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10年で4倍に成長、アフリカ経済の勢い

池上

アフリカ大陸がいま上昇気流に乗り始めたことがよくわかりました。ただ、その一方でアフリカには多くの国があり、地域によっては今も深刻な政情不安を抱えています。

いち早く経済成長した北部アフリカでは、エジプト、リビア、チェニジアをはじめ2011年から「アラブの春」と呼ばれる革命が起き、長期政権が倒れ、今も不安定な状況が続いています。

宍戸

まさにそうですね。

池上

一方、「サブサハラ」と呼ばれるサハラ砂漠より南のアフリカ地域は、スーダン、ソマリア、ルワンダなどを筆頭に20世紀から21世紀にかけて長年政治が混乱し、内戦が多発してきました。

北部アフリカの革命は、アラビア半島の政情不安とつらなる「イスラム圏」の問題でもありますので、ここでは省きまして、まずお聞きしたいのは、サブサハラのアフリカ諸国の政情についておうかがいしましょう。

宍戸

では、2011年7月に南スーダンが独立したスーダンのお話をいたしましょう。池上さんも2009年夏に、現地で独立直前の模様を取材されましたね。

池上

南スーダンの中心都市ジュバに行きました。現在は首都です。スーダンの内戦は「忘れられた戦争」と呼ばれ、大勢の犠牲者が出たのにもかかわらず、あまり報道されてきませんでした。このとき、戦闘は終わっていましたが、戦車が転がり、道路は未舗装で泥だらけ。戦地から帰ってきた人々が就労できるためのさまざまな試みを、JICAをはじめ各国の国際機関が共同で行っている時期でした。

宍戸

池上さん、いまジュバを訪れるとびっくりすると思いますよ。なんと10階建てのホテルが建設中です。しかも地元資本です。

池上

10階建てですか! 隔世の感がありますね。3年前に私たちが泊まったその名も『サハラリゾートホテル』は、というと、貨物用のコンテナを横に並べて内装を施したホテルでした。

近くには同じようなコンテナホテルの「パラダイスホテル」がありました。「これでパラダイスかあ」と口にしたところ、「そうですよ。以前はテントを張って泊まっていたのですから、それに比べればパラダイスです」と宍戸さんに言われたことをよく覚えています(笑)。

宍戸

そうでしたね。あれが「パラダイスホテル」ならば、新しいホテルはさしずめ『ヘヴンホテル』と名付けるのがふさわしいかもしれません。

池上

ホテルの話ひとつとっても、ここ数年の南スーダンの急激な変化がよくわかります。

宍戸

たしかに、まだ政治的には困難を抱えています。スーダンの石油資源は南部にあるため、独立と共に石油資源の7割を南スーダンが得ました。もともとは既存のパイプラインを使って、スーダンを経由して石油を輸出していましたが、スーダンとの対立からこの輸出がストップした状態にあります。石油以外の産業が育っておらず、インフラの整備も遅れており、財政的にも厳しいままです。

それでも、スーダンからの南スーダン独立が国際的に認められたとこで、資源開発やビジネスの権益確保、さらには未整備のインフラ需要の大きさから、海外からの積極的な投資が始まっています。消費市場の成長にも大きな期待が集まっています。

池上

課題は抱えているものの、独立を契機に投資マネーが集まり始めているわけですね。

宍戸

その通りです。アフリカ全体でも、この10年で経済規模は4倍に成長しています。背景には石油の輸出とその価格高騰があり、ゆえにこの経済成長は資源価格に依存した非常に脆弱なものという説もあります。しかし、中国やインドといった新興国からの投資もあり、資源のみに依存しているわけではありません。

ただし、アフリカで今いちばん元気がいいのは、圧倒的に中国

池上

今、中国の名前が出ましたが、私がスーダンを訪れた3年前の2009年時点で、すでに中国の存在感はとても大きなものでした。北部でも南部でも、私たちを見ると地元の人たちは「ニイハオ」と声をかけてきましたし、戦争の爪痕が残る南部のジュバでは、立派な中国領事館に、中国資本のプレハブホテルの偉容に驚かされました。中華料理店で食事をしたのを覚えています。あれから、中国の進出ぶりはどう変化したのでしょう?

