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日本企業がアフリカで勝つ法

池上

うかうかしてられませんね。日本企業に勝ち目はあるでしょうか?

宍戸

例えば爆発的に普及している携帯電話と、より高度なシステムとセットにしたビジネスなども可能性があると思います。既に、英国の支援で、携帯電話を使った送金サービス・システムが使われています。アフリカには、まだコンビニもATMはもちろん銀行も満足にない地域が多いのです。このため、お金の送金や決済にとても苦労するのですが、今注目されているのは、携帯電話を利用した送金システムです。日本では必要ないシステムですが、発想さえあれば、技術的には優位性は十分にあると思います。

それから橋やトンネルなど日本の土木技術は、インフラが未整備のアフリカでは活躍の場がたくさんあります。ただ道路を通すだけならば、他国の技術でもまかなえますが、橋やトンネルとなると、山川が多く降水量も多い日本で鍛えられた技術が先行しています。

さらに廃棄物ビジネスも有望ですね。資源開発に伴い、環境汚染を招くさまざまな廃棄物が出てきます。こうした廃棄物の処理や排水の浄化などは、日本企業のお家芸です。アフリカで資源開発が進めば、必然的にこうした技術のニーズも高まるわけです。

池上

電気や水道に関するインフラはいかがでしょう。

宍戸

電力不足はアフリカ開発の最大の課題です。ただ、今、日本企業がアフリカでの通常の火力発電所の建設工事の入札で落札できるかというと、なかなか難しいのが現状です。

池上

なぜですか。

宍戸

火力発電所に関するプロジェクトは、韓国をはじめとする新興国が受注するケースが増えています。やはり価格競争で負けてしまうんですね。技術的にも天井を打っている、ということもありますし。

一方で、日本が得意とする発電への期待もあります。たとえば地熱発電がその例です。アフリカの中でも、エチオピアとケニアとタンザニアは地熱発電のポテンシャルが高いとされていて、開発が進むと、ケニアでの電力消費量の3分の1は地熱でまかなえるという試算もあります。

池上

ケニアの地熱発電は、2013年2月に現地取材をする予定です。

宍戸

ぜひ、その様子をこのシリーズでご報告ください。

それから、インフラと言えば、水道です。日本の技術力が高く評価されている分野ですが、実はアフリカでの国際協力が思わぬ効果を生んでいるそうなんです。

例えば、横浜市水道局には、職員をアフリカへ派遣して、技術指導を行って頂いています。その横浜市ではもう新しい浄水場を作ることはないし、既存の水道網を大規模に作り替えることもありません。日常のメンテナンスが日本での仕事の中心です。

けれどもアフリカに行くと、まさにゼロベースで水道システムを立ち上げなければいけない。条件も日本に比べると劣悪。やることが無限にある。だからこそ、若い水道局の職員たちにとってものすごい「勉強の場」になるそうなんです。

国際協力が同時に技術研鑽と技術継承の場にもなる。まさに一石二鳥です、と横浜市の方から伺いました。

池上

水道技術で思い出しましたが、3年前にスーダンを訪れたとき衝撃的な風景に出くわしました。スーダンの首都ハルツームは砂漠の真ん中にある町なのに、妙に緑が多いんですね。街路樹が青々としているので、ここで働く日本人に「緑が豊富ですね」と話したら、「水道管から水が漏れているからですよ」って(笑)。

宍戸

そうそう! 地下に埋められた水道管に沿って木が生えているんです。水漏れしてますからね。水道技術の協力が進めば、スーダンの水漏れ街路樹はなくなるでしょう。

池上

あの街路樹がなくなるのは、ちょっと寂しいですね(笑)。

日本が牽引した90年代のアフリカ援助、TICAD

池上

日本政府は、長年「アフリカ開発東京会議(=TICAD)」を開催しています。一般の方にはちょっとなじみがないかもしれませんが、2013年6月には5回目のTICADが開催予定ですね。

そもそも、なぜ日本がアフリカ開発をテーマとした国際会議を主催するようになったのでしょうか?

宍戸

きっかけは1990年代初頭の冷戦の終結と欧米の「援助疲れ」があります。1993年に第1回TICADが開催されたのですが、冷戦が終わって、東西両陣営が、アフリカ諸国を自陣営に取り込むための援助をする必要がなくなり、熱が冷めたのと相前後して、日本が主導するかたちでこの会議はスタートしました。

池上

納得です。たしかに80年代までの途上国援助の裏には、米ソ東西陣営による冷徹な陣地合戦が背景にありました。時には戦争や内戦までがセットになっていました。アフリカの援助も例外ではなかったわけですね。それが冷戦の締結で、アフリカを援助する名目がひとつなくなってしまった……。

宍戸

その通りです。ただ、90年代初頭の時点でアフリカの抱える問題は解決するどころかむしろ深刻化していました、東西の色分けもなくなり、内戦は頻発し、貧困や飢饉などがアフリカ大陸を襲っていました。このままアフリカを世界の潮流から取り残してはならない。そこで日本が手を上げて、国連などと協力しながらアフリカの開発をアフリカ各国と考えていく場を設けよう。それがTICADの始まりです。93年以来5年に一度開催され、2013年は20周年、5回目のTICADとなります。

池上

一方で、TICADとそっくりの会議を開催している国があります。他ならぬ中国です。アフリカ各国の閣僚らを北京に招き、アフリカサミットと称し、アフリカ進出の地歩を固めていますね。なんだか、おいしいところを相当持って行かれているような感じも受けますが……。

宍戸

ご指摘の通りで、中国政府は、TICADによく似た会議を2000年から主催しています。あちらは3年に一度、アフリカ各国の閣僚を招いています。しかも、2012年の会議では「向こう3年間で200億ドル」の援助および投資を約束しています。日本が前回の2009年のTICADで表明した「5年で40億ドルの円借款」と比べるとまさにケタ違いの規模です。

池上

中国など新興国は、アフリカの経済に相当食い込んでいますね。

宍戸

TICADの開催によって、アフリカ各国と日本の関係は確実に深まりました。そもそも、1993年以前からさまざまなかたちで日本はアフリカにインフラ整備や医療や教育の普及などの国際協力を地道に続けています。この積み重ねでようやくアフリカが安定してきたところを、中国がおいしいところを持っていこうとしている、という感はありますね。

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