このページのコンテンツには、Adobe Flash Player の最新バージョンが必要です。

Adobe Flash Player を取得

道路整備のハードの改善、税関などソフトの改善を両輪に

池上

これまでの日本のアフリカへの国際協力は報われていないのでしょうか?

宍戸

そんなことはありません。「継続は力なり」は国際協力において絶対欠かしてはならない基本です。

実際、アフリカで日本の商社の方とお話をすると、現地に張り付いて地元と付き合い、投資を止めず、事業を続けることの重要性を気づかされます。商社の方によると、90年代後半の不況時にアフリカの支店を閉じてしまった同業他社がいるそうですが、今になってアフリカに進出しようにもすでに基盤がなくなり、ビジネスチャンスの情報を取るのも苦労しているとのこと。国際協力以上に、企業がビジネスのためにアフリカに根を下ろそうとするには継続的な先行投資が欠かせないというのです。

池上

ただ、足りない部分もあった……。

宍戸

もちろん、日本のアフリカへの国際協力や投資については、反省すべき点もありますね。大きなリスクをとる決断が迅速にできなかったために、政府による国際協力も企業による投資も、いささか腰が引けていた感があります。アフリカでは後発の中国は、追いつくためにはなりふり構わずやるしかありませんので、それこそ国を挙げてアフリカ市場をこの手でつかもうとしました。

日本でも政府が企業が積極的にアフリカ進出できる環境をつくる必要がありますし、企業にもより情報を良く分析して、時に大胆にアフリカに向かってほしいと思います。

池上

日本企業の進出を妨げている要因に、アフリカ各国のインフラの未整備もあるのではないでしょうか。これも3年前の記憶ですが、南部スーダンのジュバでは、道路は未舗装で穴だらけ。車もゆっくりでないと進めません。電気も満足に通っていない。インフラ整備なしに近代的な成長は見込めないな、と感じました。

第二次世界大戦後、アメリカから日本へ視察に来たワトキンス調査団は、帰国後、「日本には道路がない」と報告をしたという逸話が残っています。「あるのは道路予定地だけだ」と。つまりまったく舗装されていない砂利道だけだった。その後、日本はものすごい勢いで道路を整備し、それが日本全国を結ぶ物流網として機能し、経済成長の後押しをしました。

アフリカのインフラ整備は、どんな段階でしょうか?

宍戸

アフリカの経済成長を促す上で、物流インフラの整備は喫緊の課題です。

なにせアフリカ大陸は広い。内陸国はどうしても輸送上のハンデを負っています。沿岸国の港にどうやって迅速にたどり着くことができるのか? アフリカの成長は道路整備を筆頭に物流インフラの充実がひとつカギを握っているといえますね。

物流インフラが未整備だと、さまざまなコストが場所によって変わってきます。私が勤務した2009年頃の調査だと、、たとえば学校を新たに建設する場合、内陸国である南スーダンの首都ジュバと、インド洋に面したケニアの首都ナイロビでは、建設コストに5倍もの差がありました。もちろん後者のケニアが圧倒的に安いわけです。ジュバでちゃんとした建物を造るには、建築資材をケニアの港から陸路で運ばねばなりません。なんと2000キロ。しかもそのうち500キロは未舗装路です。しかも、色々なリスクがある。コストは当然跳ね上がります。

池上

貧しい内陸国に学校を建てる方が、お金がかかってしまうんですね。アフリカには大陸内でも経済格差が存在します。アフリカ内の「南北問題」の解決も次の課題のひとつですね。

宍戸

そうです。なぜ格差が是正されないのか。道路のようなハードの整備の差や立地そのもの差以外にも理由があります。実は、さまざまな経済面で立ち後れている国は、「ソフト」面で問題があることが多いんですね。要するに国の制度不備や人材不足がきわめて非効率な状態を産み出している。

