イトーキ
商品開発本部
ソリューション開発統括部
Data Trekkingチーフコンサルタント
酒井 美帆 氏
イトーキは1980年創業の家具メーカーで、早くから企業のオフィス作りを支援してきた。60年以上にわたって新しい働き方を提案している。2018年の自社の本社移転の際には、社員の自己裁量による自由な働き方によって、個人と企業のHappinessにつなげるという新コンセプトを掲げた。
イトーキ
商品開発本部
ソリューション開発統括部
Data Trekkingチーフコンサルタント
酒井 美帆 氏
自由な働き方を支えるABW(Activity based working)とWELL(ウェルビーイング)の概念を日本でいち早く提唱し、自らのオフィスで実践してきた。イトーキが2018年にオープンした東京・日本橋の本社オフィスは、世界的なオフィス調査「Leesman Survey」の2024年6月の調査で世界57位のスコアを獲得し、日本初となるLeesman®+ Excellent認証を得た。
新オフィスになって、20~30代の離職率が40%下がり、インターンシップ応募率が40%向上した。「生産性高く仕事ができている」と感じる社員の生産性実感スコアは44%向上している。「オフィスへの誇り」や「個人の生産性向上の実感」など、個人に関する指標は早く上がるが、「職場環境」や「連帯感」など、組織的な指標が上がるには4~5年かかることが多い。更新後の継続的なフォローが重要だ。
「社員の創造性を引き出し、気持ちよく働けるオフィスを作りたいという要望が増えています」(酒井氏)。背景には、労働人口減少による人手不足や生産性の低迷などがある。優秀な人材の獲得とリテンションが、オフィスの新たな機能として注目されている。
そうした要望に応え、イトーキは2024年2月から新たなコンサルティングサービス「Data Trekking」を始めた。主に3つのデータを活用し、企業の目的ごとに最適なオフィス環境を構築していく。1つ目は「位置情報」だ。オフィス内に多数のビーコンを置き、社員の位置情報を得て行動や利用傾向を可視化する。2つ目は「パフォーマンス」だ。イトーキが開発した独自のサーベイにより、社員や組織の状態を把握する。3つ目は「オフィススペース」だ。投資や施策の効果を、オフィスのエリア単位で可視化する。
オフィスの利用状況と社員の行動をデータで分析し、よく使われているエリアとそうでないエリアを分かりやすく可視化することはもちろん、スペースと社員の状態を掛け合わせて分析ができる。客観的なデータを基準に理想的なオフィスを検討できる。
利用状況分析結果のイメージ。よく使われているエリアを赤、そうでないエリアを青で可視化した
最近の相談で多いのは、次の3つだ。「パイロットオフィスをデータで実証したい」「客観的なデータを用いてオフィス運用を改善したい」「データ活用の方法が分からない」。
1つ目のニーズに応えた事例として「近江八幡市役所の市庁舎整備」を紹介した。パイロットオフィスを作って検討を進めていたが、職員は現在の働き方を基準に意見を言うため、ヒアリングすればするほど、昔のスタイルへ逆戻りしようとする。そこでData Trekkingを活用し、現状の働き方やオフィスの課題を可視化することで、なぜ新しいオフィスデザインが望ましいのか、その理由を明確にすることで職員の納得を引き出した。
2つ目の事例として「経産省ヘルスケアユニットのオフィス移転」を紹介した。新旧オフィスのデータを取り、ビフォーアフターの効果を分析。「ロコモ(身体・健康の指標)スコア」が4.6ポイント、「身体活動スコア」が18.9ポイント向上するなど、効果をデータで確認した。
3つ目の事例として「メニコンのシアターAoiビル新築」を紹介した。Data Trekkingのフレームワークで検証したところ、同じ機能を持つスペースでも、場所によって効果が違うことや、個室を1人で長く利用する人がいることなどが明らかになり、改善の糸口が見えた。
「Data Trekkingはアプリケーションやデータを通じて総務部、人事部、人的資本経営に寄与するファシリティ戦略、人事戦略を継続的に支援していきます」と述べ、酒井氏は講演をまとめた。