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日本の知恵とアフリカの資源、お互いの長所を生かしあう

池上

気になる日本のアフリカ進出はどんな具合ですか?

宍戸

日本企業にとって、アフリカの天然資源は貴重です。南スーダンの石油パイプライン建造のため、日本の大手企業が調査を続けていますし、ケニアの地熱発電開発では日本企業が、海外企業としのぎを削っています。

池上

まずは、成長著しい資源開発に関連する日本企業が確実に進出し始めているわけですね。ほかの業種はいかがですか?

宍戸

アフリカで製造業が発達しているのは、80年代から世界中の自動車メーカーの生産拠点となっていた南アフリカなど、アフリカ大陸の南部の数カ国のみ。他の国々では、まだ製造業が伸びるには少し時間がかかるかもしれません。

製造業が発達しておらず、資源にも恵まれていない国々では、農産物を原料とした産業に活路を見いだそうとしています。

タンザニアやウガンダ、ザンビアなどでは、森林や農産物を使ったバイオ燃料の製造への取り組みが、海外企業の力を借りながら始まっています。農産物では、すでに先進国でも活用されているトウモロコシなどがバイオ燃料の原料となります。もちろん生産のための技術や機械は海外頼みです。

池上

それにしても、中国や韓国と比べると、アフリカへの進出、日本はまだまだ消極的、という印象があります。国際協力に関していうと、「なぜ日本が遠いアフリカを支援する必要があるのか」という疑問を持つ人もいるでしょうね。

宍戸

アフリカの成長はまだ始まったばかりです。そのため、いくら投資しても投資効果がすぐに見えるわけではありません。また、地理的に遠いことも相まって、現地の情報がとても少ない、ということも、アフリカへの国際協力や経済進出の意義に対する理解を生みにくくしていますね。

私自身がアフリカの国際協力の現場を歩いてきたので、日本企業に、そして日本の皆さんにアフリカの実像、可能性について、もっともっと豊富で正確な情報発信をしなければ、と認識しています。

池上

宍戸さんのお話をうかがうと、戦後、日本が東アジアと東南アジアの各国を金銭的にも技術的にも相当な支援をしたことを思い出します。

こうした国際協力は、「カネの無駄遣い」「日本にそんな余裕はない」と否定的に報じられることも少なくありませんでした。

けれども、各国が経済的に離陸するまで日本が責任を持って援助した結果、ASEAN諸国と日本とは戦争を超えて良好な関係を築くことができ、また「東アジアの奇跡」と呼ばれる驚異的な経済成長を促すことができました。

相手国にとっても日本にとっても素晴らしい成果がでました。まさに数十年単位で見れば、ちゃんと投資効果が出たわけです。

アフリカでも同じことがいえそうですね。

宍戸

本当にそうなんです。数年単位でなく数十年単位でアフリカと一緒に成長しようという発想が、国際協力を成功させるための非常に重要なポイントになります。

そもそもアフリカと日本は、相互補完関係にあります。

日本には、技術があります。マネジメント能力もありますし、さまざまな優秀なソフトも持っています。

アフリカには資源があります。広大な土地があります。そして巨大な市場があります。両方がタッグを組めば、とても大きな効果を産み出せるはずなのです。

池上

日本の知恵と技術をアフリカで活かせば、その恩恵は必ず日本にも還ってくるということですね。

車を買える中産階級市場が伸びている

宍戸

話はちょっと変わりますが、興味深いのが、2008年にアメリカで起きたリーマンショックです。2009年にはヨーロッパではギリシャに端を発した経済危機が起りました。

かつては、ヨーロッパがくしゃみをしたらアフリカは風邪を引くと言われるくらい、アフリカは先進国の経済状況の影響を大きく受けていたのですが、実は今回のリーマンショックやユーロ危機の影響を、アフリカはさほど受けていないのです。

池上

なぜ、あれだけの経済危機の影響を受けなかったんでしょう?