たとえば税関がそうです。先ほど申し上げたように、ケニアのモンバサ港からジュバまでは約2000キロ離れています。輸送には陸路で単純に4~5日かかります。ところがここに税関の手続きが加わると物を運ぶのになんと3週間もかかってしまいます。つまり、税関を越えるために2週間も要するというのです。

JICAが取り組んでいるワン・ストップ・ボーダー・ポストという越境手続きの簡素化は、こうした税関の問題を解決しようとするものです。

池上

なるほど、こうした制度の運用面の影響もかなり大きいのですね。

宍戸

そうなんです。もうひとつ、例をご紹介しましょう。

スーダンの税関には、先進国から贈られた機械がたくさんあります。荷物チェックのためのX線検査装置もそのひとつです。使っているところを見ると、たしかに鞄の中のモノをチェックしているようです。ところが検査官は、X線の周波数を切り替えて各種の密輸品を探し出すという使い方ができません。このため、一般荷物の影は見えるのですが、うまく隠されたものはやすやすと通り抜けたりしてしまうのです。

これはほんの一例です。税関のみならず、あらゆる社会の手続きやルールの面で効率化しなくてはならない問題が残っています。

アフリカ最後にして最大の改革は、学校教育

池上

ソフトといえば、究極は人材そのものです。人材をつくるのは教育です。ということで、人間の教育について、アフリカはどんな状況にありますか?

元兵士への職業訓練、内戦中の教育、学校へ行けなかった子供への教育など、考えられ得るアフリカの教育の現状と問題を教えてください。

宍戸

教育は、アフリカのみならず、あらゆる途上国での国際協力で常に例外なく最も力を入れなければならない課題です。国民に教育を施し、文字を教え算数を教え、つまり読み書きそろばんを教えることで、はじめて社会と政治と経済の基盤ができるといっても過言ではありません。

アフリカでは、TICADの20年間で、小学校の就学率は上昇しましたが、特に質の議論になると、まだ課題が多く、時間がかかるなというのが実感です。

特に南スーダンは、内戦に入る以前から、学校教育という仕組みそのものがありませんでした。現在ユニセフ(国連児童基金)は、アフリカで『back to school』という取り組みを行い、学校教育が失われてしまった地域に、再び学校を作る取り組みを展開していますが、南スーダンに関しては『back』ではなく『go to school』です。なぜならば、学校そのものが内戦前から無かったからです。

となると問題がもうひとつ出てきます。子どもたちの親が学校に通う意義を理解できません。自分が学校へ通ったことがありませんから、教育の必要性がわからないのです。

子どもにとってどれだけ水くみよりも学校に行くほうが大切なんだと言っても、朝、家の水が足りなくなっていれば、子どもを学校に行かせるのをやめさせ、水くみを優先させます。

南スーダン政府は教員の養成に必死ですが、学校教育の浸透そのものは、今の子供たちが親になる世代まで、ひとつ代替わりしないと本質的な解決はできないだろう、と感じています。

とはいっても、これは南スーダンの話でかなり特殊な状況です。アフリカ全体では、就学率が70%まで来ていますが、その質の改善については、これからですね。

池上

全体としてはまだまだ上がりそうですね。教育分野も、日本が協力できることは多そうです。

宍戸

その通りです。教育の充実が経済成長に直結することをアフリカ各国も理解し始めました。人材育成に力を入れることで、海外企業の誘致もしやすくなります。やはり企業が現地採用するとなると、読み書きそろばんは必須となりますから。

池上

日本企業にとっても、読み書きや計算のできる若者がいればいるほど、進出がしやすくなりますね。

SUPPORTED by JICA
日経ビジネスオンライン 会員登録・メール配信このサイトについてお問い合わせ
日経BP社 会社案内個人情報保護方針/ネットにおける情報収集/個人情報の共同利用 著作権について広告ガイド

日経ビジネスオンライン SPECIALは、日経BP社経営情報広告部が
企画・編集しているコンテンツです。

©2006-2013 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.