀に沖合で石油が見つかりました。2010年から石油の生産が開始され、今や高い経済成長率に沸いています。

池上ガーナで石油ですか。日本人のイメージでは、チョコレートの原料であるカカオ豆の産地、というイメージしかありませんでしたが、認識を改めなければいけませんね。そういえば、ガーナのみならず、ナイジェリアなどは以前より世界屈指の産油国であり、アフリカ西海岸では石油がよく見つかる印象があります。

宍戸実は2012年に入って、東海岸のケニアのトゥルカナでも石油が見つかりました。また長年貧困に喘ぎ、無政府状態にあったソマリアのプントランドでも油田が発見され、争奪戦の様相を見せ始めています。アフリカの東海岸は、インドや東南アジアなどの新興国ともインド洋を隔てて距離が近いので、彼らからの注目も集めています。

池上インド洋に面した東海岸諸国では、インド人が目立ちますね。

宍戸インドの商人、「印僑」ですね。古くからインドの商人たちは、盛んにインド洋に面したアフリカ東海岸諸国と貿易を繰り広げてきました。その歴史もあって、今もインドの存在感が大きいのです。これからアフリカ東海岸が成長するのに伴い、インドとの関わりもより強固になっていくのではないでしょうか。

池上アフリカ南部はいかがでしょう?

宍戸アフリカ南部は石油こそありませんが、レアメタルなどの資源が豊富です。ダイヤモンドも元々有名ですね。日本の鉱物資源探査を行う政府機関が、ボツワナにプロジェクト事務所を設けて、日本人が常駐しています。レアメタルは日本の産業の鍵でもありますから、ボツワナや南部アフリカ諸国に対して探査技術の支援などを通じてと良好な関係を保ちつつ、共に成長できる道を模索しています。

池上アフリカ諸国は潜在的な資源大国なので、中長期的な視点からの関係構築を図ろうということですね。

宍戸その通りです。これまでの様々な国際協力の成果でもあると思います。

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