宍戸

ますます元気ですね。中国は、欧米や日本など旧先進国と異なり、政府からの援助と民間の投資の区別がはっきりしません。つまり援助とビジネスの垣根が曖昧なわけです。もともと社会主義国家なのである意味当然とも言えますが、援助と投資をまとめてできるというのは、スーダンのような途上国と手を握る上では効率的でもあり、かなり有効なやり方です。

池上

中国流の援助と投資の特徴を教えてください。

宍戸

先進国は、OECD(経済開発協力機構)のルールの下で途上国援助をしなくてはならないのですが、中国はそれに従っていません。融資条件は非公表で、オープン入札も行わない。この方法は、国際的なスタンダードから外れているのです。先進各国から非難されているのですが、中国は「我々は先進国ではないのでそれに従う必要はない」と強弁しています。

ただ、強気の中国も、気を遣い始めてはいます。アフリカでの存在感が大きくなるにつれて、中国もアフリカで手がけている各種開発が国際的にどう見られているか、気にするようになってきました。

たとえば、中国が援助目的でアフリカのどこかでダム開発を手がけたとします。かつてならば、水没する村の住民への補償などせず、環境への配慮もせず、ダム開発を効率的に迅速にやることを最優先にしていました。

こうした無謀なやり方は、今はやや改善されています。
ただ、中国の開発スピードが速いのは相変わらずです。

アフリカのどこかの国と中国のトップ同士が約束をすれば、1年以内に事業がスタートします。

先進国ならば、援助や投資による開発の内容を国同士で約束ののちも、たとえば開発地域に貴重な遺跡はないか、自然はないか、入念な調査をし、さらに立ち退きをお願いしなければいけない住民と補償について話し合い、そこでようやく開発スタートという手順をとります。けれども中国がこうした手順をとることはまだないのではないかと思います。

最近、アメリカのオバマ大統領が、途上国の投資に対して、『責任ある投資を!』と呼びかけていますが、その裏には、中国がアフリカをはじめとする途上国への投資についてとるべきプロセスをすっ飛ばしていることに対する牽制があるのです。

池上

中国は、アフリカへの援助や投資について、どんな分野をとりわけ重視しているのでしょうか?

宍戸

世界最大の人口を有する中国にとって、食料問題は常に存在しています。このため、アフリカは世界の未開発農地の6割を有しており、潜在的な農業大陸です。そこで中国は今、広大な農地をアフリカで獲得して大規模農業を運営しようともくろんでいます。

ただし、ここでも問題が起きつつあります。アフリカの地元農民や地元独自の農業に対する配慮が足りていないのです。

以前から指摘されていますが、中国によるダムや病院などの建設工事でも、中国は現地での労働力も中国から連れてきてしまうために、いくら公共事業がきても雇用が生まれない、技術が移転されないという不満がアフリカ側にはありました。農業についても同様です。雇用創出や、地元農民との共存を考えないと、いずれ壁にぶつかる、と思いますね。

池上

そういえば、韓国もスーダンで大規模な農業を運営する、というニュースがありましたね。

宍戸

韓国がスーダンで小麦栽培のために99年間の農地借地契約を結んだ、という報道がありましたが、実際に始まっているのかはわかっていません。

いずれにせよ、今スーダンやウガンダなどサブサハラのアフリカの国々では、農業開発に注目が集まっています。

というのも、海岸沿いの諸国では真水が不足していて大規模農業は不可能なんですね。そうなると、スーダンやウガンダのようにナイル川やビクトリア湖の豊富な水資源を活用できる国に俄然期待が集まるわけです。その「匂い」に中国も韓国も引きつけられているのでしょう。

池上

前回の取材では、JICAを通して日本もウガンダで地元の米作を支援している現場を訪れました。経済成長が軌道に乗れば、食料需要も必然的に拡大しますから、農業開発は必須ですね。

さて、アフリカに対する欧米各国の動きはいかがでしょう。かつて、『援助疲れ』という言葉がありましたね。

宍戸

確かに90年代は援助疲れの時代でしたが、2001年の9.11テロ以降、欧米はアフリカ向けの援助を大幅に増額しています。でも、それ以上に元気なのはアジアの新興国です。例えば、投資の面では、10年前は、第二次世界大戦前まで、アフリカ各国の宗主国だったイギリスとフランス、そしてアメリカからの投資が、アフリカ大陸全体への投資額の70%を占めていましたが、今は逆転していて、中国やインドなど新興国からの投資が50%に上っています。

SUPPORTED by JICA
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