宍戸

先ほどご説明したように、新興国からの投資が相対的に大きくなったことが大きいと思います。今、アフリカ各国の首脳クラスははっきりと「援助より投資が欲しい」と言っています。

「新植民地主義」と呼ぶアフリカの人たちも居ますが、欧米が利益誘導を狙って、援助とセットで欧米的な制度の導入を強要してきたこと、への反発でもあると思います。アフリカは、独立から半世紀50年を経て、今明らかに、欧米の植民地支配から自立したと感じているのだと思います。

実は、ここに日本のビジネスチャンスがあります。とはいえ、アフリカはまだまだ問題を抱えています。先進国の協力が必要なのです。

そこで日本です。日本はヨーロッパのようにアフリカを植民地にした過去もなければ、アメリカのようにアフリカの人々を奴隷にした歴史もありません。

日本は過去にアフリカに対して嫌われるようなことをしてきません。であるがゆえに、今アフリカは、アメリカでも、ヨーロッパでも、ましてや中国でもなく、むしろ頼りにされていると考えていいと思います。

池上

日本だからこそ期待されている業種・業態はありますか。

宍戸

今、消費市場で注目すべきは、アフリカの中産階級です。成長著しいアフリカでは、中産階級の所得水準が凄まじい勢いで上がっています。高級車や携帯電話などをごく普通に持つ層が生まれつつあります。ここは狙い目ですね。

池上

アフリカというと、すぐにBOPのような低所得市場の拡大を思い浮かべてしまうのですが。

宍戸

もちろんそこも有望ですが、日本企業が得意な分野と考えると、むしろこの中産階級向けの商品を届けてあげる、というのは大きなビジネスチャンスにつながる、と思っています。

池上

BOPというのは、ベース・オブ・ピラミッド。つまり、経済的にピラミッドの一番下にいる低所得者層のこと、そしてそこをターゲットにしたビジネスのことですね。しかしもはや、アフリカビジネス、イコール、BOPではないと。

宍戸

ある日本の自動車メーカーのトップが「アフリカへの投資が増え、産業が栄え、富裕層が増えれば、より高い自動車が売れるはずだ」と話していましたが、まさにその通りです。

これは自動車に限った話ではありません。食品や医薬品などのメーカーも、大きな関心を持って今アフリカを調査しています。

アフリカの経済というと資源ばかりが注目されがちですが、BOPのみならず消費市場としてもっともっと注目すべきだと思います。これからの数十年、一番人口が増加する地域でもあります。すでに欧米企業は盛んに進出していますし、韓国や中国の企業も目立ち始めています。乗り遅れてはいけないですね。

池上

「今のアフリカは高度成長期直前の日本」という先ほどのたとえを援用すると、高度経済成長期に日本でどんなものが売れていたのかを分析すれば、アフリカで売れるものが必然的に見えてくるかもしれません。50年代後半には「白黒テレビ、冷蔵庫、洗濯機」の三種の神器が、60年代半ばには「カラーテレビ、カー(自動車)、クーラー」の3Cが、消費市場を牽引しました。

宍戸

携帯電話など当時なかったものも売れていますが、基本的には同じような感じですね。まずは基本の家電製品を揃え、若者はバイクを、中産階級は自動車を移動手段として求める。ある企業の方がおっしゃっていたのは、過去のアジアの経験では、一人あたりのGNPが1000 ドルを超えると、急速にバイクが普及するというのです。今まさに多くの国がその1000ドルを越えようとしています。

池上

そして日本がそうだったように、アフリカでも、経済が発展していくと、それぞれの段階で求められる製品が変わってくる。中間層が増えると、新しい消費が生まれてくる。さらに豊かになるとさらに新しいマーケットが広がる。その段階に合わせて企業も戦略を変える必要がありますね。

宍戸

そうですね。中産階級向けのビジネスは、韓国と競合することは間違いがありません。携帯電話も、かつては北欧のノキア製が主流を占めていましたが、今は圧倒的に韓国のサムスン製が席巻しています。

池上

3年前にウガンダを訪れたときはまだノキア全盛だったのですが。時代が移り変わるのは本当に早いですね。たしかサムスンは、ライト付きの携帯電話をヒットさせたんですよね。アフリカでは、電気が満足に来ていないところもまだまだあって懐中電灯代わりに携帯電話を使える、というニーズを掘り当てた、と聞きました。

宍戸

実はその機能も、もともとはノキアの携帯電話についていたんですけどね(笑)。

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